3話
指先に感じる温もりは決して居心地のいいものでは無く、かといって気持ちが悪いわけでもない、不思議な感覚。
目の前のその子も拒絶するわけではなく、かと言って享受するわけでもなく、ただあるがままを受け入れている。
「……っ」
小さな声が彼女の口から漏れるが、今度の僕は手を離さない。
と言うよりは、何かに取りつかれたように手を離せなかった。
このまま首を絞め続けたらどうなるのか?そんな思考が僕を支配する。
「……っけほ」
彼女の爪が僕の手に刺さったところで、僕の手が彼女から離れた。
クールな彼女の額に浮かぶ汗と荒い息使いが、妙に艶めかしい。
「……満足、した?」
小さく笑みを湛えて、彼女がそう口にする。
僕は自分の手をぐーぱーして、手に残った感触を確かめてから、こくりと小さく頷きを返した。
「……そっか」
彼女は満足そうにそう言ってぽふんとベットに戻ると、すやすやと寝息を立て始めた。
そんな彼女の姿を見て、僕は小さく溜息を吐いた。
自分の姿を昨日の自分が見たら、一体何と言うだろうか……
……何も言わないだろうな、きっと
僕はもう一度彼女の寝顔を見て、教室へ戻った。
少し、ほんの少し感じた名残惜しい気持ちは、いつものように飲み込んでおく。
異常な関係だという、自覚はあった。
だが、彼女の首に手を回す度にそんなことはどうでもよくなって
「……ふふ」
彼女の芝居ががった笑みの魅力に取りつかれてしまったように、僕は何度も彼女に会いに行った。
はぁ……はぁ……
「……けふ」
今日もまた、彼女に会いに来た。
大体会うのは保健室だったが、今日は最初に会った校舎裏。
誰かに見られたら、きっと先生を呼ばれてしまうだろう。
そうなったらどうしよう?と以前の僕なら考えていたはずなのに
……やり過ぎちゃった?
「……ううん、平気」
今は何故か、誰かに見られても平気な気がしていた。
幸いな事に今まで見つかってないが。
「……」
……
服の乱れを直し、キミが立ち上がる。
相変わらず異常な関係の僕らだが、僕はもう少し前へ進んでみたかった。
だけどそれを言ったら、この関係が全て崩れてしまう気がして
「……どうしたの?」
ううん、なんでも
この関係がずっと続く保証なんて無いけれど、臆病な僕は前に進めなかった。
……あれ
教室に、彼女の姿が無い。
今までに何度もあったはずなのに、たったそれだけのことでこんなに焦燥感を覚えてしまう。
そんな自分がいる事に気付いたのは担任が彼女の名を呼んだ時に、めんどくさそうな顔をしたときだ。
……
そわそわと落ち着かない。
すぐにでも教室から出て、彼女の家へ行きたいぐらいだ。
家へ行って……行って何をすると言うのだろう。
学校を休むほどの体調の相手を、さらに追い込むとでも?
本格的に異常者になりつつある自分に恐怖さえ覚える。
(でも……それでも、会いたい)
「お前、あいつと仲良かったよな?」
教師からプリントを渡された時に言われた一言で、意外と他人の視線と言うのは感じていないだけであるのだと痛感させられた。
校舎裏のあれは見られてないようで一安心だが。