第三十八話 二枚舌の悪魔『ベリト』
デカラビアの鍵は手に入れた。しかし、時間が止まっていた事もあって、今はまだ朝である。
そこで俺達は、草原でしばらくの間ゴロゴロと過ごして体力と気力を回復させてから、次の悪魔に挑む事にした。
「この揚げ芋って美味しいですね」
「ああ。何で揚げた芋ってこんな旨いんだろな。お、こっちの肉串もいけるぞ。何の肉だろ? 」
「たしか、ネズミだって言ってました」
「……………………マジで? 」
…………ちょっとショックを受けたが、異世界生活も長くなってきたからな。…………ネ、ネズミぐらい食えるさ。…………うん。
ちなみに、メテオラは全く気にしない。何の肉でも食べる。まぁ、この世界では躊躇う俺の方がおかしいのだ。
「…………良し。大分回復したし、そろそろ始めるか」
「はい! 」
「…………あー、気合い入っているとこ悪いけど、メテオラは今回は見てるだけな? 」
「…………え? 」
「戦いになる悪魔だからな。一対一で倒したい」
「…………わかりました」
俺は不満そうなメテオラに苦笑しながら『ソロモン・フォーム』に変身した。そして、悪魔を呼ぶ。
「来い『ベリト』! 」
ピシィッ! …………カシャァン!
時間がとまり空間が弾けた先は、見覚えのある場所だった。
満点の星が輝く石造りの闘技場。ここは、ケルベロスと戦った場所だ。
『何だぁ? なんだって急にこんな所に居るんだ俺ぁ』
声のした方を見ると、一目で蛇の様な印象を持たせる細い体つきの戦士がいた。見た目的には人間だが、緑がかった白い肌と青い髪、それに金色の眼が人間ではないと語っているようだった。
横を全部刈り上げたツーブロックの髪型で、後ろに長く伸ばして三つ編みにしているのが尚のこと蛇を思わせるな。そして、武器は槍か。
『んん? なんだお前らぁ』
悪魔『ベリト』が、槍をこちらに向けながら聞いてきた。
「俺は本郷隼人、そして『変身ライダー・ソロモン』だ! 悪魔『ベリト』貴方の力を借りたい」
『ふーん? …………へっ、止めとけ止めとけ。お前ら人間がぁ、俺達の力を持ったって良いことなんざぁねぇ…………よ!! 』
飄々とした態度で語っていたベリトが、最後の台詞を言いながら一気に距離を詰めて槍を突き出して来た!
「ぐぅ!? 」
何とかそれを『デビルキー・ブレード』で逸らすと、槍は俺の脇、ソロモンスーツの表面を少し削っていった。
「汚ない! 卑怯です!! 」
『何だぁ? お嬢ちゃんはこういうの嫌いかぁ? 』
思わず出たメテオラの言葉に、ベリトはヘラヘラと笑って答えた。
「僕はお嬢ちゃんじゃありません! 」
『何だ男かよ、じゃあどうでもいいや』
言いながら槍の刃を地面に突き刺すベリト。俺はベリトを良く見ていたおかげで、その行動を見てすぐに横に飛ぶ事が出来た。
横に飛びながら、俺は自分が立っていた場所めがけて、地面から槍が突き出るのを見た。
『あん? お前、俺の事を知ってるなぁ? じゃねぇと躱せねぇもんなぁ? 今のはぁ』
「ああ、知ってる。悪魔ベリト、『二枚舌』のベリト」
「…………二枚舌? 」
そう首をかしげるメテオラに、ベリトは舌を出して見せた。その舌は、確かに二枚あった。比喩とかでなく本当に二枚あったとは、俺も知らなかった。
『嘘つこうが騙し討ちしようが、戦いってのは勝った奴しか認められねぇ。じゃあ勝たなきゃなぁ』
『…………こっちだ! 』
「…………!? …………うおっ!? 」
一瞬、真正面で話していたベリトの声と殺気を、背後から感じた。驚いて振り向くものの、そこには何もなく、本当の攻撃がベリト本人から放たれた!
『んぁ? これも避けんのかぁ? 』
「……………………そんな事まで出来るのか」
ベリトは、自分が居ない場所から声と殺気だけを出したのだ。一人で行う騙し討ち。そんな事が出来るとは知らなかった。今、避けられたのは、完全にただのまぐれだ。
これは不味い。時間をかけると、何が起こるか分からない。
「来い、ケルベロス! 」
俺は『ケルベロス・フォーム』でケリを着ける事にした。
『はぁん、なるほどぉ。そんな事が出来んのかお前はぁ』
「いくぞ! 」
『いちいち声掛けんなぁ! 』
ケルベロスのスピードを生かしての攻撃を繰り出すも、ベリトは避けるでもなく簡単にそれをさばく。
『おいおい。折角スピードがあんのに正面からかぁ?舐めてんのかぁテメェはぁ! 』
「…………がぁっ!? 」
槍の石突きが跳ねあがって俺の顎を打ち、回し蹴りで吹っ飛ばされる! 俺は床で二度ほど跳ねながら、何とか体を起こす。
『おらっ! 掛かって来い! 』
「…………!? 」
俺に挑発しながらも、ベリトの槍は地面に刺さっており、俺の真下から刃が襲って来た!
『ガルルゥッ!! 』
胸部のケルベロスが、襲って来た刃に喰らいついて逸らし、何とか事なきを得た。
『今なぁ惜しかったなぁ! 』
「クソッ! 」
このままじゃ負ける。出し惜しみは無しだ!
「来い! デカラビア! 」
『あん? 』
俺はまずベルトのケルベロス・キーを操作して必殺技を発動する。
『デビルズチャーージ!! 』
そして、ケルベロスの口から炎が溢れるのを感じながら、今度はデビルキー・ブレードの鍵穴にデカラビア・キーを入れて回して、ブレード必殺も発動する!
『デビルズチャーージ!! 』
「うおおおぉぉっ!! 」
ケルベロスの三つの口から炎が放たれ、デカラビアの能力でその炎が俺の形になってベリトを襲う!
『なんだこりゃあ!? …………だがなぁ!! 』
炎に巻かれながらも、ベリトの槍は俺の本体を見極めて突き出される!
ベリトの槍が、俺の体に届くも、ガキィンッ! という音と共に弾かれた。ベリトは、デカラビアの能力に見事に騙されたのだ!
『ンなにぃ!? 』
ベリトが俺の本体だと思ったのは、地面に突き刺さったデビルキー・ブレードであり、俺自身はそれを足場に上空にいた。
「せいやあぁぁーーーーっ!! 」
『ぐあぁぁああーーーーっ!!?? 』
炎をまとったライダーキックをモロに喰らって、ベリトは吹っ飛ばされ、地面を転がって倒れた!
「…………はぁ、…………はぁ、や、やったか!? 」
俺の勝利を裏づける様に、気絶したベリトの体の上には、一本の鍵が浮いていた。




