作戦開始
「いいですか、みなさん」
今日の探偵部のミーティングはいつになく張り詰めている。
「いよいよ明日がアポトーシス潜入の日になりました。
あくまでも証拠を掴むのが目的です。戦いは避けてください」
氷上先生が静かに話し始めた。
「明日は2つの班に分かれて侵入しようと考えています。
私と如月君、小夜さん、真田君がA班で相良さん、小野君がB班になります。
我々の班はこっちから、B班はここから侵入してください」
中央の机の上には工場地帯の地図が広げてあり、侵入経路に先生が印をつけていく。
「このルートの先に、組織の保管庫に辿り着くはずです」
「先生、証拠ってなにを見つければいいんですか?」
真田が質問をする。
「恐らくですが、組織は違法な生物実験を行っています。なにか怪しい植物や動物がいたら写真にでも撮っておいてください。」
「わかりました」
「それと、B班には学術協会から助っ人が来てくれますのでその方と一緒に進めてください。この方が来てくれるそうです」
そう言って先生はスマホの画面を僕たちに見せてくれた。
画面にはメイド服を着た女性が映っている。
どこかで見たことのあるような顔だ。
「え、本当ですか?」
1番驚いているのは小夜先輩だった。
「この方がどうかしたの?」
相良先輩がそう聞いた。
「ええ、相良先輩知らないんですか?学術協会幹部の林さんですよ。ランキングにも載ってたことありますよ」
ここで言う「ランキング」とは葉桜社が月に1度出している「トップ・ティア」のことであろう。
日本で活躍する学者の人気度や活躍、単純な強さなどによって順位がつけられている。
100位まで順位が出るが中でも上位10人の学者を「トップ・ティア」と呼んでいる。
恐らく林さんも10位以内に入っていたことがあるのだろう。
「ランキングねえ」
相良先輩は心底興味がなさそうである。
「B班の相良さんと小野君は作戦開始の前に、彼女と合流してください。
戦いは避けること。組織の人と会ったら逃げることを最優先としてください」
こうしてミーティングは終了した。
翌日、ついにアポトーシスへの侵入作戦が開始された。
僕たちは今、沿岸部の工場地帯にいる。
しかし、大きな問題点をひとつ抱えている。
助っ人で来てくれるという林さんと合流できていないのだ。
9時集合だったのだが集合場所に行っても誰もいなかった。
何食わぬ顔で15分後に相良先輩が遅刻してきたが、林さんは一向に来なかった。
おかげで相良先輩はご立腹だ。
すると、氷上先生から電話がかかってきた。
「林さんから連絡がありました。今回の助っ人、林さんの代わりに林さんの主人が来るそうです」
「主人?」
たしかに昨日写真を見たとき、メイド服を着ていた。
あれはキャラ付けではなく本職のメイドだったというわけか。
「鏡野高校の探偵部です、と言えばわかってくれると思います。合流できたら連絡をください」
「わかりました」
と言って電話を切る。
内容を相良先輩に伝えた。
「はあ、協会ってほんと適当ね。私たちも舐められてるわ」
しばらく待っていたが、その姿は一向に見えない。
もう集合時間から1時間は経っているのだが。
「もう私たちで侵入しちゃいましょう、私がいれば大丈夫よ」
「それはまずいですって」
「大丈夫よ」
そう言うと携帯を取り出して向こうの班に連絡をした。
「相良です。協会の方と合流できました。作戦を始めます」
相良先輩はそう言って電話を切ると、僕に向かって人差し指を立てて秘密というジェスチャーをした。
「さあ、行くわ」
相良先輩は自分のバッグからぬいぐるみを取り出して学術を使用した。
「憑依: 白蛇」
ヘビのぬいぐるみが動き出し、それを頭に乗っけて歩き出した。
何もかもが不安だったがついて行くことにした。
次の角を曲がると扉があるというところで相良先輩の動きが止まった。
こちらを向いて「止まって」とジェスチャーをした。
恐らくこの角の先に敵がいるのだろう。
僕は息を殺して学術を発動できるよう身構えた。
こちらの気配を察知されたか、コツコツと足音がだんだんと近づいてくる。
相良先輩もぬいぐるみを構えて臨戦態勢になっている。
足音はすぐそこだ。
コツ、コツ……
ついに姿が見えた。
驚いてしまい咄嗟に反応できなかった。
歩いてきたのは中学生くらいの幼い少女であった。




