ミーティング
放課後、真田と一緒に探偵部の部室へ赴くと3人の先輩がすでに部室にいた。
それに気づいた真田が声をかけた。
「先輩方、全員集合ですね」
「……まあ、そうだね」
意味深な間のあとに如月先輩がそう言った。
「じゃあミーティング始めるわ」
相良先輩のその声により、探偵部員が部室の中央にあるテーブルの周りに集まった。
「ミーティングとかあるんですね」
「不定期開催ですけどね」
「じゃあ議題1個目、如月君から」
「はーい。まずは先週あった生物室の件。
相良さんと一戦交えたあと逃走しちゃいましたけど、なんとなく絞れてきたっぽいです」
「……なんと、〈アポトーシス〉の一員だったらしいです」
「なんですか、アポトーシスって?」
「色んな生き物に学術で改造を施して裏で商売している組織です。
ちょっとまずい連中と関わってしまいましたね」
「でもなんでうちの生物室なんて使ってるわけ?」
「そこはまだ調査中です。鏡野高校のOBが関わってるのかもと言われてます」
「なるほどね。んで、これからどうするの?アジトに攻め入ってみる?」
「アジトも実はわかっていません」
「じゃあどうしようもないわね」
「なので続報を待てというかんじです」
「小野君のためにもこの問題は早く解決したいよね」
「あ、そうだ」
ここまで聞いていただけの話し合いだったが、昨日のことを報告せねばと声を出した。
「昨日の帰りに変な二人組を見ました」
「十中八九アポトーシス絡みだろうね。顔は覚えてる?」
「いや、マスクしてたので覚えてません」
「そうか、監視カメラに映ってないか確認してみるよ」
「わかりました」
「小野君」
「はい」
「もし不審な人物を見ても首を突っ込まないように」
「了解しました」
如月先輩にすごく釘を刺された。
やはりまだひよっこだと思われているのだろうなと感じた。
「じゃあ次の議題、小夜さん」
「はい!1年生のことについてですね」
「俺らですか?」
「そうです。探偵部の活動には外に出ることもあります。そのためには顧問の先生の許可が必要です。
まずはその外出許可をもらってきてください。それが当面の課題になります」
「許可って、顧問の先生んとこに行けばいいんですよね?すぐに終わりません?」
「まあ行ってみればわかります。例年、そんな甘くはないですよ」
「まあ去年はけっこう楽だったけどね」
如月先輩がそう言うと、
「あれは私のアシストのおかげです!」
と小夜先輩が言った。
アシスト?なんか協力して課題とかやればいいのか?
「わかりました。とりあえずこのあと先生のとこ行ってみます」
「はい、議題おわり!ほかになんかある?」
「あ、そうだ、小野君」
「はい」
「ベルとは仲良くなれた?」
「うーん、わかんないです。けっこう口がきつくて」
「誰かに似たのかな?」
その言葉に相良先輩はものすごい目つきで如月先輩を睨んだ。
「まあ仲良くしてね。きっと助けになるから」
そのままの目つきで声を掛けられたので、萎縮してしまった。
ものすごい眼圧だ。
「......はい、ありがとうございます」
これにて初めてのミーティングが終わった。
僕は真田と一緒に顧問の先生を探しに行った。
「氷上先生だっけ?見たことある?」
「いや、まだ先生の名前とか覚えてないしなあ」
「眼鏡かけててすっげー腰が低い、って情報だけでわかるか?」
「だよね、写真とかくれればいいのに」
「外出許可ってそんな厳しいんかな?」
「先輩の様子から察するに、なんか課題が出るんだと思う」
「学術関係だろーな」
「どうなんだろうね」
そんなことを言っているうちに廊下を歩きながら話す2人の先生が見えた。
「絶対あの人じゃん」
2人組のうち1人は白衣を着ていて背が高い。
そしてもう1人は眼鏡をかけて獅子舞のように顔をぺこぺこ動かしながら話している先生がいた。
あっちが氷上先生だろう。
「あのーすみません」
後ろから声をかけた。
2人同時に振り向いた。
「あ、君は生物室のときの生徒?」
白衣の先生のほうに話しかけられた。
「ああ、僕は真鍋。生物の教員、よろしく」
真鍋先生は手を出して握手を求めてきたのでそれに応じた。
「体調は大丈夫だった?なんか学術で止めてんだっけ?」
「あ、はいこれのおかげで」
首にかかっているネックレスを見せた。
「へえ、すごい学術だな。これはなんの能力なんだ?」
「あの、あんまり学術をぺらぺらと話すのも良くないですよ」
今度は氷上先生が入ってきた。
「まあまあ、でなんの用だっけ?」
「俺ら探偵部なんですよ。氷上先生に用があって」
「あ、僕?じゃあごめんなさい、ちょっとこの子たちと話して来ますね」
「別にここで話しても構わないよ」
「真鍋先生、ちょっと探偵部は機密事項が多くて」
「探偵部か、ではおつかれさまです」
そう言って真鍋先生は僕らから離れていった。
「ではあっちの部屋で話しましょうか」
僕と真田は、応接室のような小さい部屋に案内された。
「この時期ってことは外出の許可の話ですか」
「あっ、そーです。それをもらいたくて」
「先輩たちから課題の内容は聞いてる?」
「いや、なんかはぐらかされちゃって」
「そっか、まあいいや。課題は簡単。僕と学術の試合をして、僕に1回でも攻撃が通ればクリアってかんじです」
「サシでですか?」
「いや、2人で挑んできていいですよ」
「それだけですか?」
「あ、あとハンデとして僕は1種類の学術しか使いません。
去年も使ってたのを使おうと思っているので先輩にどんなのか教えてもらえるでしょう。
もちろん、君たちは何種類学術を使っても構いません。
色んな学術を使ってくることを期待しています」
なんだか拍子抜けな気がした。
恐らく真田も同じことを思っているだろう。
「1回当てればいいんですよね?」
「はい、1回だけ当てれば大丈夫です。ほかに質問ありますかね?」
「いや、大丈夫です」
「とりあえず、今週1回やってみます?何回チャレンジしてもいいので」
こうして今週の金曜日に外出許可のための試合を行うことになった。




