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学歴戦争  作者: 突然雨
12/13

少女

驚いてしまい咄嗟に反応できなかった。

歩いてきたのは中学生くらいの幼い少女であった。


「憑依: 蜘蛛の糸」


相良先輩が先に攻撃を仕掛けた。

蜘蛛のぬいぐるみから糸が放たれたが、少女は簡単に避けている。


「あれ?」


少女がこちらを向いたまま首を傾げた。


「高校生の人?」


外国から来たのだろうか、日本語は片言だった。


「そうだけど」


相良先輩はまだ警戒を解いていないがそう答えた。


「私が助っ人、エマという」


「え?」


思わず声に出てしまった。

林さんの主人というのはこの子だということなのだろうか。

大人の人を想像していた。


「あら、ママとはぐれちゃったの?」


相良先輩も迷子の子どもだと思っている。


「ちがう、私が助っ人、面白そうだからメアの代わりにきた」


「ほんとに?」


未だに信じられないといった反応である。

この子が本当に林メアリーさんの主人で今回の助っ人なのだろうか。


「エマちゃん、ちょっと質問に答えてくれる?」


「憑依: ピノッキオの冒険」


相良先輩はバッグの中から木の人形を取り出して、それに学術をかけた。


「ちょっとこれ持っててくれる?」


木の人形をエマちゃんに渡した。


「本当に今回の作戦の助っ人なの?」


「うん」


エマちゃんは木の人形を握りながら、平然とした態度で返事をする。

学術を付与した人形にはなんの変化も見られなかった。


「変化ないわね、ほんとっぽいわ。ありがとう」


そう言って人形を回収した。

依然として納得していっていない表情の儘ではあった。


「許可証は持ってるの?」


「うん」


「じゃあ行くわ、小野君、エマちゃん、ついてきて」


相良先輩は先頭にたって歩き始めた。

僕はエマちゃんと合流した旨を先生に連絡して、先輩とエマちゃんの後をついていった。

なんだか気が抜けてしまったが、ここからは気を引き締めていかなければいけない。


相良先輩の学術で周囲に人がいないことを確認してから、裏口より侵入を開始する。


建物の中に入るとひんやりとした空気が流れていた。

周囲を見ると、大きめのタンクが並んでいるが全て錆びている。

元々工場として使われていたのだろう。

想像していたような研究所のような様相ではなかった。


「まだなんもないわね」


「スパイ映画みたい」


「静かにっ」


慎重に周囲を警戒しながら進んで行く相良先輩に対して、エマちゃんは楽しそうだ。

広い部屋を抜けて今度は迷路のように長い通路へ進んで行く。

床は金属でできており、静寂の中に僕たちの足音だけが響いている。


しばらく歩き続けると、相良さんが何かに気づいた。

少し戻って同じところを歩いている。


「おと」


エマちゃんもそれに気づいたようだ。

僕だけがまだ気づいていない。


トントンとエマちゃんに肩を叩かれた。

僕に何かを気づいてほしいようだ。

さっき来た道をまた戻って歩き始めた。


音、と言っていたためエマちゃんの足音に神経を集中させた。


コン、コン、コン......


金属と靴裏が当たって音がする。


コン、コン、コォン......


「あっ」


僕も気づいた。

今エマちゃんが立っているところだけ微妙に音が異なっている。

下に響くような音がする。


相良先輩は下に行くわというジェスチャーを送ってきた。


しかし、下に行こうにも床は扉になっているわけではなく、ただの鉄の板である。

工具もないし、便利な学術もない。

相良先輩も同じことを思っていそうだ。


するとエマちゃんが僕たちの前に立って「離れて」と言ってきた。


僕と相良先輩は言われた通りに離れてエマちゃんの行動を見ることにした。


棲みつく悪意(シャイニング)


エマちゃんは学術を発動したかと思うと、思いっきり両手を上げて下に振り下ろした。

下に振り下ろした瞬間にエマちゃんの手には斧が握られており、床に当たるとすごい音を立てて床に裂け目を作った。


「もう静かにする意味なくなっちゃったわね、行くわ」


「憑依: 蜘蛛の糸」


エマちゃんが広げた穴に糸を垂らしてその糸をつたっていき、僕らもそれに続いていった。


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