第104話 オレにとって仲間とは…………
◇◇◇転生前◇◇◇
オレは、ずっと一人だった。母は、家を捨て、父は街の長として忙しく、聞く耳を持ってくれなかった。
ウェンドラが言っていた、『呼び出した』という言葉。思えば、何度もやり直しているように、時間が進んでいる。
誰も見向きもしなかった。繰り返される孤独。目に入る世界は鮮やかなのに、人の顔だけモノクローム。
話し声も口の動きだけで、表情すら感じられぬ静寂が流れていく。唯一聞こえたのは、ウェンドラの声だけだった。
――『また、お会いしましたね。今回もアタシが勝つと思いますが……』
毎回同じセリフ。オレは彼女の名前しか知らなかった。彼女の声だけが聞こえて、彼女は自身の名前だけを必ず名乗る。
そして、他の人の名前は語らない。行動と戦いと……、今にも消えそうな道行く人の顔だけでできた記憶。
初代が生まれてから1000年後、14回目の転生で、相手の声が聞こえるようになったが、途切れ途切れで内容がわからない状態が続いた。
けれども、そこで様々な言葉を覚えることができた。拠り所になった人が、たくさん教えてくれたから。
教えてくれた、14代目の名前が"フォルテ"だった。オレは、その時の名前が忘れられず、自分の名前に付け足した。
名にあたる"ルグア"。性にあたる"レミリス"。そして、言葉を教えてくれた"フォルテ"。3つが合わさり、今の名前がある。
だが、2000年後の18代目になっても、ウェンドラにとどめを刺すことができなかった。
記憶の抹消が始まり、計3000年の思い出が消えていく。一応、思い出や記憶の一部を受け継ぐようにしたが、そのほとんどが、戦いの記憶。
◇◇◇現在◇◇◇
あれからしばらく経ち、生を受けたのは、日本という国だった。しかし、オレという記憶が全て消えていたため、巣籠明理いう少女としての生活。
明理は、そのフレンドリーな人柄から、友達がとても多かった。兄の陸や親友の輝夜と沙耶華。ゲームという世界で、仲良くなったギルドメンバーに加え、ウェンドラまで仲間にしている。
高校退学という思い出を持ちながらも、とても前向きで頭の回転が速く、ゲームに関しては、次に起こることを予想……、いや、予言しているくらいだ。
百発百中とまではいかないが、どんなゲームでもスムーズにクリア。レーナのおかげで、ほんの少し記憶が戻り、明理の中に溶け込むように、のめり込んでいく。
戦いに疎いオレに、何度もオレの口調を使って、ぶっきらぼうに説明する姿は、偉大に見えた。
今は、その明理がいない。だが、明理は自らを犠牲にして、オレの意識を繋いでくれている。
目の前の盾が震える。耐久性がどれだけあるかは知らない。ぼんやりと見つめると、そこには小さなヒビが入っていた。
この盾が壊れても、オレは明理を信じ続ける。もちろん、今までお世話になった歴代の人々も、明理の友人たちのことも…………。
「ルグア、まだ耐えるのですね。それだけ、明理のことが好きなのですか? きっと、もう手遅れですよ? すでに、盾はボロボロ。それが貴方の命綱なら、盾が壊れた瞬間、生命力も尽きる。それでも続け…………」
「続けるに決まってる!! こうしていると、明理の状態がよくわかるんだ。たとえ壊れても、オレには明理から教わった戦い方がある。明理のようには速く動けないだろうけどな」
大魔法展開から4時間57分。約束の時間がやってきた。




