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「ああ、お腹がすいてるのか」
男の人が私を片手で抱っこして、もう片方の手でランプを持って部屋を出る。
「おい、ルーナ、ちょっと明かりを頼む」
部屋を出ると、天井が高くて広い部屋に出た。廊下もなかった。いきなりリビングルームって感じ?
ランプの明かりで照らされたところにダイニングテーブルと椅子が見えた。
「早起き、何か出たの?眠ーい。でも、何か出たなら起きる……【光】」
10歳くらいの子供の声がルーナなのだろう。ルーナという名前からすると女の子なんだろうか。
呪文らしきものを唱えると、部屋がぱぁっと昼間のように明るくなった。
いきなりでまぶしくて目をつむる。
「うわぁ、赤ちゃん起きたの?」
「ルーナ、赤ちゃんじゃないよ。赤ちゃんはせいぜい1,2歳くらいまでだろう。この子供は、もう3歳にはなってる」
4歳です!
……とはいえ、この世界の4歳、実は数え年っていうの?現代だと生まれて0歳で、1年たつと1歳。この世界は、生まれた時に1歳なのよ。生まれた1年目ってことで。つまり、現代日本的には3歳だけど、この世界ではちゃんと4歳!……昨日……いや、一昨日になってる?までは3歳なので、まぁ、そのくらいといえばそのくらいの年齢なんだから間違いじゃない?。
いや、間違い間違い。1,2歳ではなく3歳って言い方、絶対4歳に近い3歳って雰囲気の言葉じゃないよね?
急に明るくなってまぶしくてつむった目を開く。
部屋は思った以上に広く、20畳くらいはありそうだ。
そして、壁際には頭に角の生えた白ウサギが丸まっている。……あれ、知ってる。魔物だ。
ウサギだと思って近づくと大変危険だから近づくなと教わった。角で心臓一突き案件らしい。
それから、壁に取り付けられた棚の上に小さな羽のついた黒猫が。……あれも、魔物だ。
猫だと思って近づくと、とっても危険だから近づいてはだめだと教わった。毒のある爪で傷つけられたら5分で息が止まる案件らしい。
それから、私を連れてきたサーベルウルフがふんふんと、私のにおいをかいでいる。
馬サイズだけど、行動は犬。……かわいいといえばかわいい。大型犬を超えた超大型犬だと思えば……。
でも、魔物。大きな犬だと思って近づくと、めちゃんこやばいらしい。その牙でズタズタのめっためた案件だよね、きっと……。
でも、でもよ?
ミチェは頑丈なのだ。それは昨日……いや、一昨日のスキルチェックでしっかり判明した。その強度は、昨日の大鷲にかじられたり崖から落下したりすることで実験も終わっている。
ならば、モフモフしても問題ないのでは?
プルプルと感動に震えると、お兄ちゃん……ほら、おじさんってほどの年齢でもないから……が、ランプをテーブルの上に置くと、両手で抱っこしなおして背中をポンポンと叩く。
「ごめんごめん、怖いよな。大丈夫だ。魔物といっても、従魔だからな。……あー、分かるか?」
従魔?
「テイマーとか、うーん、まだ習ってないよなぁ……えーっと、ペット、そう、ペットみたいなもんだから大丈夫だ」
なんと!お兄ちゃんはテイマー!そして、従魔のことをペットと……。
え?
私もペットにされるってことは、従魔契約……を?
それって、従属契約……やっぱり、私、奴隷にされちゃうじゃんっ!
契約されたら終わりだ。奴隷扱いされるのと、本当に魔法とかで縛られて奴隷になるのとじゃ全然意味が違うっ!
手足をばたつかせて暴れる。
けど、1分もしないうちに力が出なくなった。
ぐーぐーとお腹が鳴る。
……もう何時間も食べてない。……毒草以外。
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