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第96話 ルグアの本音

 補正なしと言ったものの、痛いものは痛い。試験品とはいえ、よくもまあ、ここまで強い周波数を発せることできるのは、提供してくれた運営も驚くのではないだろうか。


 しばらくすれば、脳が慣れてくれる。そのような感覚を、遊び半分で味わってきた。結局私自身が、刺激を好んでしまったことが原因だが…………。


 おかげで、万や億単位の刺激に脳が馴染んでいた。というのはもう、ただの人ではない。


 でも、実際操作しているのは、何の変哲もない普通の少女だ。現実でなら、いくらでも致死状態にできる。


 しかし、なぜウェンドラは、現実で殺さずに、周波数による脳死にこだわるのだろうか。


 殺すなら、現実世界で直接攻撃すれば手っ取り早いのに、こだわる理由がわからない。確かに、脳死なら自殺に近くなるが、現実で何かされているなら、他殺になる。


 そして、脳死は自殺というよりは病死だ。けれども、現実世界の私の身体は、基礎疾患もなくいたって健康。不安な点といえば、脳細胞の状態だけ。


「なんだかなぁ〜。バトルと行きたいところだが……、ちょっと話してもいいか?」


「ええ、なんでしょう?」


「このゲーム機が試験品の理由。なんかイマイチだし、不自然なんだよ。確かに、差出人はお世話になっている会社だったが……。あの会社……。全くゲーム機出してくれねぇんだよな。それに、部署には"ゲーム機開発部"というやつがなかった。知ってんだろ? 私が使っているゲーム機の、真の開発者を…………」


「…………、すでにお気づきになられていたのですね。そう、貴方が使っているゲーム機は、アタシの下僕しもべが作りました。全ては、貴方を殺すために作ったものです。審査会社に直接行かれていたのは、下調べが甘すぎましたね。愛用されていたことも、驚きです」


 表情一つ変えずに語るウェンドラ。どう見ても、驚いているようには感じられない。まるで、全貌や真相を知っているかのように…………。


 彼女が望んでいるのは、私の死。私が死にさえすれば、全てが終わる。だが、それは作者のガデルが頑張って、築いてきた物語も終わるのと同じ。


 ガデルのためにも、兄のためにも、一緒に活動してきた仲間のためにも、冒してはならないことだ。


 せっかく、ガデルのために私が書いたストーリーも、水の泡になってしまう。負ける訳にはいかない。いくら強力な、異常すぎる負荷がかかろうが、バッドなトゥルーエンドで終わらせたくない。


「そろそろ30分経過するよな。なんなら、もっと負荷を…………。お前が望むままにかけてくれ。私のことはどうだっていい…………。きっとお前と私には、昔から縁があるはずだ!! まあ、生まれ変わりとまでは、知らねぇが…………。お前とは以前にも……、生まれる前の時点で、すでに会っているんじゃないか。って、最近思うんだ」


「あらま、そこまで辿り着くとは…………。答えは、"然り"ですね。貴方がうろ覚えなのは困りましたが……。一昔前にも、このようにして戦っていますよ。その時も、同じように貴方はうろ覚え……。アタシは、次々と素体を変えて、生き抜いていました。生まれ変わったことで、貴方が不完全なのは、当たり前です。けれども、今まで会った人の中で、貴方が一番記憶が鮮明。毎回うろ覚えだったことで曖昧でしょうが、それは仕方がないことです。気にはしていません」


 長々と説明する彼女のおかげで、少しずつ欠けたピースが集まってくる。これは、私もガデルも書いていないシナリオだが、次に起こることは予想できた。


 そろそろ集まってくる。私とウェンドラの過去の戦績は、私が3勝、ウェンドラは15勝と、歴代合わせて負けっぱなしだ。


 今度こそは、勝ってやる!! 再び左手に握る愛剣に力を込めて、勢いをつけて空を駆けた。


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