表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/716

第百三十二話 アメンボ・ロボット

  港町を脱出すると、植物モンスター達は追って来なかった。どうやらあの町だけがテリトリーのようだ。


  取り敢えず少し離れた場所にゴーレム要塞を出して一休みする。俺達が中に入った途端にゴーレムが警戒モードになった事から、この辺りもモンスターの巣窟ではあるらしい。


「さっきの港町には参ったな。しかしこの国にはあんな廃墟がいっぱいあるんだろ? 国自体が機能していないなら、モンスターも増える一方だろ? 」

「内乱が続いているこの国にはギルドも無いのよね。冒険者が居ないってのもモンスターが増える要因の一つよね」


  俺は『ブエル・フォーム』で『エクスポーション』を作りながら比奈と話していた。ブルウッドにいる間に、薬師ギルドから大量に『フジスミ草』を貰ったので、作っておこうと思ったのだ。


  それにしても、マクフマ王国ってのは問題が多すぎるな。町として滅びてると言っても港だ。あの港が使えないのは痛すぎるだろうに。


『フム、不思議な話だな』

「何がですか、ブエル先生」

『その港町のモンスターは植物系だったのだろう? 何故植物系のモンスターが塩水の近くにいるのだ? 』

「え? 」

「あっ! 言われてみればそうね! おかしいわ!! 」

「え? …………何が? 」


  何がおかしいのか解っていないのは俺だけみたいだ。比奈が呆れ顔をしている。


「解らないの? うーん、じゃあ『塩害』って聞いた事ない? 」

「あっ、ある。塩害…………、そうか! 塩が駄目なのか」

「そう、植物に塩水を与えるとすぐに枯れちゃうのよ。海水なんて、一番ダメじゃないかしら」

『ウム。にも関わらず港町を棲みかにしていた。なぜそこだ? 町に棲むにしても、この国には廃墟が溢れているのだろう? 』

「…………なるほど。確かにおかしい」


  あの港町から少し離れた所には森がある。植物系のモンスターなら、元々の棲みかは森なんじゃないだろうか? だとしたら、アイツらは森を追われてあの港町に行った事になる。


  ちょうど調合も終わったので、俺は空いているテーブルにマジックバッグから取り出した地図を広げた。これは、トルホク王国の斥候兵から貰った資料の一部だ。


「えっと、トルホク王国のミズモ陛下が言っていたのは…………、これか、城塞都市『バシダ』。ここが、正体不明の巨大ロボットがいるって所だが。…………港町のモンスターとは流石に関係ないか? 」

『フム。そのロボットとやらが居たというだけなら、一概にそうとも言えんだろう。そこだけにいる訳でもないのだろう? 』


  確かにブエルの言う通りだ。何が目的なのかは解らないが、その異世界人はロボットを造りまくっている様だしな。先ずはあの植物モンスター達が棲みかにしていたと思われる森の様子を見に行ってみるか。いや、それよりも。


「来い『ドライアド』! 」

『…………呼びましたか? ハヤト』


  俺は今の状況をドライアドに説明し、近くの森を調べる様に頼んだ。樹木の精霊であるドライアドなら、俺達よりも遥かに詳しく調べられるだろうからな。


  てな訳で、森の方はドライアドに任せて、俺達はこの辺りにいるモンスターを調べる事にした。ゴーレムが警戒している以上、確実にいるからだ。


  ちなみに、俺の変身は何が出て来てもいいように『ソロモン・フォーム』に留めている。


「ゴーレム要塞を拠点として、取り敢えず一回りだな。ラルファは空から見てくれるか? で、空飛ぶモンスターに襲われたらゴーレム要塞に逃げる感じで」

『分かりましたわ』


  俺達が今いるのは草原だ。普通にモンスターが出て来るなら、スライムだの獣だのだと思っていたのだが。


  俺達の前に現れたのは、よく解らないロボットだった。何が解らないのか? それはこの現れたロボットの用途である。


  なんと言うか、大きなアメンボみたいな形のヤツが、壊れた玩具の様な歪さでガシャンガシャンと歩いているのだ。…………なんだコレ?


  胴体らしき部分は一応ある。そこにはカメラのレンズの様なモノもあるから、何らかの用途はあるハズなのだが。…………例えるなら、ゲームに出て来る雑魚敵だろうか?


「あ! 隼人さん! ヴァプラを呼んでみたらどうですか? 」

「なるほどな、さすがはメテオラだ。来い! 『ヴァプラ』! 」

『ゲーートオーープン! ヴァプラ・ゲーート!! 』


  『ソロモン・フォーム』の胸の扉が開き、そこから出て来た『戦闘機』が飛び出し、形を変え俺と合体した。


『呼んだか、ハヤ…………ト……。おぉっ!? 』


  アームの先にレンズがあるだけの姿にも関わらず、ヴァプラが眼を見開いたのが解った。ヴァプラの視線は、アメンボ・ロボットに注がれている。


『…………これは見た事の無いロボットだぞぉ? 自立型? いや、単純なプログラムで動いているだけか…………。しかし無駄が無いように見えて無駄だらけだな、何だコレ? 』

「興味持ったか? ヴァプラ。『勇者』なのか『魔王』なのかはまだ解らないが、異世界人の作品だぞ? 」

『なるほど、異世界の…………。良し解った! 俺が解体する! 』


  言うが速いか、俺の体から伸びたアームがアメンボ・ロボットにさっとうし、あっと言う間にその機能を停止させる。


『さぁ! 持ち帰ろう! 』

「わかった。メテオラ、手伝ってくれ」

「はい! 」


  俺達はそれをマジックバッグに押し込んで、ゴーレム要塞へと戻る事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ