第11話 【アーサー】と【モードレッド】
第2章は11話から始まります。
どうぞ!!
私は、セレスの案内でギルド拠点の中を散策していた。
「ルグアさん、呼ぶ時はプレイヤー名と二つ名、どちらが良いですか?」
前を歩くセレスが質問する。
「個人的には、プレイヤー名にしてもらいたいが、二つ名で呼びたきゃそれでいい」
ぶっきらぼうに回答した私に、
「面白い人ですね。曖昧な答えを出す人は、あなたが最初で最後かもしれません」
と、少し笑みを浮かべ振り向く。
その笑みは、どこか悲しく、今にもほどけて消えてしまいそうだった。
何か問題があるのだろう、こういう時、解決に協力するのがゲーム警察であり円卓として役目。
「ギルドで心配なことでもあるのか? あるなら相談に乗ってやるが……」
私は、バーチャルレーサー時代から直らないセリフの言い回しで問いかける。
すると、
「実は、【アーサーラウンダー】が、”解散”の危機に……。いえ、あと数日で”解散”するかもしれないんです」
突然の解散という言葉に、入ったばかりの私は、寂しさを感じた。
自己紹介をしてもらった段階では、みんな仲が良いと思ったが、それで解散は聞いたことがない。
「どうやら、円卓の皆さんは、新しく入った【モードレッド】の性格に不馴れのようで……」
(そりゃそうだよな……)
「今になって、女っていうのもあれだしな……」
この発言に、セレスが歩を止めた。
「ルグアさん、女性だったんですか?」
「そうだが……。なんだ?」
自分でも気づかなかった、口調の偏りにセレスは話を続ける。
「雰囲気も、話し方も、男性そのものだったので、男相手で会話するところでした」
短く簡単な謝罪と分析、さすがは団長、私はそう思った。
「別に、わざわざ分ける必要はないんじゃねぇか?」
細かいことをほったらかしにして、大胆に進める私には、人を選んで変える理由がわからない。
さらに詳しくすると、男と女で変えることに、どういうメリットがあるのだろうか。
性的発言を避ければ、男女関係なく話せるのでは……。きっと、これにも理由があるはず。
だが、私は声に出さなかった。この疑問で、亀裂を大きく、深くするかもしれないからだ。
代わりに、
「なあ、セレス。逆に聞くが、どう呼べばいいんだ?」
最初の質問に答えたので、同じ質問を問いかける。
「では、私もあなたと同じように、好きな名前でいいですよ。ただ、それが嫌いなメンバーもいるので、気をつけてください」
これが彼女の、団長の答えだった。
画面右上に表示されたデジタル時計を見る。時刻は、21時。
このままだと、兄に怒られる可能性が高い。私は、
「すまん、もう落ちる。また明日な!! あと、改めてよろしく頼む!!」
フェードアウトとともに、覚醒し始める感覚の中、セレスは、
「すみません、明日は親友と話す予定があるので、難しいと思います」
たった数秒の間に、なんとか聞き取ることができた。
そして、
『おーい、明理。いつまでゲームしてるんですか。ほら、せっかく作った手づくり餃子が冷めるよ』
響いたのは、兄の声。
「ごめんなさい。今すぐ片付けます」
謝り整理して、席に着くと、
――ポポロン〜
鳴ったのは、メールの着信音。差出人は、ゲーム会社ではなく、中学校の親友・三上 輝夜からの呼び出しだった。




