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まずは経緯を説明させて欲しい

20××年。


技術進歩の飽和が危惧されて久しい時代。


科学はそれでも加速度的に進歩し続け、人々にさまざまな恩恵をもたらしていた。


その中の一つにーー"嘘発見器"がある。


誰もが一度は耳にしたことのあるこの装置の仕組みはいたって単純だ


呼吸・脈拍・血圧など複数の生理現象を電子信号として読み取り、そこから異常を感知して対象者の発言が"嘘"か"本当"かを判別するーーただそれだけである。


とはいったものの。

ご存知の通り、嘘発見器最大の欠点はその精度の低さにある。


機械と違って特に意味も脈絡もなく"ブレる"生理現象の異常を感知するのはとても難しい。


何より嘘をついた時の、生理現象の"ブレ"には個人差がある。

疑われただけで心臓バクバクになる僕のような人間もいれば、息を吸うように嘘をつく人もいるのだ。


そのため嘘発見器の精度向上は棚上げされ、実用化するには物足りない性能のまま、この科学躍進の時代に取り残されていた。


が、しかし

一部の科学者の血のにじむような試行錯誤により、嘘発見器の欠点は是正された


その裏でどんな努力があったのかについてここで語るのは差し控えさせてもらうとしてーー要は嘘発見器の精度があがったのだ



その精度は驚愕の99%

100回質問すればその内99回分の真偽を正確に測りとれるようになったというわけだ。



この装置は完成するや否や、夫の浮気、妻のへそくり、詐欺師の口上、アイドルの恋愛遍歴ーーなどなど様々な嘘を暴きに暴いて、圧倒的な性能を世間に知らしめた


この画期的な装置を有効活用せんと、国はある計画を企てる


重犯罪者淘汰計画。


やり方は簡単だ。

国民一人一人に「あなたは重犯罪者ですか?」と聞いて回って、嘘発見器が反応したのなら豚箱にぶちこむ。

それだけだ。


ただこれもまた御察しの通り、致命的な問題を含んでいた。

いくら嘘発見器が99%の精度を誇るとはいえ、裏を返せば1%は間違えた結果を表示するということになる。


嘘を真実に。真実を嘘にーー嘘発見器は塗り替えてしまう。


特に問題なのは"真実を嘘"と表示してしまうケースだ。これはつまるところ何の罪を犯していない清廉潔白の人間が、重罪人として扱われ、お縄にかかることを意味する。

この国の総人口を考えれば、冤罪者が多発することは半ば約束されていた。


無論国も馬鹿ではないので、この事態については事前に予測・対策を講じていた。

まず嘘発見器に"重犯罪者"と判定された者を即座に逮捕するのではなく、一旦は"拘置施設"に入れる。国はその間に、"重犯罪者"と判定された人間の身辺調査を徹底的に行い、重犯罪を犯したという証拠が見つかった者だけをそのまま刑務所送りにすることにしたのである。


これならば冤罪が引き起こされる可能性はぐっと低くなるし、仮に冤罪が起きたとしてもそれは嘘発見器のせいではなく、捜査する側の裏付けの甘さのせいということになる。


かくして国民の大半はこの犯罪者淘汰計画に賛成し、実際に施行される運びになった。

の、だがーー

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