第百四十六話 ヴァプラの策
明けましておめでとうございます。
拙いながら物語を書き始めて、とうとう年を越しました。
まあ、まだ一年にもなってないので、まだまだですが。
今年も頑張りますので、読んでやって下さいね。
ゴーレムの中で卵型ロボットを調べていると、ガルダが帰って来た。
「おお、帰って来たか。それで、街の住人はいたか? 」
『ピィッ! 』
俺の質問にガルダは一声鳴いて頷いた。…………そうか、いるのか。街の住人は、やはり囚われているようだ。
トルホク王国の斥候から貰った資料によると、あの街の住人というのは、『王太子』に味方する貴族の縁者と、その奴隷達だ。それを助け出すとなると、マクフマ王国の内乱にもガッツリ関わる事にならないだろうか? この時点で関わりたいモノじゃ無いんだけどな。
「ロボットの数はどうだ? 」
『ピィッ!! 』
俺が質問すると、ガルダは机を四回叩いた。
「…………四十体以上か? 」
『ピィッ!! 』
…………多いな。ロボットに見つからない様に囚われている人達を解放するのは無理か。かと言ってロボット達との戦闘になれば、囚われている人達を巻き込んでしまうかも知れない。
森の虫型ロボットみたいに自爆機能とかついていたら最悪だからな。
…………四十体以上ものロボットに見つからない様に助け出すのは不可能。と言って力ずくも悪手と。参ったな、コレは。
「…………何とかならないか? ヴァプラ」
『んー? 何がだ』
「四十体以上の敵に見つからない様に、囚われた街の住人を移動させる方法だよ」
『…………フム。普通に忍び込んで、というのは不可能だろうな。絶対気付かれる。何人かずつなら『デカラビア』でいけるかもな、確信は無いけど』
「…………うーん。やっぱ見つかるリスクが高いよな? 」
『まあ、倒すのが一番早くて確実だよな。全てのロボットを同時に倒せば、見つかる心配なんかいらないしな』
我ながら無茶を言った自覚があるので、そう巧い手が出て来るとは思っていなかったが、全てのロボットを同時に倒すってのは流石に無いだろ。
「それが出来れば苦労は無いな」
『出来るぞ? 』
「…………は? どうやって」
『これを見ろ』
そう言うとヴァプラは、アームを分解中の卵型ロボットに突っ込んで一枚のメダルを取り出して見せた。
金色の輝きを放つそれは、紛れもなく『金貨』だった。
「おお、金貨だ。…………で? それが何だ」
『コイツはな、ロボットの部品として組み込まれているんだ。おそらくはロボットという物を最初に想像力で造り出した『異世界人』のこだわりだろうな。オートマータが造ったハズの森の虫型ロボットにすら、ミニチュアだが入っていたからな。あの人間に似せたロボットにも間違いなくあるだろう』
「…………『異世界人』のこだわりが、能力を奪ったオートマータにも受け継がれているのか? 」
なんだ? 異世界にはそうゆうロボットアニメとかがあるのだろうか? 必ず金貨が組み込まれている設定とか?
『恐らくはそのオートマータの中にもこの金貨は入っているだろうさ。…………つまりは、全てのロボットにこの金貨は入っている。ならばこれは『弱点』に成り得る! 』
「つまりはソイツを取り除く事が出来ればロボットは止まる訳か? いやでも体の中にある物を、そんな簡単には…………」
『いや、取り除くだけではダメだ。別の物と『交換』する。あれらが一瞬でぶっ壊れる物とな』
「更に難しいだろ。…………ん? 『交換』? …………そうか! 『ザガン』か!! 」
『正解だ』
変換する悪魔『ザガン』。この悪魔の能力は特殊で、『物質を交換する』能力だ。それも、『等価交換』とかいう制限はない。例えそれがダイヤモンドと小石でも、ザガンは交換してしまう。そんな特殊な力を持つ悪魔なのだ。
「なるほどな。確かに『ザガン』の必殺技なら、ロボットを纏めて倒す事が出来るな」
『ああ。だがまだ呼ぶなよ。その前に交換する為の物を造る必要があるからな』
ヴァプラはアームを伸ばして何やらメモを取り、それを俺に渡して来た。
「ん? これは何だ? 」
『材料のリストだ。そこに書いてある材料を『ハーゲンティ』に渡して、錬成して貰ってくれ。材料はマジックバッグにあるのを確認済みだから、『ハーゲンティ』に渡すだけでいい』
「…………うん。確かにあるな、これなら。分かった、準備が出来たらまた呼ぶ」
俺は『ヴァプラ・フォーム』を解除して、錬成の悪魔『ハーゲンティ』を呼び出した。
これが終わったら、また『ヴァプラ』を呼んで、そして更に『ザガン』と契約をしなければいけない。
忙しくなったものだ。だがこの忙しさが、前に進んでいる何よりの証しなのだ。