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第百二十八話 さらばブルウッド

『ホウホウ! 良かろう! では私がミスリルについて教えてやろう! ホウホウ! 』

「は、はい。よろしくお願いします」


  リンゴパーティーから一夜明け、俺はワウンガ子爵の屋敷に来ていた。俺の姿は、さっきの声で分かる通り『ストラス・フォーム』だ。『ソロモン・フォーム』の顔から胸にかけての右半分が、フクロウの形になっている。


  そして俺の目の前には、机に座りノートを広げて羽ペンを持ったワウンガ子爵と、…………何故かトルホク王がいた。


「…………ミズモ陛下もストラスの授業を受けるのですか? 」

「もちろんじゃ! 悪魔の知識を代償も無しに得られるなど、こんな得な事は無い! ストラス殿、どうかよろしくお願いする」

『ホウホウ! 人間の王にしては見所がある! ホウホウ! 』


  まあ、トルホク王の言い分も解るし、ストラスがいいなら別にいいんだけどね。


  それから、ストラス先生によるミスリルに関する授業が行われた。俺やメテオラの場合は時間が止まっている中だったので授業がいくら長くても良かったが、今回はそうはいかないので、ストラス先生も要点をまとめて授業している。


「…………何か、俺が受けた授業よりも解りやすいな。順番が出来てると言うか纏まっていると言うか」

『ホウホウ! ハヤトやメテオラに授業をした経験が生きている! 何でもやってみるモノだ! ホウホウ! 』


  ブエルもそうだったのだが、ストラスも人に教える事を楽しんでいる様だ。自分が何百年も蓄えた知識を披露するのが楽しいらしい。


  ストラス先生の授業は三日続き、ワウンガ子爵はミスリルについてほぼ完璧な理解を得た。トルホク王は…………まぁ、一日目しか参加出来なかったからな。本人も悔しがっていたが、王様は忙しいのだろう。王都へと帰って行った。


「ハヤト様。素晴らしい知己を与えて下さった御恩、このワウンガ、生涯忘れませぬ! 御恩に報いる為にも、この街を守り抜きますので、どうかまたいらして下さい! 」


  ストラスの授業を乗りきったワウンガ子爵に、俺はすっかり尊敬された様だ。凄いのは俺じゃなくて悪魔だと何度言ってもこの調子だった。


「……………………」

「…………ルルカちゃん。またいつか、会いに来るから」

「イヤ! 」


  そしてルルカは、相変わらずメテオラにベッタリだった。俺達四人は、既に旅支度を終えて街の外にいる。これから南にある港町に向かい、そこから船で海を渡ってマクフマ王国に入るつもりだ。


  ただ、マクフマ王国への入国許可は取れないし、内乱の続く国の近くには海賊も出没するため、普通の船では行けない。なので、悪魔の力を使って海を渡るつもりなのだ。


「ルルカ! いい加減にしな! 」

「…………うー! 」


  女将さんによってメテオラから引き剥がされたルルカは、今度は女将さんに抱きついて顔を見せなくなった。拗ねた様だ。メテオラが苦笑しながら、その頭を撫でている。


「よし、じゃあ行くか。皆さん、お世話になりました! 」

「この街にはいい思いでが沢山あります。また来ますね! 」


  俺とメテオラがそう言うと、街の人達は温かい言葉を返してくれた。その中には商人のツーガや冒険者ギルドの受付をしているキータ、それに薬師ギルドの面々の姿もあった。


  俺達は声をかけてくれる面々にもう一度お礼を言って、『オルトストライカー』に乗り込んだ。


  そして背中に声を受けながら走り出す。俺の後ろに乗るメテオラや、サイドカーの比奈なんかは、街の人達に手を振り返していた。


 ◇


  『オルトストライカー』を南に走らせること一時間。俺達の目には、水平線が映っていた。


「海だーーーー! 」

「海ですね! でっかいです! 」


  海が見えた途端に、比奈とメテオラが声を上げた。まあ、その気持ちは分からなくもない。俺も少しだけウキウキしている。


  潮風の匂いは地球もここも大差無い。だからだろうか、妙に懐かしい気持ちになった。


「ねぇ隼人! 海が見えるこの辺りでお弁当にしましょうよ! 」

「ああ、いいかもな! 」


  ブルウッドの街を出る前に、『森の木漏れ日』の旦那さんがお弁当を作って持たせてくれたのだ。せっかく旦那さんが作ってくれた弁当なのだ、どうせなら景色の良い所で食べようと話していたのだ。


  俺達はバイクから降りて、ラルファが近くを飛び回って見つけてくれた良さそうな場所でお弁当を広げた。


  暖かい日差しを受け、大きな海を見ながら食べる弁当は最高だった。

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