登校
朝食を食べ終わり、仮眠をとり、身支度を整えて家を出て、真優を中学まで送り、俺は高校へ向かう。
中学まで送るといっても、俺の行く高校までの道程にある中学に真優は通っているため、別に遠回りしてるわけでもない。
高校に向かってのんびり歩いていると赤信号に捕まる。まだ5月なのに今日は少し暑いな……。
そんなことを考えていると、背中にかなり重い衝撃が走る。
「グヘッ」
変な声出ちゃったじゃねぇか。
恨みがましく後ろを振り向くと、30メートル程後ろから手を振って走ってくる男が1人。俺と同じ制服を着ている。
下を見るとパンパンに膨らんだ重そうなスクールバッグ。危ないなぁ。てかどんな腕力してんだよあいつ。しかもコントロール良いな。帰宅部のくせに。
「おっはよぅ優作!」
「痛ぇ、危ねぇ、怖い。これっぽっちも投げる必要性ねぇだろ。」
こいつは平林和人。俺の幼馴染で真優とも交友がある。
あ、因みに俺の名前は優作。千葉優作です。って心の中で何言ってんだ俺……。
「だって逃げられたら嫌じゃん?」
「逃げねぇよ……。逃げられるの嫌で物投げるとかどういう思考回路だよ……。」
「まったく、優作は狭量だねぇ。もう少し寛大になろうよ。」
「え?なに?俺が悪いの?」
これがいつもの俺と和人のやり取りである。
なんの身にもならない話ではあるが、俺は嫌いじゃない。むしろこのやり取りを楽しんでる。
お、やっと信号青になった。
「そんなことより」
学校に向かって再び歩き出すと、さっきの軽い口調からトーンを落として和人が口を開く。
「真優ちゃん、あれからどうだ?」
あぁ、真優と和人は父さんの葬式以来会ってないもんな。葬式のときは真優、かなり暗かったからなぁ。和人も心配してくれてたのか。
それでも今まで真優の事を聞いてこなかったのは和人なりに気遣ってくれてたのかな。そういうところはホント良いやつだわ。
「まあ、引きずってないわけじゃないだろうけどな。ああ見えて真優は強いから。それに、俺の代わりに家事もやってくれて、受験が迫ってて大変だってのに、ホント苦労かけるよ……。」
「なんか優作、セリフが親父くせえぞ?」
「妹想いと言ってくれ。」
「あー、シスコンね。」
「否定はしない。」
「おい……。じゃあ優作は大丈夫なのか?クマ酷いぞ?」
まったく、ホントにコイツ良いやつだな。コイツが幼馴染でよかったよ。
「全然平気だ。なんの問題も無い。にしても真優にも言われたぞ。ゾンビより酷いって。」
「真優ちゃん良いこと言うなぁ。確かにゾンビの目の方が生き生きしてるわ。」
「おいマジかよ……。」
「そんな絶望すんなよ。まあ、あれだ。あんまり真優ちゃんに心配かけんなよ?」
「ああ、善処するよ。ありがとな。」
「おう。」
そんなことを話してたら高校に到着した。さーって今日も授業頑張りますか!