第8話 常識で物事を考える魔王
ーードオオオオオオオオオオオオンッ!ーー
魔王城に激震が走る。
埃がパラパラと落ち、テーブルにあった花瓶が落ちて割れ、立てかけていた杖がカランと転がった。
『何事だっ!?』
『それがっ! 突然爆発が起きまして!』
魔王の間では四天王のゴルゴロンがおり、事態の掌握に努めていた。
『一体、どういうことなんだ?』
これまで、このようなトラブルが起きたことがなかったからだ。
「至急、何があったか確認して私に報告するのだ!」
ゴルゴロンが指示を飛ばしてから数分、魔王クラオスが魔王の間に現れた。
「状況の報告を!」
慌てて出てきたのかマントで身体を覆い隠している。杖を持ち警戒をしているのだが、身につけている仮面が若干ずれている点について指摘する暇はなかった。
「僭越ながら報告させていただきます」
部屋に飛び込んできた兵士が告げる。
「爆発は財宝部屋にて起きておりました。中を確認したところ、セルヴァス殿が焼け死んでおりました!」
「「なっ!?」」
クラオスとゴルゴロンが驚愕の表情を浮かべた。
「馬鹿を言うな! セルヴァスは四天王だぞ? そう簡単に死ぬわけがあるかっ!」
セルヴァスがいかに魔法に長けているかをゴルゴロンは知っている。
常に計算を働かせ、味方に有利になるようにことを進める。
魔王軍が人間相手にここまで有利にことを運べたのは、セルヴァスの知謀による功績が大きい。
もし本当にセルヴァスが死んだというのなら、この先の統率を誰が取ると言うのか?
「セルヴァスには人間国のスパイをさせていた。あやつが死ぬとは私も信じられんな」
クラオスも絶大な信頼を向けていただけに、兵士の言葉を否定する。
魔王と四天王から否定をされ動揺する兵士。
「ふむ、確認しにいくしかあるまい」
直接見てみようと判断したクラオスとゴルゴロンは財宝部屋へと赴いた。
「これは……酷いな」
財宝部屋の壁は焼け焦げており、中にあったアイテムの大半は壊れてしまっていた。
宝箱はドロドロに溶けており、残っているアイテムが存在しているか確認するにも時間がかかる。
そんな宝箱の中心に焼け焦げた死体が転がっていた。
「確かに、セルヴァスが身につけているローブとアミュレット、それに杖もですな」
「ローブとアミュレットは他で手に入るとしても、杖にかんしては世界で三番目に強力な物を持たせている。これに間違いあるまい」
世界中からかき集めた武器の中で強力な物については信頼できる部下に持たせている。これはその内の一本だった。
「間違いなく……セルヴァスですね」
死体を仰向けにして確認するゴルゴロンとクラオス。
「惜しい男を亡くした」
セルヴァスは魔王が幼少時代から指示した魔法の師匠でもあった。今では忠実な部下として腕を振るってくれていただけに残念でならない。
「おのれ……勇者め!」
ゴルゴロンは憎悪の表情を浮かべるのだが、クラオスは冷静にこの状況を判断していた。
「待て、本当に勇者の仕業だと思うのか?」
「勇者が召喚されたこのタイミングでです。他に犯人候補はいないでしょう?」
ゴルゴロンはそういうが、果たしてそうだろうかとクラオスは考えた。
「勇者が召喚されてまだ半日しか経っていないにもかかわらず、鍵がなければ入れない財宝庫で死体が発見されたのだ。内部の犯行の可能性を潰す理由は何だ?」
その場の全員が押し黙った。
確かに今のゴルゴロンの発言はおかしい。
天空城で移動しているというのに、どうやって勇者はこの城に到達したのか?
到達したとしてどうやって財宝庫に入ったのか?
セルヴァスはどうして殺されてしまったのか?
疑問が次々に浮かんでくる。
「未知数の勇者がやったという線も捨てきれないのは確かだが、可能性で考えるのならこの魔王城に裏切り者が存在している方が高いだろう?」
魔王軍も決して一枚岩ではない。四天王を狙う者、魔王の座を狙う者もいる。
「これより、尋問を行う!」
こういった膿ははやいうちに出しておかなければならない。
クラオスは溜息を吐くと、裏切り者を見つける覚悟を決めるのだった。




