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学歴戦争  作者: 突然雨
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廃工場

エマちゃんが開けた穴から地下へ降りることができ、暗い廃工場の道を進んで行く。

先頭は相良先輩で学術による白蛇で周囲を警戒しながら進んでいる。

その後ろには学術協会からの助っ人だというエマちゃんがてくてくとついて行く。

この状況を楽しんでおり、遠足に来た小学生のようだ。

僕はというと、しんがりを担当している。

本来ならば女性二人の前に立って守ってあげるくらいのことをしなけらばならないのだが、先頭を申し出たところ「死体になりたくなければ下がってて」と言われてしまったため後方警戒に徹しているのである。


先刻、地下へ行くための穴を開ける時にものすごい音を出してしまったため敵には気づかれているだろう。

どこから襲われてもおかしくないため、いつでも攻撃できる体勢をとっている。


「あの子、こんなところに連れてきていいの?」


「うあ、びっくりした」


僕のネックレスに宿っているベルが急に喋り出した。

周囲を警戒していた分、過剰に驚いてしまった。

ベルはエマちゃんの様子を気にしているらしい。


「あの子、まだ中学生くらいでしょ?戦えるの?」


「うーん、でもさっきの学術はすごかったよ」


「なんか普通じゃあないかんじがするのよね」


中学生でこんな前線にいる時点で普通じゃあない気がするけれど。

エマちゃんはどういった学術を使うのだろうか。



しばらく進むと開けた空間に出た。

今は使われていない機械が並んでいる。


今までは道を辿っていったのだが、進むべき道が見当たらなかった。

バラバラになってこの空間を探すことにした。


機械の間や置かれていた機材をどかしながら探していた。

もちろんエマちゃんからは目を離さなかった。

ベルは怪しいというけれど、見たところただの中学生だ。

そのためいざとなったら僕が助けなければと思っていたからだ。


工場の跡地ということもあり、当時使われていたものも多く残っていた。

壁には注意喚起を促す看板がかかっていた。


「あの看板、外してみて」


突然ベルが動き出した。

言う通りに看板に手をかけた。

錆び付いていて取り外すのに苦労したが裏側には扉があった。


「やった」


報告しようとして、相良先輩のほうを向いたその瞬間だった。



相良さんの背後に背の高い男が立っていた。

だめだ、どうすれば。

いつもこういった状況には慌ててしまうのだが、今回はそれに相応しい理由があった。

喪服のような黒いコートから伸びている手には、ナイフを持っていたからだ。

抵抗すると傷つけると忠告しているのだろう。


「こいつは間違いなくヤバい。立ち向かうことを考えるな」


ベルが耳元でそう呟く。


「そこの小さなお嬢さん、例のものの場所を教えて頂きましょうか。僕も彼女を傷つけたくはない」


僕に話しかけたと思っていたが、男はなんとエマちゃんに用があるらしい。

理由はわからないが、男はエマちゃんに意識が向いているはずだ。

今が相良先輩を助けるチャンスじゃあないのか。


ベクトルで移動して相良さんを助けてそのまま逃げよう。

エマちゃんも助けなきゃ、どうしよう。

救出する作戦を立てていたその時だった。


「知らないやつには教えない」


エマちゃんは男の質問に対してそう返した。

この状況はまずい。男を刺激してしまっている。


男は呆れたような顔でナイフを持っている手を動かしながら話し始めた。


「交渉には応じてもらえませんか。......それならば、ぐぁあ」


何が起こったのかわからなかった。

男の叫び声が聞こえたと思うと、男が撃たれて座り込んでいる。

男の背後にはさっきまで僕の後方にいたはずのエマちゃんが銃を構えて立っている。


男は苦しみに悶えながらのた打ち回っている。

エマちゃんがもう1度発砲すると、男は目の前から消えてしまった。


「分身を遠隔操作する学術かしら。だから学術を使ってこなかったのね」


先ほどまで男にナイフで襲われそうだった相良先輩は冷静に分析する。

相良先輩の異常な胆力がもはや恐ろしかった。


それよりもエマちゃんだ。

僕の背後にいたはずのエマちゃんは男の背後に一瞬で移動した。この瞬間移動も学術なのか。

しかし、不可解なところもあった。

詠唱なしで学術の使用を行っていた。

学術は基本的には術名を言わなければ発動ができないはずだ。


エマちゃんに聞いてみようと男が消えた位置に目を向けたがそこに姿はない。

後ろから声をかけられそちらを向くと、僕の後ろにまた戻ってきていた。


「今からやること、変な人と思わないで」


エマちゃんはそう言った。


「『歪んだ正義感(タクシードライバー)』」


学術の詠唱を行うと、何も持っていなかったエマちゃんの手に銃が出現した。


「『中身のない物語(パルプ・フィクション)』」


また詠唱を行うと、先ほど銃を撃った位置まで歩いて行った。

そこで銃を構えて、下ろした。

何が起こっているのだろうか。


その様子を見ていた相良先輩は納得したような顔になった。


「時系列の入れ替えってところかしら」


「うん」


エマちゃんが返事をする。当たっていたらしい。


「小野君、わかった?」


「いえ、何が何だか」


「物事の順番を学術で入れ替えてたのよ。普通は敵の背後に回ってから銃を撃つでしょ」


「そうですね」


「でもエマちゃんは銃を撃ってから敵の背後に回った。時系列を操作できるってわけよ」


「なんとなくわかりました」


「でも時系列の操作ってものすごく高度なことをやってるわね。エマちゃん一体何者なの?」


「ただの可憐な少女だ」


エマちゃんは笑ってそう答えた。

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