第87話 亡霊の気持ち
〖…………会いたいな〜〗
どこからか、女性の声が聞こえた。亡霊は、動かない。私は、戦いたい気持ちを抑えて近づく。
敵意は感じない。住民を襲っていた時と何かが違う。
「お前は、さっき戦ったやつだよな?」
〖はい、そうですが……。倒しにきたのですか?〗
「いや、違うんだ。前戦った時とは、元気が無さそうだったからさ」
言葉通り、覇気も感じない。亡霊なのに、生きているようなやり取り。
〖心配して下さったのですね。すみません。実は、探している人がいて、須田努っていう人なので…………〗
「須田努、私のギルメンだけど、なんなら来るか?」
〖それが、ここから出られないんです。ごめんなさい〗
「問題ねぇよ!! 私なら簡単さ」
〖えっ?〗
私は、愛剣を取り出し壁に突き刺す。そこに、爆破魔法を剣に付与。一度爆破させて、壊れないことを確認してから、
「憑依ってできるか?」
と亡霊に問いかける。
〖できますが、あなたも出られなくなりますよ?〗
「塔の出入口からだとな。けど、この場所からなら、行けるかもしれないだろ?」
私は羽根をさらに大きく広げ、羽ばたく。亡霊は、私の身体と一体化する。
爆破魔法を最大規模で展開し、壁を破壊。塔から飛び出すと、そこは宇宙だった。
画面に表示される、酸素ゲージ。とても速いスピードで減っていく。酸素ゲージが0になったらどうなるかが、気になってきた。
〖大丈夫なんですか? このままの状態で…………。酸素ゲージ回復しましょうか?〗
心配された。好奇心だけで今消費しているだけなのに…………。最近いろいろな人に心配されているような気がする。
「必要ない。このまま家に直行するから、数秒しかかかんねぇし」
酸素ゲージ枯渇時の件は、後日確認することにして、私は、日本に向かった。




