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金曜日

金曜日

 こんどは林をぬけ、みどりのないせかいにまよいこんだ。ここは、人がすむせかい。

ほとんど木が見あたらない。かわりにあるのは、へんな形をした人間の家だ。しかも、かたく黒い地めんの上には、大きな車が行ったり来たりしている。

田んぼは、とてつもなく広くかんじられ、はるか遠くまで見わたせたが、セミがとまれそうな木は、まったくなかった。まっすぐな電ちゅうだけが、おたがいをクモの糸のような線でつなぎながら、かくかくとつづいている。ここを通りぬけなければ、海にたどりつくことはできない。まわり道はできなかった。

 かすかなしお風をたよりに、とびつづけたが、休むばしょがない。きびしくひが、てりつけてくる。木のかげがほしかった。電ちゅうは、あつくなり、やさしく木のように、むかえてくれなかった。ひくくとんでいると、やっとめぼしいしげみが見つかった。よろこんで休んでいると、なんだか下のほうがさわがしくなってきた。

 人間の男の子たちが、やってきたのだ。手に虫とりのアミをもち、首からは、はこをさげていた。はこの中にはバッタやチョウが、ばたばたしているのが見える。

つかまえられるとだめだ! セミはすぐに分かった。ないたりする、よゆうはない。見つからないように、いきをひそめて子どもたちを、やりすごすことにした。

だが子どもたちの目はするどく光り、かくれたつもりのセミは、見つかってしまった。まっ黒に日やけした子どもが、近づいてくる。ぼうしのおくに見える目は、らんらんとして力強くかんじられた。

ぼやぼやしていると、白いアミがぱっとかぶさってきた。わずかにとどかなかったが、もう少しとびたつのがおそければ、アミの中に入っていたかもしれない。

「うわあ、セミのおしっこだ! おしっこされた」

子どもらが、大さわぎになった。セミは、かまわず空にむかった。力をすべて出しきり、よそ見もせず、むちゅうでとびつづけると、目の前に山が見えてきた。林の中にとびこむと、ふらふらと一本の木にしがみつく。もういのちが、ちぢまる思いだった。

 

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