表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/28

19 踏み込み




「アランはブルックの森に向かった! 行き先は森の奥の屋敷だ。先回りするぞ!」




 ダリアさんやフィリップ、影の働きのおかげで、港と競合関係にあるベルガー商会関係者がブルックの森の奥にある屋敷に出入りしていることは掴んでいた。


また、彼女を乗せたらしい辻馬車がブルックの森方面へ向かったという目撃情報もある。


森の奥にある空き家にベルガー商会関係者の出入りがあり見張りも居る。

ここにイレーヌが捕まっているとみて間違いないだろう。



私とフィリップは関係者としてついて行くと言い張った。

『危ないのでプロに任せろ』とエディお兄様が言ったけど、二人が心配な私たちは頑として譲らなかった。

まあ、フィリップが心配なのはイレーヌさんだけだけど。




アランには、わざとゆっくり森へ向かってもらったので、上手く先回りすることが出来た。






**







アランが書類にサインをして、ベルガー商会会長ダルメに渡す。


ダルメは嬉しそうにサインを確認すると、男達に指図した。


「用は済んだ。二人とも殺せ!」


「話が違うぞ。彼女を解放してくれるんじゃないのか!」


「二人とも解放してあげるさ。天国へね」


「僕らを殺せば、アンタ達が疑われるぞ!」


ダルメは心外なことを聞いたかのように肩をすくめるとこう言った。


「ハハハ、ちゃんと元婚約者との叶わぬ恋を儚んで心中したように偽装してあげるよ。愛する人と一緒に死ねて、幸せだろう?」





背後関係が分かり悪役が悪役らしいセリフを吐いたところで、部屋に踏み込む。


「ハイハイ、そこまでね! 影の方たちお願いね」

ルイーゼがパンパンと手を叩く。



「なんだ! お前達、やるのはむこうだ!」

ダルメが声を張り上げる。


「うふふ、わかってないみたいね。その人達はうちの影なの」

雇った男とうちの影を入れ替え済みよ。


「アンタ達は誰だ?」


「あら、ご存知なかったのね。初めましてアランの妻のルイーゼですわ」

スカートをつまんで優雅に礼をする。


「イレーヌの婚約者のフィリップだ」



ダルメが目を丸くする。


「あの侯爵令嬢と伯爵家嫡男がなぜだ? 令嬢はアランとは不仲だし、伯爵家嫡男は家に押しつけられた婚約者だからどちらの家も手出しはないと男爵に聞いていたのに……」


「まあ、情報が不確かでしたわね。フィリップ様はイレーヌさんにメロメロだし、うちも夫婦円満ですのよ」

うちの円満は最近あやしいけどw


「かくなる上は!」

ダルメが隠し持った刃物を振り上げて私たちに向かってきた。


私はすかさずダルメに向けてブレスレットのボタンを押す。仕込み針がダルメに命中する。

ダルメが腕を押さえてうずくまった。

お兄様に渡されたヤツだ。どうも我が侯爵家の人達は仕込み針が好きらしい。


ということで、影達がしびれて動かなくなったダルメを拘束して撤収した。

今頃、シーモア男爵の方もお兄様の方で押さえているだろう。





**



(アラン視点)



**




イレーヌが、こぶしを握りしめている。

子供の頃から、彼女が泣くのを我慢している仕草だ。


側にいたフィリップが彼女の握りしめたこぶしをそっと両方の手で包んだ。


「我慢しなくていい」


ああ僕だけが気づいてる仕草だと思ってたのに、フィリップも気づいてたらしい。


なんだ。ヤツもイレーヌをちゃんと見ているんだ。


「こわかった…」イレーヌがポロッと涙をこぼした。







**






「痛くないか?」


誘拐されるとき叩かれたのかイレーヌの頬が赤く腫れている。


アランの手がそっとイレーヌの頬をさわろうとして伸ばした指先が止まる。婚約者じゃないことを思い出したのか、そのまま自分の手をぎゅっと握りしめた。


「ずっと、君を幸せにしたかったんだ。ずっと君と一緒に居るのが当たり前で……。」


みつめあう二人。アランの彼女に向ける目がとても切ない。


ああ、ダメだわ。嫉妬で胸が痛くなる。






ただいま、ラブシーン観察中のルイーゼです。出歯亀じゃないのよ?



救出されて落ち着いたイレーヌがアランと二人で話したいというので、二人にしてます。

ただやましいことはないので少し離れて見てていいそうです。


心のせまーいフィリップがとっても嫌がりましたが、誘拐犯人が私じゃないって分かったらなんでも言うことをひとつ聞くという約束を果たしてもらいました。

二人はちゃんと話した方がいいと思うんだよね。







「見ててつらくない?」


二人を見て苦しげな顔をするフィリップに聞いてみる。

きっと私も同じような顔をしているのだろう。


「ああ。だが、これからちゃんと一番になるから問題ない」


「へえ、前向きね」

フィリップの前向きな発言に感心する。


「今は、女遊びしすぎて信用ないし……」

うん。知ってたか。


「ふふ、私も世間に信用ないわ。今回のことも皆に疑われたし。でも16年掛けて失った信用をこれから16年掛けて取り戻すわ」


「じゃあ、俺は一生掛けるさ。簡単に手に入るモノなんてつまらないだろう?」


遊び人が何やら言っている。

フィリップは報われない恋でも一生頑張るのだろうか?


二人がどんな結論を出すのか分からないけど、私は二人の決めたことを尊重しようと思う。


前世、いくつかの恋愛をしてきた私は知っている。




――全部すべての恋が上手く行くわけじゃない。


1つの恋が上手く行かなかっただけ。


見つめ合う二人がちょっぴりかすんで見えた。















毎日、暑いですね。皆様、いかがお過ごしでしょうか。


37度の炎天下、帰ってきて書いたので脳みそが沸いてるかもしれません。

あとで少し書き直すかも……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ