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第十六話 薬効の悪魔『ブエル』

「これから薬草採取とモンスター狩りをする訳だけど、その前に『悪魔』をもう一体使える様にしとこうと思う」

「悪魔…………『ケルベロス』みたいに戦うんですね? 」

「ああ、昨日のグレイトボアで踏ん切りがついた。勝てそうな悪魔とは戦っていく」


  自分の弱さが分かったからこそ、踏み出さないといけない。昨日の夜グルグル考えている時に、こんな台詞を思い出したのだ。結構好きだった漫画の、ライバル役の台詞だ。


「勝てそうって事は、強くは無いんですね? 」

「まあ、賢いタイプのヤツだからな、姿は怖いけど」

「なんて名前の悪魔ですか? 」

「ああ、『ブエル』だ」


  少し悩んだが、俺は『ソロモン・フォーム』のままで『ブエル』と対峙する事にした。『デビルズキー・ブレード』だけは持っておく。


  何せ『ブエル』との戦いは『変身ライダー・ソロモン』では描かれて無かった。どういう戦いになるのかは未知数なのだ。


  そして、メテオラに少し離れておくように言って、俺は悪魔を呼び出した。


「来い! 『ブエル』! 」


  瞬間、周囲の景色から色と音が消えて灰色になり、目の前の空間にピシリッ! と、白い亀裂が入った。その亀裂は徐々に広がっていき、そして弾け飛んだ!


「…………ここは? 」


  ケルベロスの時は、満天の星が輝く夜の闘技場だったが、今回はその時とは全然違って薄暗い室内だ。古い本の匂いがする図書室って感じの部屋だ。


  ただ、規模はでかい。暗いせいもあるだろうが果てが見えないのだ。いくつもある本がギッシリと詰まった本棚も、どれ程の高さがあるのかは分からない。


『客人とは珍しい』


  突然かけられた声に振り返ると、フラスコやらメスシリンダーやらが置かれたテーブルの前に、異形の悪魔がいた。


  解ってはいたが、実物を見ると凄いな…………。 宙に浮くライオンの頭、そしてそれを囲むようにヤギの足が五本生えている。紛れもなく、悪魔『ブエル』がそこにいた。


  しかも、喋っている…………。


『君は誰かね? なぜ私の部屋にいる』

「…………初めまして、俺はソロモン…………いや、隼人って言います。貴方の力を貸して貰いに来ました」

『むぅ? ……………………ふむ、神の力を感じるな。それに、悪魔の力もだ。既に誰かと契約しているのかね? 』

「あ、はい。ケルベロスと」


  俺はケルベロスの鍵を呼び出して、ブエルに見せてみた。


『……………………なるほど、なるほど。その鍵、使って見せてくれるかね? 』


  俺はブエルの望みに答えて、ケルベロスキーをベルトに差し込んで回した。途端にベルトから声が流れた。


『ゲーートオーープン! ケルベロス・ゲーート!! 』


  そして俺の胸の部分の扉から青い炎のケルベロスが飛び出し、俺の後ろに回り込む様に走って、背中側から突っ込んで来た。


  最後に、俺の胸と両肩がケルベロスの頭に変形して、俺は『ケルベロス・フォーム』に変身した。


『…………ウム。興味深いな、身体能力も上がっている様だ。よもや神が、我ら悪魔をこのように使うとは思いもせんなんだ』


  ブエルは俺の回りを飛んでジロジロと見た後で、俺の正面で一度頷いた。


『ウム、とても面白い。私も力を貸してやろう。どうすれば良いのだ? 』

「…………え!? …………どうするんだろう? 」

『む? 方法が解らんのか? ケルベロスの時はどうした』


  俺は、ブエルにケルベロスと戦って、勝った時に鍵が出てきた事を話した。


『…………なるほど、『試練』だな。よくある手ではある。では、私の試練を受けると良い』

「…………戦うって事か」

『バカモノ。何も戦うだけが試練ではなかろう。…………そうだな、少し授業をしてやろう。時間はどれだけある? 』

「え!? …………じ、時間は止まってるから何とも言えないけど、勉強すんの? 」

『止まっておるなら好都合だな。ホレ、そこの者もこっちに来い』


  ブエルの言葉に振り返ってみると、本棚の影からメテオラが顔を出した。姿が見えないと思ったら、そんなとこにいたのか。


『では何を教えようか。私の得意とするのは薬学だからな、それにしようか』

「あっ、それなら丁度良いですね、隼人さん」

「え? …………ああ。薬草採取の依頼受けてるからか」

『それは何とも好都合だ。良し、ではその薬草についての知識を教えてやろう』


  そう言って、ブエルはヤギの足に引っ掻ける様にして器用にメガネをかけて見せた。…………蹄の足で、よくメガネをかけれるものだ。


『最後にテストをするからな、真面目に取り組む様に』

「ええっ!? テ、テストォ!? 」

「はい! 頑張ります! 」


  異世界での勉強もそうだが、まさかのテストである。しかし、ゲンナリとする俺とは対照的に、メテオラは実に楽しそうだ。こいつ、初めての事はみんな大好きだからな。


  ブエルが自分のテーブルをトントンと叩くと、床から机と椅子がニセット生えてきた。そして、その机の回りが若干明るくなった。


『座りなさい。授業を始めよう』

「はい! よろしくお願いします! 」

「……………………お願いします」


 ◇


  再び世界が色と音を取り戻した時、俺はグッタリとし、メテオラはツヤツヤしていた。


  そんなに楽しいかね、勉強。…………まぁ、『ブエル』の鍵は手に入ったから、良しとするか。


  ……………………た、戦うよりコッチの方がキツイ!

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