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学校

 学校に着くと、うちの学校の生徒たちが昇降口に吸い込まれるように入っていく。

 時間的にあと20分程で朝のHRが始まる。

 登校する生徒たちに加えて、部活の朝練から解放された生徒たちの姿も見ることができる。

 俺と和人も昇降口で下足から上履きに履き替える。

 うちの学校の校舎は3階建てで、二つの棟が縦に並ぶようにして建っている。

 昇降口を上がって左に行くと教室棟、右に行くと化学室や家庭科室等がある実技棟があり、その二つを繋ぐ形で渡り廊下が各階の両端に付いている。

 そして昇降口正面には、教室棟と実技棟、二つの渡り廊下に囲まれる形で中庭が設けられている。

 教室棟は、3階に1年生、2階に2年生、1階に3年生の教室があり、それぞれA〜Hクラスの8クラスが存在している。

 俺たちは2階に上がり、「2-B」と書かれた教室に入る。今更ながら俺と和人は2-Bのクラスメートだ。

 教室の中で和人と別れ、俺は窓際の席へ向かう。

 窓からは中庭を見ることができる。朝練が終わった生徒たちが中庭から昇降口に上がる姿が見える。うわっ、あのテニス部の男子派手にすっ転んだな。痛そう。


「やっほー、千葉くん。」


 席に着いて窓の外をボーッと見ていると女子生徒が話しかけてきた。

 新田美穂だ。2-Bの学級委員である。


「おう」

「早速なんだけどさ……」

「えぇ……嫌だよ……。」

「まだ何も言ってないよ!?」

「え?もしかして宿題写させてっていう頼みじゃなかったのか?すまん、早とちりしちまった。で、なんだ?」

「うぅ……。ごめんなさい……宿題写させてください。」


 新田は学級委員のくせに成績が中の下くらいなのだ。いや、学級委員のくせにって可哀想だな。ただ学級委員の女子って容姿端麗成績優秀のイメージがついちゃっててなんかな……。

 新田の場合は容姿端麗成績哀愁って感じかな?黒髪内巻きセミロングで少し童顔な可愛い系女子だ。割と男子に人気があるが、本人はそれに気づいていない。


「ったく……。別に今回の宿題難しいところなんてなかっただろ。」

「いやいやいやいや、学年1位さんに言われても困るよ!?学年198位の頭には難しすぎるんだからね!?」

「おおっ……。まだ200の大台に乗ってなかったのか。頑張ってるな。」

「でしょでしょ!?だから見せて!」

「はぁ……。ほれっ、授業始まるまでには返せよ?」

「うん!ありがとう!」


 はぁ……。結局貸しちゃったよ……。

 それにしても198位か、1クラス40人で8クラスだから320人分の198位ってホントに中の下だな。大丈夫か?新田。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 午前中の授業はつつがなく終わり昼休みである。

 俺は和人と一緒に食堂に向かっている。

 食堂は二階の実技棟、昇降口側の端っこに、棟から飛び出す形で作られている。壁面のほとんどがガラス張りなので晴れた日はかなり明るい。まあ明るいだけなのだが。

 食堂とは名が付いているが、別に学食が売っているわけではなく、長テーブルと椅子がたくさん並んでいる、所謂食事スペースみたいなものだ。

 ただ自販機があったり、昼休みになるとポテトや唐揚げなどの軽食類を売りに来るおばちゃん達がいるので、それ目当てでここに来る生徒は少なくない。

 俺は愛妹弁当があるので軽食は必要ないが、和人がよくここで買って食べるので、昼休みに昼食を食堂で和人と一緒に食べるということが、俺の一種のルーティーンと化している。


「相変わらず真優まひろちゃんの作った弁当は美味そうだな。」

「実際美味いしな。真優は謙遜してるけど、料理の腕は俺なんかじゃもう敵わないわ。」

「そうか?俺、優作の作った肉じゃが好きだぜ?優作の肉じゃがに俺の胃袋掴まれちまった。」

「なんか気持ち悪いからやめてくれ……。」


 まあでも、悪い気はしないなぁ。今度時間が作れたら久し振りに和人に肉じゃが作ってやろう。


「お!千葉くんと平林くんじゃん。いつもここで食べてたの?」


 和人と喋りながら愛妹弁当を味わっていると、ポテトを片手に持った新田が話しかけてきた。

てか新田がここにいるの珍しいな。


「おう、俺と優作はいつも食堂で昼飯してる。というか俺の昼飯に付き合わせてる感じだけどな。」

「へー知らなかった。いつも昼休み2人してどっか行っちゃうから気になってたんだよね。」

「まあ、習慣づいちゃったからな。それにしても新田がここで買ってるの初めて見たぞ。」

「あーははは……。いやぁ、お恥ずかしながらお弁当家に忘れちゃってさ……。」


 弁当忘れたのは仕方ないと思うが……。ポテトだけで昼乗り切るのはさすがにキツくないのか?向こうに焼きそばパン売ってるぞ?


「ん、千葉くんのそのお弁当、自分で作ってるの?」

「いや、妹が作ってくれてる。」

「妹?千葉くんて妹いたの?」

「おう、中3の妹が1人。」

「ふぅん。お弁当作ってくれるなんてかなり良い子じゃん。兄妹で仲良さそうだねぇ。」


 おう、兄妹仲が良い自負はあるぞ。

ただなぁ……、真優に家事のほとんどをやってもらっちゃってるからかなり心苦しい。無理してないと良いんだけどなぁ。


「そろそろ戻るか、5時間目始まっちまうぞ」

「お、もうそんな時間か。」

「数学やりたくないィィィ……。」

「新田はもう少し頑張ったほうが良いと思うぞ?」

「うぅ……。」


 数学ってそんなに嫌かな。ジグソーパズル組み立ててる感じがして楽しいのになぁ。

 さあって、午後も授業がんばるか。


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