第2部 プロローグ1
◇◇◇2025年12日1日月曜日◇◇◇
「ねぇ、ルグア。早速〈バーチャルワンダーランド〉にログインしたけど……」
{なんか騒がしいな}
私は、ルグアとやり取りしながら、広場を歩く。どうやら、あの時に分離してから、自由にやり取りができるようになったようだ。
二重人格のようで二重人格ではない、不思議な感覚。別に嫌いというわけではない。むしろ好きな方だ。
ルグアがやり取りできるのは嬉しい。でも、記憶は消えてしまった。もう一度解析すればいい話だけど、今回は前回よりもヒントが少ない。
――皆様、本日よりリズムゲーム〈リズムギャンブル〉とのコラボイベントが開催されます。
{リズムゲームでギャンブル? どういう意味だ?}
「多分、コンボ数で競うんじゃないかな? リズムだから、そんなに激しいイメージじゃなさそうだし」
{思えば、明理はこういう系のゲームやったことあんのか?}
「ないよ? リズムゲーはあまり得意じゃないから。やろうと思えばできなくはないけど…………」
確かに経験があった方が、やっていきやすい。リズムゲームは、タイミングよく刻んでコンボを稼ぐのがメインなので、どれだけリズム感を掴めるかが重要。
目の前にはばかる人混みを掻き分け、広場の中心に向かうと、奥に懐かしい観覧車とサーカス会場。
カフェテラス。メリーゴーランドも、木馬が楽しそうに踊っていた。そして、噴水エリアにはダンサーらしい人が激しく踊る。
勢いのある回転。細かい腕や手首の動き。セレスの日本舞踊とは違う、ダイナミックな振り付けに、頭がクラクラしてしまう。
{明理。大丈夫か? 無理なら交代するが…………}
「ありがとう…………。ルグア。そうするよ」
〈WWM〉での一件で、オレと明理は好きに交代できるようになった。おかげで、互いをフォローできるようになったのだ。
オレは、こういうダンスには興味がある。見よう見まねで、身体を動かし、回転のつけ方もダンサーの動きから勉強する。
{ルグア、もしかしてこういうの好き?}
「まあな、セレスの振りより激しいし、ジャンルも違うみたいだが…………」
{そりゃ違うよ。セレスがやっていたのは、日本舞踊っていう一種の舞い。これは、多分"ブレイクダンス"だと思うよ}
「ブレイクダンス…………。か……。やってもいいか? まあ、練習できんのはゲーム内だけだろうが…………」
{いいよ。私はちょっと酔っちゃうけど、意識外せば大丈夫だから}
意識を外す。というのは、オレと明理の意識を完全に離すという意味で、意識外している間は、お互いの視覚・聴覚情報共有が無効。
また、干渉もできなくなるので、意識同士のやり取りもできなくなる。完全隔離状態ということだ。
もちろん、行う時はお互いの同意が必要なため、しっかり情報交換してから始める。
{私は休んでいるから。ある程度終わったら教えて。じゃあ、外すよ}
「了解。んじゃ早速、個人練でもすっか…………」
オレは、過去に明理が作成したエリアマップを確認しながら、人気の少ない場所を探した。




