第9話 対戦準備と円卓の名を持つ者
サーカス会場のワープゲートを通り、着いた先は、石畳の通路が続く場所だった。
手に持つ剣は軽く感じ、セーブエリアの鍛冶屋へ向かうと、店主は存在しないようで、アイテムの投入口がある機械が設置されていた。
なんでもいいやと、所持しているモンスター素材を入れると、小窓に武器種が表示。
私は、迷わず長剣を選ぶ。
――ゴトン!!
金属が落ちる音とともに出てきたのは、全体的に紫色の剣。
もちろん、武器ステータスも確認する。
武器名:ポイズンドレインブレード
攻撃力:3500000
基本能力
攻撃時、90%の確率で毒付与(毎分2000000ダメージ)
与ダメージ分HP回復
やはり、めちゃくちゃだった。攻撃力が異常に高すぎる。加えて、毒ダメとドレインは嬉しいが強すぎだ。
「一体どこまで強いモンスターが出てくるんだよ!!」
私は、本音を盛大にぶちかます。
『このゲームに出てくる魔物の、最高レベルが知りたいのかい? じゃあ、僕が教えてあげるよ』
誰もいないはずなのに聞こえてきたのは、子供の声。
コツコツと鳴る足音で、姿を現したのは1人の少年だった。
「覚えてるかな? 僕はノアン。ギルド【アーサーラウンダー】所属。二つ名【ガウェイン】を持つの剣士です」
ノアンという名前は、過去にも聞いたことがある。『コスモスレーシング』で戦い、2位を取ったプレイヤーだ。
「この前、僕は負けてしまいました。こうして話すのは”はじめまして”ですね。もちろん、名前も覚えていますよ。ルグアさん」
ノアンは、優しくゆっくりと言葉を並べる。
「そりゃどうも。私もあん時話したかったが、依頼殺到でさ。個人的にだが、ゲーム警察をしている」
私も、嘘のない出来事を話す。確かに、レース後表彰式が終わり、声をかけようとした時、突然のメールでログアウトした。
「んで、ノアン。私に何か用でもあるのか? ここはソロ専フィールドのはずだが……」
「ああ、そのことでしたら説明します。僕達円卓の二つ名を持つ者は、他人のフィールドにアクセスすることができるんです」
「ふーん。じゃ、ここから消えてくれ」
「いえ、僕はあなたを勧誘しにきました」
「勧誘? どういうことだ?」
言い渡された2文字の言葉に、聞き返す。
ノアンは、
「実は、【モードレッド】の枠が空いてまして、昨日始めて、レベル10000を超えたあなたが相応しいのでは」
とのこと。ギルドも悪くはない、むしろ入ってみたいくらいだ。
「わかった。その枠に、私でいいのなら乗ってやる」
こうして、私はトントン拍子に【アーサーラウンダー】の【モードレッド】担当になった。




