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8 夕立


「ハハハ、結局、なんの収穫もなかったねえ」

と、良い笑顔で言ってエディお兄様は帰っていった。


 何故、収穫が無いのを嬉しそうに帰る? ワトソン君。





お兄様はそう言ったが、元々何か手がかりが得られるとは思ってなかった。

負け惜しみではないからね。たぶん。

犯人が衝動的に押してしまったのなら、犯人を捜してるというポーズだけで抑止力になると思うんだ。


もう二度としないなら、ねんざだったし犯人はみつからなくても良いかなと思う。

許すことを覚えた心の広いアラサーである。

まあ、考えの浅いエディお兄様には分かるまい。


とりあえず、ワトソン君に夜会に来ていた客に私が落ちたときどこに居たかの聞き込みを依頼しておいた。

丸投げともいう。


だって足が痛いからさあ、聞きに行けないし、エディお兄様は社交的だから向いてると思うのよ。

私は特にすることがないが、適材適所で事に当たりたい。



「無理しないで、ついでの時に聞いてもらえれば良いから」

とお兄様に配慮する。

「僕のお姫様も大人になったねえ……」としみじみされた。


なんかむかつく。






 エディお兄様が帰った後、夕空に稲光が走り、ボタボタと大粒の雨が落ちてきた。

雨の降り始め匂い、雨が地面をうるおし始めた土の匂いがする。


お兄様は濡れなかったかしら?


雷が嫌いな人は多いけど、私は好き。稲光って美しいと思う。

なんかスカッとする。もちろん、近くに落ちない前提で。

夕立はザアッと降ってすぐに上がった。よけい蒸し暑くなった。

肌が汗でベタベタする。

エアコンがあった前世が懐かしい。


マリーに言ってぬるめの風呂を用意してもらう。

湯加減はバッチリだった。

マリーはお茶以外は、優秀な侍女だ。


マリーに手伝ってもらって風呂に入る。

白い体が湯の中でゆれる。

足のあちこちと、おしり、腰骨、肩のところをぶつけたらしい。

青あざがあちこちに出来ていた。


「……うし」

小さく呟くと、背中を洗っていたマリーがくすっと笑った。






**




 あれから、2、3日過ぎた。アランは相変わらず帰りが遅い。

夜会の前も忙しかったけど、最近はそれ以上だ。


頑張って起きて待っていても、目も合わさない。

それだけではない。


 毎朝やっていたおはようのキスも、いってらっしゃいのキスもなし。

それどころか顔を合わせれば全力で目を逸らされる始末。


階段から落ちる前は子作り行為はなかったけど、おはようおやすみのキスをし、それなりに仲良くやっていたのだ。

帰りが遅くても寝ないで待ってると嬉しそうな顔をして、「先に寝てて良いんだよ」と優しい言葉をかけてくれていた。



今はなんだろう、儀礼的? 事務的? 心がこもってない感じ。

わかってしまった。


――ああ、このひとは私を見てない

見たくもないのね……


こういうときは、目を逸らさないで現実を見よう。

冷静に判断できるように情報を集めよう。



 まずは、アランにこの先どうしたいのか? 仲良くやっていくのか、別れたいのか? 階段で押したのは貴方なのか?、本人にちゃんと聞いておきたい。


攻略は迅速を旨とす。

情報収集は夜討ち朝がけともいう。


浮気疑惑などで夫の本音を聞きたいときは、言い訳する頭が回らない寝起きが良いという。

ということで、


――私ルイーゼ、明日の晩、アランの寝込みを襲いたいと思います!








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