第百六十四話 兵機の悪魔『サレオス』
「『サレオス』ですか。その悪魔と契約するんですね? 」
俺は悪魔の鍵を呼び出す前に、メテオラと話しておく事にした。なにせ、今回は心構えが必要だからな。
「ああ、そうだ。ただ、俺は『サレオス』の能力は知っているが、どういう奴なのかを知らない。まあ、大体の悪魔はそうなんだけど」
「みたいですね。本当に個性的ですもんね、悪魔って」
「我が強くて天界を追い出される奴らだからな…………。いや、そうじゃなくて、今回は戦闘になるとかなり厄介なんだよ。何せ相手になるのが巨大ロボットだからな」
そう。『サレオス』は巨大ロボットを操る悪魔だ。少なくとも『変身ライダー・ソロモン』ではそうだった。
巨大なワニ型戦艦から、人型ロボットへの変形。中々にロマン溢れる悪魔なのだが、実際に戦うとなると男のロマンがどうとか言ってられない。倒す方法を考えねば。
「巨大ロボット…………城塞都市バシダにあったデカイ奴ですか? 」
「ああ、それと似たような物だ。まあ、性能もカッコ良さも『サレオス』のロボットが勝ってるけどな」
「うーん。あのデカさだと大変そうですね。しかも動いている訳ですもんね」
「まあ、一応巨大ロボットには『倒し方』ってもんがあるんだけどな。脚を狙うとか関節狙うとかコクピットを破壊するとかな。…………実際に出来るかは謎だけど」
「…………でも、実際に戦うかは分からないんですよね? 」
「…………まあ、それは行ってみないとな」
確かにメテオラの言う通りだ。でも、巨大ロボットだぞ? 心構えは必要だと思うのだ。
◇
『いよぅ! よく来たなお前ら!! 歓迎するぜ!! 』
覚悟を決めて『サレオス』の鍵を呼んでみれば、目の前にいるサレオスは俺達を大歓迎だった。
サレオスの世界を一言でいうならば『格納庫』だ。巨大なワニ型ロボットを中心として様々な設備が並び、そこでは作業着姿の悪魔が働いている。恐らくは全員がサレオスの部下なのだろう。
正直、俺はこの光景にワクワクしている。巨大ロボットもそうだが、この正しく『格納庫』って感じの設備がたまらない。そこで働いている悪魔の服装がツナギってのもポイントが高いのだ。
『へへっ! ハヤトだったか。お前もロボットが大好きなクチか? 解るぜ、同志! 』
そう言って人懐っこい笑顔を見せるサレオス。その姿はパイロットスーツに身を包んだ色黒の大男だ。ボサボサの短い金髪と、鼻の上に横一文字に刻まれたキズが、いかにもロボットモノの主人公って感じだ。
『ハヤトは俺と契約を結びに来たんだよな? 』
「ああ、そうだ。是非とも力を貸して欲しい! 」
『良し! ならば試練だ!! ついて来い!! 』
試練の宣言を受けた俺達は、サレオスの案内の下でとある部屋へと通された。
そこはマシンが一つあるだけの殺風景な部屋だった。中央にあるマシンは、人が中に入れる様に階段とドアがある。
「…………これは? てっきりロボットと戦わせられると思っていたんだけど? 」
『ハッハッハッ!! 俺の『アリゲリオン』は生身の人間と戦う為のロボットじゃない。ハヤトが巨大ロボットで向かって来るなら相手になるけどな!! 』
…………そうか。まあ、助かったな。巨大ロボットとの全力戦闘なんて生身どころか変身していてもキツイからな。
「じゃあ、試練ってのは? 」
『ああ、それはこのシミュレーターを使う』
「シミュレーター? 」
『そうだ! コイツは『アリゲリオン』での戦闘訓練を擬似的に体験するためのマシンだ。実際の動かし方や、攻撃方法を学ぶためのシミュレーターさ! 』
「へぇ、これでそんな事が出来るんですね」
『ああ。そして今からお前達にはこのシミュレーターに入り、『アリゲリオン』の動かし方を覚えてもらう! 』
おおっ! これは予想外だ。こんなゲームみたいな試練だとは思わなかった。これは楽しくなってきたな!
『そして動かし方を覚えたら戦闘訓練に移る。そこでのスコアが一定以上なら試練はクリアだ! 』
「一定以上? 一定以上ってのはどのくらいだ? 」
『このシミュレーターは、戦闘訓練を終えると結果を採点してくれる。動かし方や射撃精度なんかを見て、それがどれだけ理想に近いかを教えてくれるんだ。ちなみに俺の最大値は百%だ。だからそうだな、九十%以上で合格としよう! 』
「よっしゃ! 任せろ!! 」
俺は気合いを入れて『アリゲリオン』のシミュレーターへと入っていった。
「…………おおっ! 凄いなこれ。本当にロボットのコクピットみたいだ! 」
何だか日本のゲームセンターを思い出した。この手のゲームは良く見ていたし、やっていた。九十%で合格? ハッ! 百%目指してやるぜ!!