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薬草じゃないの?この激マズな味はまさに毒の味なわけぇ?!
「まずいぞ、もう目の焦点が合ってない。1枚でも大人の致死量があるのに……」
ひぎゃー!もうすでに1枚食べて、口の中のは2枚目だよっ!
ミチェ、せっかく頑丈なのに、毒草食べて死ぬの?
しかも、腹ペコだったから口に入れたとか……。
「かわいそうに……毒を食べさせて殺そうとするなんて……」
いや、自分で食べたのですが……。
「捨てられた……捨て子ということか?」
違うよ、捨て子じゃないよ……。
お父様もお母様もミチェを捨てたりしないよ?スキルチェックして……訳の分からない磨研スキルもちだったけど捨てないよ。だって、身体強化(受)があって良かったって、抱きしめてくれたもん。
きっと今頃探してるよ?
「かわいそうに、大丈夫だ。今助けてやるからな」
ふわりと優しく抱き上げられた。
「うおお、軽いな、そして柔らかくて暖か……って、これ毒のせいで体温が上がってるんだっ」
ああ、私の大好きな抱っこだ。
抱き上げられて、運ばれていく。
「疑って悪かったなルーナ。お前は落ちてたのを連れてきてくれたんだな」
「えへへー、ねぇ、ねぇ、飼っていい?飼っていいよね?」
ん?まさか、飼うって、私を?ペットに?
人をペットにする……、
あ、なんか知ってる……漫画によくあるあれだ……。これ、奴隷コースってこと……では……?
目が、覚めた。
真っ暗。……しばらくぼんやりしてたら、うっすらと周りが見えるようになってきた。
……どこ?
侍女の名を呼ぼうとして口を押える。
思い出した。私、奴隷になっちゃったんだ!なんかペットとして飼われるとか……。
手足や首に枷はない。
「よかった、鎖でつながれたりちてない……にゃらば、逃げる」
次に確認したのは部屋の様子。
どうやら丸太を組んだ山小屋風の建物のようだ。
ミチェの家……はお屋敷という感じだった。使用人もいたし。
それに比べたら粗末な作りだ。使用人や護衛はいないと考えて大丈夫だろうか?
しかし、いたいけな幼女をペットとして飼おうなんて言うのは悪党にちがいない。
用心しなければ。もう少し部屋の中を観察する。
悪党のねぐらにしては、清潔だよね?
布団はふかふかではないものの、シーツに嫌な臭いはない。ベッドの周りに脱ぎ散らかした服が散乱していることもない。
小さなテーブルとイス、それから本棚がある。
あれ?本棚?本って、こういう剣と魔法の世界って貴重じゃないの?
識字率とかも低いのでは?そうでもないのかな?
分からない。とにかく逃げよう。
ドアにカギとかかかってないよね?部屋から抜け出して見つかったら、何も知らないふりして喉が渇いたとか何か言おう。
ふむ。完璧な計画だ。多少のことならミチェは頑丈だから大丈夫。
でっかい鷲のような魔物にかじられても無傷だったし、8000m級の高い山から転がったり落下したりして落ちても無事だったし。
よし。じゃ、逃げるよ!
ベッドから飛び降りたいところだけど、そっと後ろを向いて足を延ばして降りる。
4歳児には50センチの高さのベッドを下りるのは大変なのだ。……抱っこで降ろしてもらえば楽なんだけど。
「うんちょ、どっこいちょ」
と、小さく声を出しながらベッドを下りる。
「ぬきあし、さしあし」
と、小さく声を出しながらベッドからドアへと向かって歩く。
怖いんだ。ミチェ4歳児は、暗いの怖いの。何か気をそらさないと泣いちゃいそうなの。
「ひゃっおうっ」
叫びそうになって口を押える。
「何で、どうちて?ここの家の人間、馬鹿にゃの?」