第百六十六話 揃う三兄弟
何と、この作品にレビューを頂きました!!
本当に嬉しく、光栄です。ありがとうございます!!
これからも頑張りますので、よろしくお願い致します!
『フゥーー、助かったわい』
白髪混じりの魔法使い風の男、元・『陣魔の識者』のダンジョンマスターは、無精ヒゲも生えているおじさんだった。
子パンダ、武士みたいな少女と来て、最後におじさん。みんな『セブリア神殿』の子供ダンジョンだそうだが、統一感が無さすぎるな。
…………そして、もっと問題な奴がいる。
『ソイツ! そこの女は『魔王』だろ!! しかも『エンブレム』をいっぱい持ってるな!! アタシに寄越せ!! キヒャヒャヒャヒャ!! 』
一部屋くらいの大きさの結界に閉じ込められている『オートマータ』の姿は、オートマータを造った魔王の記憶の中の姿とは、かけ離れていた。
結構な美人だったハズなのに、髪はボサボサになり、眼は血走り、顔や腕の見える位置には亀裂が入っている。
そして今は、眼をギラギラさせてメテオラを指差し、狂った様に笑っている。その姿は正に『狂気』だった。
「…………おいおい、思っていたのと随分違うぞ? どうなっているんだ? 」
『お前さんらの知り合いか? ここに来たばっかの時は綺麗で物騒な姉ちゃんだったんだがな、急にこんな風に壊れちまったんだ』
「…………急に? 」
おじさんの話を聞いてオートマータを見ると、狂った様に笑いながら肌がボロボロと崩れているのが分かった。…………崩壊している真っ最中ってことの様だ。
「…………オートマータの中に『エンブレム』の存在を三つ、そしてその他に大きな力も幾つか感じます」
「『エンブレム』が三つ!? 一個増えてるぞ? 」
『どうやらどこかで、もう一人『魔王』を殺して奪ったようですね。そして、幾つもの『財宝』も取り込んだ結果が、この有り様なんでしょう』
…………そうか。考えてみれば、物凄い力がある『財宝』が幾つもあって、しかも内乱中の王国なんてのは『魔王』にとっては都合がいい国だ。ここを拠点にしようとする魔王がいても不思議じゃない。
いや、実際にそういう魔王がいたのだ。オートマータはソイツを狩って、更なる『エンブレム』を手に入れたのか。
『ケヒャヒャヒャヒャ!! 』
結界の中でロボットを生み出しては、結界にぶつけて破壊するオートマータ。取り込んだ数々の力の大きさに正気を失ったその姿に、俺は憐れみすら覚えた。
「…………このまま倒す事は出来ないのか? 」
『いやぁ無理だ。ここに来た時のマトモな状態じゃあ捕らえる事も不可能だった。あの様子になってからは隙だらけだったから死ぬ気で頑張って何とか捕らえたが、もうギリギリだった。母者が代わってくれるのがあと十秒遅かったら、結界も破られとったろうな』
ふぅーー。とため息をついて座り込むおじさんは、ふと顔を上げて俺達を見回した。
『…………ん? 誰だお前さん達。何でこのダンジョンに人間が入れとるんだ? 』
「…………今更かよ」
ダンジョンマスターは結界の維持の為に動けないので、おじさんへの現状の説明は俺達が行った。
ダンジョンマスターによると、もうしばらくはオートマータを捕らえておけると言うので、俺達はゴーレムの中におじさんを案内した。
『クマーーーー! 』
『兄上! 』
『おおっ! 『銀燭』に『練剣』! 無事で良かった!! 』
子パンダとツバキに抱きつこうとしたおじさんだったが、二人に突っぱねられた。
『兄上! 我らの事は名前で呼んで下され! 拙者は『ツバキ』だと何度も言っておるでしょう! それに『銀燭』は『アルジャン』という名を頂いております!! 』
『クマ!! 』
『ムム? 『ツバキ』は昔からそう言っていたが、『アルジャン』は初めて聞いたな。まあ、しかし分かった。…………ワシとしては何とも呼びづらいがな…………』
『馴れて下され! 』
『クーマ! 』
わかったわかったと頭をかくおじさんに、ツバキとアルジャンはやっと抱きついた。
「そうだ、貴方の事は何と呼べばいいですか? 名前を教えて下さい。…………ちなみに俺は隼人と言います」
流れでメテオラ達も紹介し、最後にシルキーの紹介も行った。
『ああ。シルキー殿、お世話になる。そして皆さん、ワシの事は『ジンマ』と呼んで下され』
「…………それってダンジョンの名前ですよね? 」
『だから良いのだ。ワシは『ジンマ』。それ以上でも以下でもない。例えワシのダンジョンが消えたとて、それは変わらんのだ』
その後、シルキーの手によって作られたジンマの部屋は、洞窟の様な部屋だった。これもジンマのこだわりらしく、どうやらジンマは、かなりストイックな性格の様だった。
ちなみにジンマの能力は『魔法』と『結界』。まあ、見たまんまって事だ。