008 魔の遺跡にて
ユニーク500達成!!
皆様有り難うございます!!
「てりゃー!!」
僕はあらん限りの力を振り絞り、目の前のガーディアンをなぎ倒す。
「ほう。なかなかだな。俺よりいいかもしれんぞ」
美帆が僕の後ろでバッサバッサと軽々とガーディアンを倒している。
……なんか馬鹿にされている気分だ。
「ほら、さっさと歩け」
美帆は一度この魔の遺跡に入ったことがあるらしく、トラップや、ガーディアンの弱点などをよく知っている。
なので、「あ、そこはあと三歩歩いたら槍にぶっささるからな。横にずれた方がいいぞ」などと助言してくれるのでまるで無傷だ。
しかし、かれこれもう二時間遺跡の中に入っている。そろそろおなかも減ってきた。
ぐーぎゅるるるる……
「未宝、お前は腹を減らしてるか?」
「うん」
「ふん、お前はこれだから困る。仕方ないな。飯にしよう」
内心ありがたいが、今の腹が鳴った音は君のものだよ?
僕たちは美帆が安全だという小部屋まで歩き、持ってきていた携帯干し肉と、香薬丸を水にいれ、美帆が土魔法で作った鍋で煮る。香薬丸はコンソメに似た味の調味料で、干し肉と一緒に煮るとなかなかいける。
それにしても、美帆はほんとにすごい。
「ん? なんだ?」
美帆が僕の視線に気づいたようだ。
「いや、ずいぶん食べるんだなぁと」
「ああ。そうだな。なんだ? いけないことか?」
「いや、そうじゃないけど……」
こんな性格でも、一見は美しいプロモーションを兼ね備えている。胸は、さすがにないだろうけど。
「一応、君も女の子だしね。体重なんかを気にしたほうが」
「……お前は俺がタイプなのか」
な!!
「そんなことない……」
ずしん! ずしん!
僕が弁解をしようとしたとき、今まで通ってきた通路から怪しげな音が聞こえてきた。まるで大きな岩が足音を立てているかのような……
ひょっとして、ゴーレム?
横目で美帆を見たら、少し警戒しているようだ。今までは魔物を見てもふんぞり返っていたのに。
「こいつは、やっかいだな」
美帆が吐き捨てるように言った。
シュボッ
ライターで火をつけたような音。これは、
「未宝!! しゃがめ!!」
ごぉぉぉぉおぉぉおお!!
あ、あっつい!! これは、炎か。美帆が言ってくれなかったら死んでいた。後ろを見ると通路が溶けて消滅していた。何という破壊力だ。
「美帆!! この魔物は!?」
「こいつは魔の遺跡でもっともやっかいなガーディアン、<フレイムゴーレム>だ。さっき見たとおり、こいつは火属性魔法を使う。さらに防御力が異常なほど高い。弱点は魔法の発動体、つまりは胴体の宝石だ。俺はゴーレムの足を崩す。お前は弱点を狙え!!」
今まで以上の的確な指示。
それほどの相手か。女神から授かった周囲察知能力を使ってみると、もうすぐ目の前にいる。
「来るぞ!!」
目の前に大きな岩の塊がいた。全長約五メートルぐらいだろうか。白と茶色のまだら模様から見て、体は砂岩で出来ているのか。胸の中心部には赤く光るルビーが光っている。美帆の言っていたとおりだ。
グゥオオオオ!!
僕は持っている剣に力を込める。手には冷や汗がにじむ。僕に倒せるだろうか。
「大気よ、我に清水の力を与えよ。ウォーター・カッター!」
美帆の手から、見事なアラベスク模様の魔方陣が形成、展開される。水が美帆に集まり一本の剣となる。ひゅん! という弓を引いたような音を出しながらまっすぐにゴーレムの足に伸び、そのまま切り落とされた。
グゥルジャアアア!!
ゴーレムがバランスを崩して、僕の目の前に倒れ伏す。チャンスだ!!
「己の限界まで引き上げよ!! 魔力撃!」
僕の手から出た目映い光が剣に巻き付く。
ゴーレムの激しい咆吼。それでも必死に足を動かし、光の一撃をルビーに刻む!
パリンとおとがし、ゴーレムは砂になっていった。
はあ、はあ。恐ろしい。
「よくやった。なかなかの魔力撃だ。一発でルビーを破壊するとは流石は勇者といったところか」
息を切らす僕に息も上がらず美帆が声をかけた。
「ほら、さっさとこんな遺跡、攻略せねば」
シュボッ
ん? ライターで火をつけたような音が聞こえた。
「まだ、死んでいなかったか」
「いや、これ、やばくないか?」
美帆ははあ、とため息を一つつくとたった一言だけいった。
「消えろ」
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