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第百四十二話 『オートマータ』

  『十日目』


  人を殺すのは苦しい。それも、女子供までとなると、こんなに苦しい。昨日は、食事をする気にもなれなかった。


  虎型ロボットと雑魚ロボットは造るのをやめた。あれらには知恵が無さすぎる。もっと、頭の良いロボットを造らなくては。


  『十五日目』


  獣型ロボットや虫型ロボットを何体か造った。


  しかし、どれもこれも俺の求めたロボットとは違う。どこをどう直していいのかも解らない。


  頭が良いとはなんだろう? 意思とは、どこにあるモノなんだろう?


  『十八日目』


  ひたすらに設計図を書いた。たが、上手くいかない。


  俺の知識では限界がある。ここにパソコンの一つもあれば違っただろうか?


  そうか『人工知能』だ! これを想像出来ればイケる!


  『二十五日目』


  人工知能を造ろうと思いついて何日経過しただろう。未だに突破口が見出だせない。


  俺は手にする能力を間違えたのかも知れない。


  『三十二日目』


  今日は大変な一日だった。おそらくは今居る国のだとは思うが、軍隊が攻めて来たのだ。


  大軍が迫る地響きを聞き、実際にそれを見た時に俺は恐怖した。誰か助けてくれと願った。


  しかし、そんな都合の良い事など有り得ない。俺は想像力を振り絞って『巨大人型兵器』を造り出した。


  俺のいた世界でもっとも有名な巨大人型ロボットだ。しかし、一つ誤算があり、これは俺が乗り込まなければ動かないと直感で解った。


  だが、ロボットに乗るのは男の夢でもあったので、俺は乗り込み、後悔した。


  結論から言って乗り心地は最悪だった。上下左右に振り回され、強い振動に襲われ、それはもう酷いモノだった。


  結果として軍隊は壊滅させる事が出来たが、俺はもう二度と巨大人型ロボットには乗らないと心に決めた。


  『四十三日目』


  俺はついにやり遂げた。『人工知能』を完成させたのだ。


  不完全なモノならば、幾つか造ったのだが、今度のは完璧だ。何せ、その不完全だった『人工知能もどき』をも結集して造り上げたのだ。


  なぜこれが完璧かと言うと、俺の力を借りてだが自分の想像力でロボットを造り出せたからだ。これでやっとマトモなロボットを量産出来る。


  俺はこの『人工知能』に、『オートマータ』と名前をつけた。


  『五十日目』


  『オートマータ』が安定してきたので、俺は自分が『魔王』である事とその目的を話して聞かせた。


  その際の話の流れで、オートマータに『魔王』もやって貰おうかな。と冗談を言うと。


『ならワタシは、もっと完璧でなければなりませんね』


  と言ったので、「なら出来る限り完璧になれ」と言ってやった。


  『五十四日目』


  オートマータが姿を消した。


  昨日、オートマータが造った鳥型ロボットから何か報告を受けて飛び出し、それから戻って来ていない。


  オートマータが造った鳥型ロボットは俺の言うことは聞かないし、言葉も通じない。オートマータは、一体どこに行ったのだろうか。


  『六十日目』


  オートマータが帰って来た。しかし、どうも様子が違った。


  『フフッ。ただいま』


  何だか、普通の女性と話している様だった。随分と流暢に話す様になったものだ。一体彼女はどこで何をして来たのだろうか。


  『六十一日目』


  恐ろしい事が解った。


  何とオートマータは、鳥型ロボットに『魔王』を探させ、見つけた『魔王』を殺して魔王の力の源たる『エンブレム』を奪って来たのだ。


  そして、その『エンブレム』の力によって、オートマータは進化した。流暢に話す様になったのもそのためであり、今や外見まで人間の様だ。


  だが、進化するために『エンブレム』の力を使いきったらしく、特別な力は持っていなかった。


  だからこそ彼女は、更なる力を求めている。


  『七十日目』


  恐ろしい。俺はオートマータが怖い。


  あれからも彼女は『魔王』を探し続けた。しかし、見つけたのは既に力を引き出しているプロレスラーの魔王と、鬼神の様に進化している魔王で、近づく事も出来なかったらしい。


  だが、いや、だからこそ、彼女は力を求めている。


  俺は怖い。近頃オートマータは、俺の力を研究している。


  怖い。オートマータは、俺の力を自分の物にしようとしているのではないか?


  最近になって、俺は『ロボット三原則』という物を思い出した。今になって思い出したのだ。もちろんオートマータには組み込んでいない。


  怖い。怖い。怖い。


  あんなモノを造るんじゃなかった。魔王なんかになるんじゃなかった。俺は、死にたくない。


 ◇


  日記は、ここで終わっていた。


  そして俺は、床に落ちている服の不自然さに気がついた。この服は、脱いだ形跡がないのだ。着たまま、中身が消滅したから、ベルトもボタンも締まったままなのだ。


  この名前も知らない『魔王』は、自らが造った『オートマータ』と言うロボットに殺され、その『エンブレム』を奪われたのだ。


「ロボットを造る力を持った奴が、二人いる謎が解けたな」


  今は『オートマータ』が、『魔王』だ。

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