17 捜査本部
――信用なんて一瞬で失うものだ。
長年かけて失った信用を取り戻すには、それと同じくらいの年月がかかる。
フン! ルイーゼが16年かけて失った信用を取り戻すには、16年頑張れば良いのよ。
信用のないルイーゼです。
自分の信用のなさを痛感する今日この頃、皆様いかがおすごしでしょうか?
ダリアさんが商業関係、フィリップが伯爵家の情報網、侯爵家の影から入ってくる情報をまとめたほうがいいということで、自然と我が家がイレーヌさん誘拐対策本部と化している。
「アランが呼び出されたと言うことは、彼がターゲットってことね。考えられる可能性は、港関係と、彼のファン関係かしら?」
「ダリアさん、港関係で関わりの有りそうな商会を洗い出してもらえる?」
「わかったわ。すぐに調べさせるわね」
「フィリップ様は、港関係で対立しそうな貴族の動向を調べて欲しいの」
「了解した」
「エディお兄様、アランの女性関係は私がしっかり把握してるから影に探ってもらって。あとイレーヌさんの足取りを確認して」
「お任せあれ。お姫様」
「アランは、港や工事の現場で怪しい人物がいなかったか調査して」
「分かった。すぐに現地に指示を出す」
「情報が入ったら、すぐに私に知らせて。さあ皆でイレーヌさんを助け出すわよ!」
皆が駆け出す。私は今有る情報を整理し始めた。
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各方面から連絡が来る。
ちなみに連絡は人か伝書鳩である。
伝書鳩はハトの帰巣本能を利用して行うので、各所→巣(侯爵家)の一方通行となる。
侯爵家に連絡を入れたい人は、ハトを携帯することになる。
携帯電話ならぬ携帯ハトである。
おかげで侯爵家は、帰ってきたハトでポッポポッポとうるさい状態だ。
まず、ダリアさんから連絡が入った。
「アランの港と競合関係にあるハタワ港のベルガー商会に怪しい人物が出入りしてるわ」
フィリップからも報告が上がる。
「ハタワ港を所有するシーモア男爵の家に動きがある。ベルガー商会の会長の出入りもある」
影からも連絡が入る。
「アラン様のファンに怪しい動きはない。イレーヌ様の足取りを追うとともに、裏家業のものたちで誘拐を請け負った者がないか捜査中」
アランに領地からの報告が入る。
「領地にベルガー商会関係者の出入りあり」
「臭ぇな」
「ベルガー商会とシーモア男爵、怪しいわね」
「ああ」
「再度、重点的に調べるよう連絡して。あと彼らの屋敷や立ち入り先の調査もお願いね」
「そろそろ犯人がアランに接触すると思うの。影をお願いね」
アランに影の護衛をつけておいたが、犯人からの接触は意外なところから現れた。
「これ、広場にいたおじちゃんに頼まれたから」
アランに犯人からの手紙を持ってきたのは、アメ玉で雇われた何も知らない子供だった。