004 ギルドにて
お気に入り、評価してくださってありがとうございます!!
今回から、一人称で物語が進められて行きます。ご注意下さい。
〈世界崩壊まで残り九十日〉
俺の名は菊池未宝。
三ヶ月前まで普通の高校生であった俺は、自宅で眠ってたうちにどういう訳か、異世界の勇者様になっていた。
なぜ俺を選んだのかは分からんが、女神が時空を超えてここに連れて来たようだ。
なんでも、俺の住んでいた場所と異世界の場所とでは身体的に構造が違うらしく、力も魔力も宮廷魔術師の奴らを遥かに上回り、英雄と唄われた騎士を蹴飛ばせる程である。
さて。
状況を整理しよう。
俺はさっきまで魔王と戦い、よく分からん理由で万物の力を使った創造主さんの副作用で、世界が崩壊した為に、創造主さんをたすけるために女神の力で三ヶ月前、つまり、90日前に戻ってきた。
その最中に、闇属性の魔力と光属性の魔力(めちゃくちゃ強力で莫大)をこの身に宿した。
過去の俺に気づかれると厄介なことになっちゃうぜ♪ ってんで、俺は性格(確か今よりも真面目で、僕っ子だったはず)と性別を変えられた。
「そして、現在に至るわけなのだが……」
俺はなにすりゃええの?
水で作った水面鏡でみてみると、背中まで垂れる漆黒の黒髪。日焼けしていない白い肌。服はさっきまで、着てたマントと、ぶかぶかの短パン。男だったら、めちゃくちゃ綺麗で可愛い。年齢は外見十二歳ぐらいで、背も手も小さい。
そして金がない。金がないなら、最初は稼がないとな。
それからぼちぼち創造主を助けるためのことを考えるか。
俺は男の頃に通った傭兵ギルドに行くことにした。
*
古い外見の煉瓦造りの建物。年季が入っていて一見廃墟みたいだが、ここが、傭兵ギルドだ。
「おっと、入る前に。魔法・固定術式’’封印’’」
俺の力は今では魔王を瞬殺出来る程の魔力がある。
おいそれとしていると、厄介毎に巻き込まれる可能性がないとは言い切れん。
俺の魔力は封印を解くまで人間の王宮大魔導士よりもすこし上ぐらいになった。
まあ、このぐらいあれば大抵の奴ら(魔物)は倒せるし、いいだろう。
「あともう一つ。魔力を力に。固定術式’’上昇’’」
俺の身体に赤い魔力が巻きつき、浸透する。
俺は今は女の子だ。となると、身体的に力が劣る可能性がある。それによって命取りになるかもしれん。
まあ、有り余る魔力があるからほとんど魔術で済ませるだろうが。
ともあれ、これで俺の身体は王宮の騎士団長を遥かに凌ぐ力がついたというわけだ。
用心に用心を重ねておいた方がいいだろう。
勢いよくギルドの内部に入ると、ムッとした熱気が俺の周りを囲む。
「……また酒飲みのおっさんらが飲んでやがる」
まあ、ここは過去なのだし。
気にせず俺は迷うことなく真っ直ぐに受付に行こうとする。
が、目の前に突如として壁が立ち塞がる。
……ちっ。めんどくせぇ。
俺は目の前の壁に言う。
「何ですか? どいて頂けるとありがたいんですが」
「ああ? なんだって? 聞こえないなぁ」
「ここはガキが来る所じゃねえんだ。早くお母さんのとこに帰りな!!」
四方の壁は四人の酒飲み馬鹿ら。Dランクの飲んだくれだな。
また目の前の馬鹿が喋る。
「お前、なかなかいい顔してんな……」
「がははは!! お前ロリコンか!?」
「こいつまだ10、11ぐらいだろ」
「ま。そういう性癖のやつもいるからな。そいつらに渡せばなかなかの金に……」
ああ、うざい。
「今すぐにどいて下さい。面倒ごとを増やさないで下さい」
「ああ? なんだって? 聞こえないなぁ」
「そいつはいい考えだ」
「ここらの連中はもう俺らの手中だし」
「というわけで、ガキ。こい!!」
うわ、まじで俺の腕掴みやがった。
目の前の馬鹿はマントを脱がそうとしてくるし……
「やめて下さい。やめないと後悔しますよ?」
俺は平和的解決を主張したが、
「うるさい!! 大人しくしろ!!」
と強引に俺の身体を拘束しようとする。
「しかた無いな。おい、馬鹿ども。後悔するぜ」
「こいつ!! なんつう力を……」
俺は手を縄で縛ろうとしていた奴を右手で殴り飛ばす。
単なる魔力の塊だが、圧縮をかけていているためまるでライフルのようなもんだ。
「な!? おまえ何者……」
ばん♪ ばん♪
俺は軽快な音をたてながら、相手にむけ、魔力を発射する。
殺傷能力がない単なる魔力の塊だが、圧縮をかけていているため簡単に巨体が空中を舞う。
横にいた壁が消え、視界がはっきりする。
残る馬鹿は前の一人。
汚い手で俺を触ったきもい奴にはとっておきの技を。
「地場の均衡を傾け、捕獲せよ。重力増大」
べちゃ。
馬鹿が地面に伏せっている。
そりゃそうだ。通常の百倍の重力をかけているのだからな。
俺に絡んだ罰♪
ミシミシ……バコン!!
ずががががが!!
俺の聞いた最初の音が、重力を千倍にして床に穴が空いた音。(ギルドの床は石で出来ている)
次に聞いたのが重力を万倍にして体が土にめり込んでいった音。
……ちょっとやりすぎたかな。魔力も封印されてる状態で三分の一使っちゃったし。
まあ、いいさ。
俺はそのまま何事もなかったかのように受付に再び向かう。
「ギルドの入会手続きをしたいのですが」
と俺がいうと、派手にやったからか、涙目になりながら受付嬢がギルド申請を済ませてくれた。
「あの、その、お、お名前はなんと……」
ああ、そうか。名前をどうするか。
そのままミホウでもいいが、ここは女の子らしく、
「ああ。美帆という」
わ、分かりましたと言って、受付の奥にっ入って行く。
それから、約十分。その間、ギルドの待合室(酒場)にいたのだが、めっちゃ注目を浴びている。(後から来た男子は特に)こ、これが、女からみた男の目線……。こ、怖い。
奥から受付嬢が戻って来て
「はい、これが、そ、そのギルドカードに、なりますぅ……」
と泣きそうなか細い声でいった。
ランクE……。俺はあのDランクよりも低いと……?
いや、それが傭兵ギルドの規則ってのは知ってるけど、どうにも腑に落ちん。
なのでちょっと脅して、魔王の覇気を受付嬢さんにあててみた♪
「ひい!!」
うさぎがライオンに襲われて怯えるような仕草。
男から受けた精神的苦痛の鬱憤ばらしには丁度良い♪
やはり、ギルドカードはランクが上がらなかったが、俺は特別にSSランクのクエストを受けさせてもらい、気がつくともう夜もふけていた。
(さて、と……)
このままだとあっという間に三ヶ月の期間が過ぎてしまう。
どうにかして、創造主の所に行く方法があればいいんだが……。それを知ってそうな人は女神、ぐらいか?
しかし女神の所にいくには天界に行かねばならない。だが天界に行くに魔法などという力を使えない。
女神がこっちに来ればいいのだが、そんなに都合良く来てくれるはずが……
……ある。その日を俺は知っている。
そう。勇者が女神に祝福される時が。
そうと決まれば、明日の移動先は決まったな。
「テレポート、女神の都」
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菊池 美帆の容姿と性格は完全に私の趣味です。
すみません!