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第百八十話 『ノーライフキング』

  ヴィネの世界から戻ると、放っておかれたメテオラが拗ねていた。


「いや悪かったよ。でも『中二病』ってのは扱いが難しいんだって。しかも今回のは年季が入った中二病患者だぞ? 普通は一過性の黒歴史なのに、アイツはずっとああだったんだぞ? 」

「…………そんな事を言われても分かりませんよ。僕には『中二』だった事なんてありませんし」

「いやまあ、そりゃそうだろうけど…………」


  …………もしかしたらメテオラは、自分の知らない話題で俺と『ヴィネ』だけが話していたのが、寂しかったのかも知れない。


  本来なら惑星よりも大きな『時空間破壊龍』であるメテオラは、知らない事だらけなのだが、そう言えばこんな風に放置したのは初めてだったかも知れないな。


「…………じゃあ今度、隼人さんの『中二』だった時の事を見せて下さい」

「…………ん?? 見せる? 」

「はい。『グシオン』さんの能力で」

「お前…………! そ、それは反則だろ!? 」

「『中二』の頃だけです。…………ダメですか? 」

「うぐぅ…………。わ、わかった……」

「なら、許してあげます! 」


  満面の笑みを見せるメテオラを横に、俺は不安を抱える事になった。


  ち、中二の頃を見られる!? お、俺、何も変な事してなかったよな!?


『…………なぁ、お前さん方。痴話喧嘩も結構だが、何がどうなったんだ? 』


  呆れる様な声を聞いて、俺達はここが食堂でジンマとダンジョンマスターの前だった事を思い出した。


「いや、痴話喧嘩ではないけども。取り敢えず悪魔とは契約出来たよ」

『ほう、なら『ダーメイス』を調べられるんだな? 』


  俺はジンマの言葉に頷き、『ヴィネ』の能力を使う為にゴーレムの外に出た。俺の後には、メテオラやジンマにダンジョンマスターもついて来た。


「『変身』! 来い、『ヴィネ』!! 」

『ゲーートセーーット!! 』

『ゲーートオーープン! ヴィネ・ゲーート!! 』


  声と共に『ソロモン・フォーム』の胸の扉が開き、中から黒地に赤い眼がいくつも描かれたのローブが飛び出した。その胸部には金の眼が彫られた大きな飾りがあり、フードにもまた、顔の上半分を覆う金の眼の飾りがついていた。


  そして、上空に舞い上がったローブが降りて来て装着されると、俺の見る世界は闇に包まれた。まあ、顔に隙間なく張り付いた金の飾りで目隠しされているのだから当然だ。


「…………よし、始めるぞ」


  俺は意識を頭部の金の飾りに集中させる。すると、頭の中に直接映像が流れて来た。


  目で見るのと違い、周りを見渡せばゴーレムの中にいる比奈達の様子を見る事も出来る。…………いや、見ないけどね? 女性の部屋を覗き見とかしないからね、俺。


「…………!? 」


  地面に視線を向けると、二つの巨大なオーラが見えた。金色に輝くオーラと、それよりも遥かにデカイ闇のオーラだ。


  金色のオーラの主は慈愛に満ちた表情の『女神像』だ。おそらくダンジョンマスターの本体だろう。


  そして、その下の深い所から禍々しい闇のオーラを放っているのが、『ダーメイス』で間違いないだろう。


「…………見つけた」

『ダーメイスか!? 本物なら金髪の青年で両目の下にはほくろがあるはずだ! 』

「…………いや、それじゃ分からないな」

『何故だ、結構な特徴だろう? 』

「…………もう骨しか残ってないからだよ。やたら禍々しい鎧を着込んだ真っ黒い骸骨が立っている」

「真っ黒い骸骨…………ですか? 」


  真っ暗な部屋にたたずむ禍々しい鎧の骸骨。その周りには鎧と同じくらいに禍々しい剣やら槍やら盾やらがゆっくりと飛んでいる。


  鎧にも飛ぶ武具にも紅い宝玉の様な眼がついている。あれが何かは分からないが、良くない物なのは確かだろう。


「完全にモンスターになっているな。『ヴィネ』の見立てだと『ノーライフキング』だそうだ」

『ノーライフキングだと!? クソ! よりによって!! 』

『これは厄介ですね』


  『ノーライフキング』漢字なら『不死王』ってところだ。


  この世にいる全てのアンデッドの頂点。その身は死なない。斬っても叩き潰しても絶対に死なない。必ず『再生』する。その存在がある限り。


「倒せないって事か? 」

『いや、『消滅』させるか『浄化』すれば倒せる。しかしそのどちらも難しいのだ。『消滅』させるにはダーメイスの遥かに上をいくエネルギーが必要で、『浄化』するには、それこそ『聖女』なみの聖なる力がいる。どちらもここには無い』

「…………なるほどな。…………『消滅』に『浄化』か。…………何とかなるかもな」


  もちろん、『悪魔』の力でだ。

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