表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/716

第十八話 ポーションの究極

『いいかね、薬草を取って来たが薬を作る時には薬効が落ちていた。で済ませてはいけないのだ。なぜ薬効が落ちたのか? どうすればそれを防げるのか? これを考えねば先に進めない』

「「はい! 先生! 」」


  薬師ギルドの会議室を借りて、俺は『ブエル・フォーム』に変身して授業を行っている。…………いや、授業をしているのは俺の左肩にくっついたライオンの頭『ブエル』で、俺はその助手だな。


  ブエルを紹介した当初は、悪魔という事に警戒心を持っていたギルド職員達だったが、ブエルの持つ薬学の知識の高さに、すぐに心酔していった。


『今回、君達の一番の関心事であるフジスミ草だが、これは採取した時点からすぐに薬効が失われ始める。それはこの薬草の周囲の魔素を集めて蓄えるという性質が、薬効と密接な関係にあるからだ。ハヤトくん、アレを』

「…………はい」


  俺はブエルに言われるままに、フジスミ草の一株を葉っぱ以外を纏めてすり潰して、残った葉っぱに塗った。


『今ハヤトくんがしている様に、一株をすり潰した物で残りのフジスミ草の根を包んでやると、元からの薬効が失われずに二日は持つ。これがフジスミ草の採取での鉄則だ。覚えておきたまえ』

「「おおーーーー!!!! 」」


  ちなみにメテオラはというと、薬師ギルドの面々に混じって授業を受けている。…………何がそんなに楽しいのやら。


『次に、君達の作った『ポーション』を見せて貰ったのだが、何だねこれは? 』

「は、はい! ワシが作ったハイポーションですじゃ」


  このギルドの中で、一番とも言える高齢の老人がそう言った。周りの反応を見るに、結構上の立場の人のようだ。


『…………ふむ。君達は、フジスミ草を使ってハイポーションを二十本作ると聞いた。それは事実かね? 』

「はい! ですが、それはブエル先生の教えを受けたフジスミ草だから作れるもので、本来の我々が採取するフジスミ草では、ポーション三本が限界です! 」


  それを聞いてブエルがやれやれと首を左右に振った。俺の体も一緒に動くから止めて欲しい。


『君達は、フジスミ草の本来の力を知らな過ぎる。ハヤトが私と契約をしなければ、ずっとこのままだったのかと考えると嘆かわしい。研究者とは、もっと研究に貪欲でなければならん。諸君らには、欲が無さすぎる』


  そう言ってブエルは、俺に指示を出してポーションを作り始めた。


  実は早朝に青年から話を聞いた後、ブエル・フォームになってブエルに話を通したのだが、その際に森での材料集めをやらされたのだ。


  フジスミ草はもちろん、他の薬草や川の水、鉱石なんてのも探させられた。ブエルの指示通りに動いただけではあるのだが、結構大変だったのだ。


  ちなみに、ここに来た時に朝の青年(名前はオガハ)に採取して来た物を見せたのだが、首を傾げていた。


  そして、それらの材料を使ったポーション作りが終わる。


  ブエルの指示通りに作ったそれは、オガハに見せられたポーションともハイポーションとも、明らかに違う輝きを放っていた。


「こ、これは!? …………まさか、そんな!? 」


  ハイポーションを作ったと手を上げた老人が、俺が作ったポーションに震える手を伸ばした。その目は、信じられないと雄弁に語る様に、限界まで開かれている。


『これが、本来のフジスミ草で作られる回復薬『エクスポーション』だ』

「「エ、エクスポーション!!?? 」」

「エクスポーション? …………それは、どのくらい凄いポーションなんですか、ブエル先生? 」


  そんな質問をする俺に、信じられないという視線が集中した。いや、仕方ないだろ。知らないんだから。


『フム。順序立てて説明すると、『ポーション』は深いのは無理だが、浅い怪我なら治る。『ハイポーション』は、腕などを斬り落とされても、ちゃんとくっつけていれば繋がる。『エクスポーション』は死んでなければ何でも治る。失った手足だろうが生えてくる』

「……………………マジで? 万能薬じゃん」


  薬効の悪魔パネェ。


『だが、誰でも作れる訳ではない。魔力とスキルが必要だ。今この場で作れるのは私だけだが、修行を重ねれば、ここに居る何人かは作れる様になる筈だ。何十年後になるかは分からんがな』


  ブエルのその言葉に、薬師ギルドの人間達の目が光った。たとえそれが何十年後の話だろうと、自分達でも作れるという希望があるからだろう。


「エクスポーションが作れるなら、領主様の依頼を達成できます! エクスポーション一本で樽一つ分のハイポーションがとれます! 」

「おおっ! 確かに! 」

「ハヤト殿、ブエル先生、どうか力を貸して下さい! 」

『魔力量的に、私がエクスポーションを作れるのは日に二本だ。足りるかね? 』

「では、我々もハイポーションは作り続けますので、あと二日お力を貸して下さい! 」

『ウム。しかし、材料集めは自分達でやるように。少し多めに取ってきて貰おうか』

「はい! ではよろしくお願いします! 」


  俺達は、薬師ギルドの頼みを快諾した。俺としてもエクスポーションは持っておきたいし、何よりこれは俺の為にもなる。


  今回の授業、これは冒険者ギルドを通した依頼として受理してある。これで俺がクリアした依頼は四つになった。


  『リンゴの収穫』『薬草採取』『薬師の授業』そして、『グレイトボア狩り』。グレイトボアは偶然だったのだが、ギルドが依頼として認めてくれたのだ。


  これで俺は、Fランクへと昇格できる。Fランクへの昇格条件が、討伐依頼を一回、採取依頼を三回こなす事だったのだ。


  だが、ここで止まってはいられない。俺は後二ヶ月の間に、少なくともDランクまでは上げねばならないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ