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諸葛孔明物語~「偽史三国志」  作者: 珍寿
青年諸葛孔明物語
1/29

臥竜の水

元直(げんちょく)め……よくも、私を売ったな……」


 まだまだ暑さが残る初秋。

 長旅から帰ってきてようやく疲れが癒せると思い(くつろ)いでいた所に、弟の均が私の留守中に劉将軍の訪問があった事を伝えてきた。

 6年前、劉将軍が荊州(けいしゅう)太守の劉景道様を頼って荊州に落ちのびてきたという噂は、私のような隠棲する者の耳にも入るほど当時は有名になっていた。

 私の友人・(じょ)元直が、劉将軍にお仕えしたと彼からの手紙で知ったのは、いまから1年前のことだったか……

 風の噂では、河北を統一し大勢力を築いたあの曹操相手に小競り合いで何度も勝ったそうで、劉将軍にたいそう気に入られているらしいが、私にとってはそんなことはどうでもよかった。

 晴れの日は歌いながら畑を耕し、雨の日は暮れるまで書を読み、時節の移りゆく様に感動しては詩を口ずさむ。

 古の英雄に自分を見立て、活躍することを夢見ては自己陶酔に(ひた)るのもまた一興。

 俗世を離れ奔放で慎ましい悠々自適の今の生活が何よりも楽しかった……


 なのに………


「んふ、んははははは──そうか、そういうことかぁっ!」


 理由はすぐにわかった。

 劉将軍が我が居を尋ねる数日前、元直より手紙が届いていたらしい。

 全くお笑い種だ。

 要は劉将軍に仕えたくなくなったが、なかなか手放してくれなかったから身代わりとして私を推挙したそうだ。

 そして、晴れて劉将軍のもとを去る事が出来たので、これから友人の伝で曹公の幕下に加わるため北に行くんだと……


「元直……貴様とはもう絶交だ!」


 汗と涙と鼻水にまみれた竹簡を、猛烈に床に叩きつけたい衝動にかられたが、思いとどまって丁寧に巻き取って書棚にしまった。

 それから気持ちを落ち着かせようと井戸に向かい水を汲む。

 桶一杯に張った水を手で掬い、顔を洗い流す。

 男子たるもの、いつまでもみっともない顔を晒しておくわけにはいかないのだ。

 

 次に木の椀で水を少し掬ってから、ゆっくりと飲み干した。


 うまい……


 興奮した所為か少し熱っぽい体に、井戸の冷えた水が沁みわたる。


 もう一杯……


 最初の一杯は、体を気遣って味わう様に少量をゆっくりと飲んだが、2杯目は椀一杯に掬った水をもう遠慮はいらぬとばかりに一気に飲み干した。

 ゴクッ、ゴクッ、ングッ……ぷっはぁ〜


 ふっ、これだけ外は暑いというのに井戸の水だけ(・・)は私を裏切らないな……


 考えて見れば、旅から帰ってはじめての水だった。

 あまりに衝撃を受け過ぎた事で、のどの渇きさえ忘れていたようだ……

 水が最高の忠誠を示し、私の心まで潤してくれたことで幾分か気持ちを楽にすることができた。


 さて……

 落ち着いたところで今後の身の振り方を考えなければならない。

 当然、劉将軍に仕えるという選択肢は除外するものとする。


 え?なんで除外するかって?


 ふむ……どうやら貴殿も劉将軍について誤解を抱いているようだな……


 そもそも、劉将軍は中山靖王の末裔という由緒正しき家柄のお生まれで、黄巾の乱に義勇軍を率いて参戦されて以来、数々の軍功を立てて衰退しゆく漢朝を支え、民を思い乱世を終わらせんと粉骨砕身されている。

 故に帝の覚えもめでたく皇叔と呼ばれて慕われ、民からの人気も絶大。

 そして、なんといっても劉将軍の一番の魅力は、人を惹きつけるその人徳にある、一騎当千、万人敵と称される関雲長、張益徳の二人の豪傑と義兄弟の契を結び、その配下は皆勇猛で敢えて正面からぶつかろうとする者はいないとか……悪逆非道なる曹操の卑劣な策謀によって、今でこそ放浪されているが、時が来れば必ず逆臣・曹操を討ち、天下を安寧へと導いてくれるだろう……


 と、これが今、荊州のいたるところの市井で囁かれている劉将軍についての評判だ……



 ぷふっ、うはははは──


 んなわけあるかぁっ!


 笑わせる。

 何が漢朝を支えるだ?

 光武帝こそ名君といわれているが、それ以降は、脆弱か暗愚な後継しか立てられず朝廷内は外戚やら宦官やら清流派などと称する愚臣共が政争に明け暮れるばかりで、徒らに民を疲弊させ、絶望させるだけの王朝のどこにその存在意義があるというのだ。

 いいか? 黄巾の乱(たみのはんらん)を招いた時点で、劉氏(おまえら)の天下は終わってるんだよ!

 そんな、終わった漢朝を支えて天下安寧へと導くだと? 寝言は寝てから言え〜!

 私は知っている。

 劉備……奴は仁者の仮面を被った盗賊だ。

 徐州を領しておきながら配下に裏切られると、平然と曹公を頼った男だ。

 権謀術数に長け、必勝が期待できない限りは、直接的な衝突を避け続け、相手に隙が生まれたと見るや、すかさずつけ入る恐るべき男だ。

 あの呂布に、こいつが一番信用できないと言わせた男だ。

 そして、あの奸雄・曹公が唯一の好敵手と認めた男だ。


 そんな劉備が、長らく荊州滞在していて、私を配下にしたがっている!?


 ふん。

 世間は欺けても、この、諸葛孔明は欺けぬぞ!

 あんな奴に仕えようものなら、その人格を疑われ、縦しんば主君を変えたとしても不遇な運命を辿るだろう。

 なんとしても、劉備に仕えることだけは避けねばならない。

 ならば……私自身が動くしかあるまい。

 よ、よし、そうと決まれば……


「均! きーん!」


「呼びましたか兄さん?」


「うむ。実は、急に釣りがしたくなってな。ちょっくら州平と江東まで行ってくる」


「え? それでは、劉将軍にお会い出来なくなりませんか……? それにわざわざそんな遠くにいかなくても……」


「ふん。お前も一度、海で釣れる魚を味わってしまえばわかるさ……な~に、すぐに戻る。そうだ! 次に釣りに行くときはお前も誘ってやるからな!」


「えっ? 本当? やった~約束ですよ兄さん!」


 冷たい視線をおくってきた弟を言いくるめ、私は疲れた体を癒やす間もなく再び旅に出た。

 因みに、旅立つ前、元直の母親宛に一筆したためておいた。

 昔から奴はマザコンだったからな……ふふっ、〈奪ってやるさ、元直……貴様の大切なもの全てを……私を嵌めた人間がどのような末路をたどるか思い知らせてやる!〉


【徐庶……(あざな)は元直。元は無頼者だったが、学問に目覚めて大成した。劉備に仕えて活躍するが、曹操に母親を人質に取られたことで鞍替えする。結局、母も失い、その後も曹操の下に留まり続けたが、終生不遇だった】




 最初の目的地は、襄陽の蔡家だ。

 当主の蔡叔父上は荊州随一の大豪族で、今は劉表様の重臣として活躍されておられる。

 血縁関係を基としたその権力と人脈は凄まじく、それに見合うだけの人格も備えているため、本当に頼りになるお方だ。

 劉備に対抗するためには、やはりこのお方に動いていただくしかない。

 顔を出せば、当然仕官を迫られると思い、今までは避けていたが、今回はそれを利用させてもらうとしよう。




「おお! よく来たな孔明。月英との祝儀以来ではないか、月英は息災か?」


「ご無沙汰しております、蔡叔父上。妻は相変わらずです……この間など、木偶人形が勝手に飯を作ってくれる絡繰を拵えてしまいまして度肝を抜かれました。流石は蔡叔父上の血を引く者、持って生まれたモノが違うと、唯々、頭が下がる思いです」


「ワハハ、いやいや、そんなに謙遜するな。其方も十分に才能を秘めているではないか。聞いたぞ荊州の知識人の中では龐士元と並んで臥竜・鳳雛と称えられているそうではないか。どうだ? そろそろ我らに仕官せぬか?」


「いえ、私などまだまだ若輩者に過ぎません。このまま仕官して叔父上の顔に泥を塗るような失態を犯さないとも限りませぬので、そのお話はもうしばらく伏せておいてくださいませんか?」


「ふむ、心配せずとも良いものを……」


 おだてて上機嫌になっていた蔡叔父上が、こちら思惑通り仕官を勧めてきた。

 いよいよ、ここからが本題だ。


「聞けば劉表様は近々、跡目をお決めになさるとか……そうですね……御嫡子の劉琦様が跡を継がれる頃までには必ず仕官いたしますので、その時はどうかお力添えをお願致します。」


「んん!? いまなんと申した!?」


 ふふ……よし!


「はい? 士官の折にはお力添えをと……」


「その前だ! 劉琦様が跡を継がれるとか言っていなかったか?」


「はい……そう申しましたが……」


「この大馬鹿者! 劉表様の後継はワシの甥であり其方の義理の従兄弟にあたる劉琮様が継ぐ事に決まっておる! 勘違いも甚だしいわ!」


「ええー! し、しかし、親友の徐元直が、間違いないと……」


 私のあまりの驚きように、どうやら勘違いではないと蔡叔父上も察したようだ。


「む、その徐元直とは何者か?」


「はい。劉将軍にお仕えしていた者で、その軍師をしておりました。」


「なんと、劉玄徳殿の軍師とな…… こ、孔明! その話、詳しく聞かせてはくれまいか? もしかすると、荊州に波乱を呼ぶ一大事やもしれぬ」


「もちろんでございます。私でお力になれることがあるならば何なりと……」


 私は蔡叔父上に、劉備が実際に起こってはいない劉表様の後継問題を起こすことで、これを利用して荊州乗っ取りを画作している可能性を示唆し、さらに、その根拠として私への仕官要請があったことを告げた。

 そして、後継問題を契機として荊州が二つに割れ、こちらと相対する方に百戦錬磨の劉備軍が加わったらどうなるか…曹公という強大な敵の侵攻を前に、荊州が揺れたらどうするのか…時間は残されてはいないと即断即決を求めた。

 これで、十分に劉備に対する警戒心を植え付けることができただろう。

 蔡叔父上は初めこそ座について堂々と構えていたが、終いには身を乗り出して私の言葉に聞き入っていたことからも、その関心ぶりがわかるというものだ。

 あとは疑心暗鬼…時間がないことも手伝って蔡叔父上が暴走してくれるだろう……


 おっと、詰を忘れるところだった……あぶない、あぶない。


「叔父上、近々劉将軍は少数の供を連れて私の居に訪ねてくるそうなのですが……その途中に檀渓という峡谷があります。あそこなら、たとえ馬が足を滑らせて転落したとしてもおかしくありませんよ……」


「う、うむ。わかった」


「さて、ではこのへんで失礼させていただきます。次は妻と一緒に挨拶させていただきますよ。その時には例の絡繰の披露でもいたしましょう。」


「そうか……楽しみにしておるぞ」


 去り際に交わした挨拶の時には、既に蔡叔父上は心ここにあらずといった様子だった。

 すこし薬が効きすぎたかな? まあ、焦ってもらって結構。

 手段も限定したことだし、これで劉備が死ねば問題なく荊州は収まることだろう。

 たとえ曹公の軍が南下なんかしてきたとしても、一致纏まった形で降伏すればひどく扱われることはない。

 あの御方は裏切り者にこそ厳しいが、根は優しく、才あるものを愛し、幕下の民を慈しみ善政を布いておられる。

 もし、そのとき曹公が私を召抱えてくださるのならば……ふふ、いいでしょう。

 この臥竜、喜んでお仕えしましょう……


 蔡叔父上に劉備の処理を託したことで一応の安心はしたが、万が一のため、新妻と弟を残したままの隆中には努めて帰らぬようにした。

 はじめは荊州各地の友を回ったり、好々先生の下で論談していたが、それも飽いたので均に伝えたとおり江東に赴き、兄の家に居候して釣りをして時を過ごした。


 そして季節は厳しい冬を乗り越えて、麗らかなる春を迎え、気候も日々暑さを増してきた頃……

 ふと、隆中の我家の井戸に湧く水が愛おしくなり、未だ劉備死亡の噂も流れてこないため、久々に隆中に帰ることにした。




「帰ったぞ!」


「に、兄さん!いままでどこにいたんですか?」


 家に入ると、均が出迎えてくれた。


「うむ。江東の魚からなかなか離れられなくてな……心配をかけてすまなかった」


「まったくですよ、兄さんが旅立ってから何故か襄陽の蔡徳珪様の使いの者が頻繁に来たり、劉将軍が二度目の訪問に来たりして大変だったんですから、義姉(ねえ)さんまで放ったらかしてどういうお考えですか!」


「ハハ、だからすまなかったといっているだろう? ところで、劉将軍は今もご健在なのか?」


「は? 何を行っているんですか。ご健在に決まってますよ」


「ふうむ。そうか……して、蔡叔父上からはなんと?」


「これをお預かりしています」


 険しい顔の均が奥から封の切られていない手紙を五通取り出してきた。

 私はそれを均からひったくり、指刀で封を切り開いた。


「ふむふむ。《む、やはり…檀渓での襲撃は失敗していたのか!…》ほお〜。《うげっ、襄陽以外の地の士大夫や名士が劉備の調略によって劉琦派に組み込まれている?》そうかそうか。《ま、まずいっ、家中は劉琦派と劉琮様の派閥で分裂?なんということだ!》あははは。《むぅー。曹操の南下に備えるとの名目で、劉備が新野城で徴兵を行っている?》あ〜あ。《・・・劉表様が劉備との酒宴の後に倒れて御危篤…》」


「兄さん、随分と楽しそうですね、なんと、書かれてあるんです?」


「ん?いや、なんでもないさ……それよりも、均。私は長旅で疲れているから少し休みたい。すまないが水を汲んできてくれないか?」


「はい……わかりました」


 怪訝な目つきでこちらを見つめる均から逃れ、私は自室へと向かい、部屋に入るとともに座り込んだ。

 最悪の状況だ……このままでは荊州は騒乱し、また無辜の民たちが蹂躙されてしまう。

 まさか半年でここまで詰めてくるとは……

 いや、そもそも、権謀術数渦巻く中原で生き延びてきた男相手に、荊州という片田舎で安穏と暮らしてきた我々が敵うはずもなかったのだ。

 こうなっては、曹公に早く南進していただくしかあるまい。

 早速、蔡叔父上に手紙を書こうとして筆を取ったところで、均が水を持ってきてくれた。


「兄上、水です。ここに置いときますよ」


「おお!随分と遅かったな」


「私は兄さんほど暇ではないので……では失礼します」


「ありがとう。いただくよ……」


 均の奴、妙に毒があるな……まあ、流石に長く帰ってなかったから仕方ないか……

 それにしても……ふふ、久々の水だな…どれ…

 -ゴクン、ゴクン、ゴクン…


 部屋の入口に置かれてある木の椀を取り中の水をゆっくりと飲み干した。

 うーん……やっぱり我が居の水は最高だな……よく冷えていて、ほんのり甘い……あまいっ!?

 

 なんだか、すこし視界がぼやけてきた。


 気がつくと部屋の入口に均が立っていた。


「ん~? 均……どうした?」


「ねぇ、兄さん……さっきからなんで義姉さんの事は何も聴かないの? 兄さん達は新婚の夫婦なんだよね、それなのに兄さんは義姉さんを放ったらかして、外に飛び出したきり帰ってこない。義姉さんはね、いつも兄さんが構ってくれないことを嘆いていたんだよ? 江東の魚と義姉さんとどちらが大切なのさ? 兄さん、あんた頭おかしいよ?」


「均~……どうしたんだ?」


「兄さんが義姉さんのこといらないって言うなら、僕がもらうよ」


「はあ? お前何言って……」


「あなた……おかえりなさい」


「げげ、月英!?」


 気がつくと、均の横に妻の姿があった。

 義父上は色が黒く醜いと言ってはいたが、たしかに、色は黒くとも、その顔は整っていて唇や目には妖艶さを感じさせる。

 髪は赤毛が混じってはいるが艶やかで流れるようであり、それになんといても、豊満な尻と胸に引き締まった腰と四股から形成されるその体は、男なら一度は抱きたいと思う程に眩しく、美しい。

 そう、つまり君子からすれば男を惑わす危険な女という別の意味での醜き存在だった。


「あなたは、どうして私を避けるのですか?」


 月英は横に立つ均の肩にそっと手を載せながらこちらを見つめてきた


「そ、それは」


 き、決まっている。お前のその妖艶さが私は苦手なのだ。

 でも、そんなことどうして言えよう……


「私たちは夫婦の契りを結んだのですよ……それなのに初夜すら迎えられないなんて……」


「義姉さん……いや、月英。もうやめよう。こいつはきっと不能なんだ。だから、君の魅力に気付けないんだ。大丈夫、君には僕がいる。こいつをさっさと劉備様に引き渡してここで一緒に暮らそう」


「なっ、お前なんてこと言って……ん?りゅうび…劉備様だ……と……?」


 気がつくと、均が月英の体を抱き寄せその襟の内に手を入れている。


「そう……そうね……」


 均の手の動きによって月英が吐息を漏らす。そして、それはだんだんと荒くなり喘ぎに変わっていく


「やめろおぉーやめてくれぇーー」


 劉備っ、劉備か、そうか! これも結局は奴の仕業なのか! 今にして思えば迂闊だった、まさか、均と月英まで篭絡していたとは……


「い、いかん。早く逃げなくては……うぐっ、力が……は、入らない……」


 気持ちで立ち上がろうとしたが足がついて行かず、私は前のめりに倒れ伏した。

「あはは、無様だね兄さんこれがホントの伏龍……なんつってね」


 薄れゆく意識の中で、私の実の弟にされるがままの妻が、私に飲ませた水の正体を説明してくれた。


「先ほど、あなたが飲んだ水には私の発明した毒が入っています。今からちょうど5日間、あなたは仮死状態となり眠り続けることでしょう……」


 続けて均が語りだす。


「目覚めた時には、劉備様がいらっしゃってますから、くれぐれも粗相の無いようにお願いしますよ。あ、それと劉備様からご伝言です。「徐元直の母に送った手紙はなかなかの名文だった」だそうです。褒められたんですよ? よかったですね~」


「う、うう……」


「あらあら、もう毒に耐え切れませんか? 遅効性のはずなんですけど……ふふふ」


 月英が笑う


「それじゃあ兄さん、またね!」


 均も相変わらず笑っている


 抜かった……この臥竜が……、この諸葛孔明が……、女子供にここまでいい様にされるとは、思えば帰った時から均の様子はおかしかった。

 すべては、あの井戸の水が……あの美味しい水だからと無警戒に飲んでしまったのが運の尽きだ……

 ああ、全てあの水のせいだ! 私は、もう二度とあの水を飲もうとは思わない……


 そして、私は意識を失った。


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