番外第5話 野外活動準備(WM53年)
「ふぅ〜。やっと溜まってた依頼が一段落ついた。他のメンバーは、3年間の合宿を兼ねたクエ攻略でいねぇし」
私は、自宅で押し印がされた大量の依頼用紙をまとめながら、壁に貼られた鬼畜ゲー開催ポスターを眺めていた。
鬼畜ゲーというのは、残酷な要素が入ったものや、攻略不可に近い内容のゲームのこと。
ちょうど明日から、WWM全体が約2年の間鬼畜ゲームになることになっている。
基本情報として、敵モンスターのレベルが、日を重ねるごとに上昇していくとのこと。
レベル補正として、全プレイヤーに全ステータス上昇バフも付与されるが、特別仕様が気になっていた。
内容はすでに、ゼアンから聞いているが、どのように反映されるのかは、知らされていない。
反映内容はともかく、その内容を説明すると、他プレイヤーはステータスが数百倍上昇するが、私だけが真逆でステータスが全て5桁に固定される。
もっと言うと、私のステータスが5桁なのに対して、他プレイヤーは10桁を超える見込みだ。
そして、この企画は楓も参加していて、ステータス反映はゲームシステムではなく〈レコード・ノート〉で行われる。
ウェンドラは本調子の私だと、いくらステータスを減少させても、意味がないと言うので、ゲーム内日時変更と同時に、50億の負荷を期間中に常時反映させることになった。
まずまず、50億の周波数が存在するのかが怪しいが、〈レコード・ノート〉を使えば関係ない。
整理が終わり、依頼用紙を片付けると、私は装備の準備を始める。武器も攻撃力が低いものに変更し、防具は全解除。裸はさすがに嫌なので、普段着として使っているボロ服を着る。
これで、防御力の追加値は0になり、鬼畜さが倍増した。あとは、日付けが変わるのを待つだけ。
反映情報の確認を頼まれているので、切り替わるまで、かまどの中でゴロゴロしながら暇を潰した。
◇◇◇翌日0時◇◇◇
ついに、書き換えが始まった。私の情報の変更は1番最後で、もう間もなく反映される。直前の反映開始メッセージを、開き15秒後に終わるのを確認。
「5……4……3……2……1…………」
0のタイミングでステータスを表示。そこには、
プレイヤー名:巣籠 明理
Lv.1
性別:WOMAN 種族:妖精族
ジョブ:エルフソードマン
国民番号:005791871
HP:17.895
ATK:24,700
DEF:37,690
MAT:25,631
MDE:43,185
と、しっかり変更されたことを、ウェンドラに報告。その直後、初めてに近いような、強烈で地獄でしかない負荷が脳を貫き、挙句の果てに意識を失った。
(番外第5.5話に続く)




