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お出掛け・第4編

 子ども動物園を出て動物公園最後のゾーン、というより建物に入った。


「なんかゾーン変わるたびに思うけど、ここもなつかしいねぇ。」

「ほんとなぁ。入ってすぐ象の骨、なんて印象深すぎるわ。」


 ここは、夜行性の動物や熱帯の鳥等を見ることができる他に、学べるスペースとしてどうぶつ関連の本がある図書室等がある、動物科学館と呼ばれるところだ。

 科学館に入ってすぐに目に付くのはこのインドゾウの骨の標本である。

 にしても象って骨だけになると鼻が無いから全く別の動物に見えるんだよなぁ。もし象が大昔に絶滅してたら、研究者たちは化石だけ見てあんなに長い鼻があったなんて想像つかないと思う。

 せっかくなので象の標本をパシャリ。

 象の横を通り抜けて、道順に沿って建物の中を進んでいくと、真っ暗な部屋に入る。夜行性動物の展示室である。


「お、コウモリだな。」

「なんかこう沢山いると少し怖いね。」


 コウモリを見た感想を何の捻りもなくもなくボソリと呟くと、真優まひろがだいぶトーンを落として答える。

 暗い部屋とかに入ると自然と声抑えちゃうよな。


「あ、スローロリスだ。可愛いねぇ。」

「ほう、真優はスローロリスを可愛いと思う派の人間か。」

「え、お兄ちゃんは可愛いと思わないの?」

「んーそうだなぁ……。あれだな、目以外は可愛いな。」

「あぁ……気持ちが少し分かる気がする……。」


 スローロリスって仕草とかは可愛いけど、目でなんか好きになれないんだよなぁ。

 いわゆる、クリクリパッチリお目目なんだろうけど、クリクリすぎてなんか怖い。もうちょい目玉を隠したら可愛いと思う。


「けどさ、目に関してはお兄ちゃんは人の事言えないよね。こういう暗がりにいるとホラーかと思うもん。」

「えー……昨日まで2日半ずっと寝てたのに治ってないのかよ……。」

「逆に2日半で治ると思ってたんだね……。」


 目の下のクマの酷さに定評がある俺だが、そこまで言われると心配になってきてしまう。あ、でもお化け屋敷とかでバイトでもしたら一躍有名になれるかもしれない。嬉しくない。

 夜行性動物の展示室を抜けて、次はちっこい猿が数種類展示されてる部屋に来た。


「おっ、この猿可愛いな。」

「そだねー。よし、次行こう!」

「お前、ホントに猿に興味無いのな!」


 なんだよ……このマーモセットめっちゃ可愛いじゃん……。

 真優は猿に嫌な思い出でもあるのかね。

 猿ゾーンをほぼ素通りして少し歩くと、熱帯系(に見える)の木々が鬱蒼としたホールに出た。

 このバードホールと呼ばれるところでは熱帯系の鳥類が放たれている。


「ここって確か、ナマケモノいたよな。」

「あれ?そうだっけ?鳥だけかと思ってた。」

「えー……と……お、いたぞ。ほら、あの枝の上に。」

「んー?あー、あれか!分かりにくいなぁ。よくそんな早く見つけられるね。そういえばお兄ちゃんて赤い囚人探すのも得意だったもんねー。」


 赤い囚人て……。まあ確かにそういう視覚探索系の絵本は大好きだったけどね。

 ついでに都市伝説とかも嫌いじゃないから、イギリスの殺人犯説も初めて聞いたときは面白かったの覚えてる。

 バードホールで少し鳥達を見た後、道順に沿って進んでいく。

 ハシビロコウの剥製とか動物の写真とかゴリラ一味の模型とかを横目で見ながらスルーしていく。


「ゴール!」

「回りきったなぁ。思ったより楽しかったわ。ん、もうこんな時間か。遊園地の方行くか?」

「んー、見てみたい気もするけど……。」

「んじゃあ行ってみるか。若葉区版ランドに。」

「え、どこらへんがランドなの……。」

「いや、だってウサギどんが笑いの国目指したらクマどんにイバラの茂みに投げ込まれるアトラクションのミニバージョンあるじゃん。」

「確かに……。てか説明が回りくどすぎない?」

「夢の国の黒い人に拉致られたくないからな……。」


 夢の国は悪ふざけが過ぎると何があるか分からないからな。用心に越したことはない。

 さて、遊園地側に行こうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、遊園地って無くなったのか……?」

「そう……みたいだね。なんか、馬がいるね。」

「スプラ○シュマウンテンどこいった……?」

「お兄ちゃん、名前出ちゃってるよ。」


 知らなかった……。あの「承知しました」のロケ地になった遊園地が無くなって馬と触れ合えるような場所になってたなんて……。

 というか俺も真優もモノレールに乗っててよく気がつかなかったな。注意力なさすぎだわ。


「すげえ、バーベキューできるところもあるみたいだな……。」

「あっ、馬乗れるみたいだねぇ!」

「ほんとだ、乗ってみるか?」

「んー、私はいいかな。見てるだけで。」

「そうか…….どうしよ、俺乗ってこようかな……。」

「え、ほんとに?お兄ちゃん馬好きだったっけ?」

「そうだな、馬は好きだけどそれ以上に馬に乗るのって面白味を感じるんだよ。ただ単純に大型車に乗ってるような感じじゃなくて、なんか馬と一心同体になった感覚が沸いて、不思議な感じ。」

「ほへぇ。」


 なんて偉そうなこと言ってるけど実際乗馬したのは一度きりだし、小さい頃だったから多分真優は覚えてない。

 でもそんな幼心でも馬の上はなんとも形容しがたい面白さがあったのは今でも鮮明に覚えている。


「そろそろ行くか。夕飯作んなきゃならんしな。」

「うん、そうだね。いい時間だし。」


 結局俺は乗馬はしてないが、広場を少し散策して帰路につくことにした。


「あ、そうだ。」

「ん?どしたの?」

「なんかお土産でも買って行くか?折角来たんだし。」

「え、いいの?」

「おう、遠慮すんな?なんでも買ってやる。」


 多分普通のご家庭(なんて知らないけど)だったら「なんでも買ってやる」なんて言っちゃいけないんだろうけど、真優相手だとちょうどいいと思う。

 俺も「遠慮すんな」って口酸っぱく言い過ぎてしまってる感はあるけど、言わないと我が儘言ってくれないし。

 あれ?もしかして今俺が真優の耳を食べたら酢ダコの味が……ってキモいキモい。そんなことしたら社会的に抹消されるわ。ついでにタコについて考えるとヤンキーに絡まれる。俺は学んだんだ。


「なんか変なこと考えてるでしょ。」

「そ、そうか?そんなことより何処に寄る?」

「露骨に話し逸らす辺り怪しいなぁ……。まあいいや。うーん……じゃあ、あそこ見ていい?」


 よかった、見逃してくれるみたいだ。妹の耳を食べる想像してたとか気持ち悪すぎて嫌われるわ。それに真優を耳なし芳一にはしない。

 売店に向かうと真優がウンウン品定めしていた。こういう時直感とかその場の勢いですぐ買おうとしないところにも真優の性格が表れてると思う。なんていい子なのかしらっ!


「おっ、決まったか?」

「うん、これにする!」


 真優が俺に見せて来たのはレッサーパンダのストラップが付いたシャーペンだった。


「これだけでいいのか?」

「うん!これがいいの。」

「そうかい。んじゃ買ってくるから外で待っとれ。」

「はーい。」


 ほんとにいい子だなぁ真優は。でもお兄ちゃんの目は欺けないぞ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 お土産を買って外で待つ真優のもとに行く。


「ほれ買ってきたぞ。」

「ありがとうお兄ちゃ……ん?なんか多くない?」

「おまけだおまけ。シャーペン1つだけってのも味気ないからな。」


 真優は俺の言葉を聞いて、お土産の入った袋を開ける。すると中からはレッサーパンダのストラップが付いたシャーペンとライオンのストラップが付いたボールペンが出てきた。


「お兄ちゃん……これ……。」

「俺が気づかないとでも思ったか?最後にこの2つでしばらく迷ってただろ。」

「でも……」

「しつこいようだけど、兄妹なんだから遠慮しないでくれ。もう少し俺に我が儘言ってくれていいんだからな?」


 そういって俺は真優の頭をポスポス叩いてやる。こんな事するのも久し振りだな。

 すると真優は買ってやったお土産を大事そうに握り締め、少し頬を朱に染めながら、


「うん……。ありがとう!お兄ちゃん!」


 って言ってくれた。

 あぁ……なんていい笑顔なんだろう。この笑顔のためならなんでも頑張れる気がする。

 これならシスコンも悪くないな。

 よし、明日からまた頑張ろう。

小生ドリームワールド跡地にもまだ行ったことはありません。作中のお馬さん広場は完全に想像です。ご了承ください。

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