お前の原価はいくらだ
僕は高校の帰り道、道端でメガネを拾った。なんとなくそのメガネをかけてみた。そして、周りを見渡すとある事に気がついた
―そう、原価が見みえる。
自分の付けている時計にも原価が見える。バイトを頑張って買った時計なのに少し悲しくなった。それからハンドメイド商品から新聞紙、漫画など今まで見えなかった原価を見ることが出来る様になり、今まで払っていたお金がバカバカしくなってしまった。
ある日、街でそのメガネをかけていると人間の原価も見ることが出来る事に気がつく。
いろいろ試してみたところ、クズな人間ほど原価が低い。どんなに着飾っていてもどんなにお金を持っていようとだ。それがわかってから物の原価なんて興味が無くなり、人間ばかり見るようになった。
友人の原価、隣の席の女子の原価、クラスの担任の原価、全てがお金としての価値で人間を評価するようになった。
昼休みに屋上で購買で買った原価38円のサンドイッチを食べていると、何人かが屋上に上がってきた。騒がしさからすると三人ぐらいか。
上がってきた三人は校内で有名なイジメっ子二人組、そしてどんくさいいじめられっ子一人。僕は三人をメガネ越しにジッと見ると三人全員が原価0円だった。
そう、あれらは無価値な物と同じだった。無価値なものは、必要ないと思った。そう思った瞬間からはやく処分しなくちゃいけないと頭の中がいっぱいに声が聞こえる。
僕は三人の近くまでスタスタと歩いて寄ると、イジメっ子の一人が僕に気がついた。
「おい、なにジロジロみ―」
イジメっ子が言葉を言い終わる前に僕は腕に体重かけ、屋上から突き飛ばしていた。イジメっ子のもう一人はまだ理解できていないようで、柵から身を乗り出して下を見ている。下から目をそらし蒼白の顔でこちらを振り返る。
彼が僕に振り返ると同時に最初と同じように腕に全体重をかけて突き落とした。下の方でまるでバスケットボールが落ちるような音がした。
いじめられっ子に顔を向けると、彼は腰が抜けているみたいで、足が小刻みに震えている。手を差し伸べて無理矢理に立たせた、そして無言で下にイジメられっこも落とそうとした。
イジメられっこは落ちる瞬間暴れ、僕のメガネに手が当たり、メガネは屋上の床にカランっと音をたて落ちた。
僕は落ちたメガネに気付かずそのまま教室に戻った。
――あれから犯人は見つからず、僕はいつもの様に暮らしてる。価値が無いものが無くなっても意味がないし、罪悪感なんて感じなかった。
そしていつもの学校生活が戻り、放課後になった。
「なぁ、なぁ!」席の後ろのヤツが話しかけてきた。
僕は面倒なので振り返らずに無視をした。
「無視すんなよー!変なメガネ拾ってさ、お前の頭の上に0円って出るんだぞー」
【終わり】