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「そうそう、エルフだからね、年を取るのが遅いから、15年後でもおじさんにならないから大丈夫だよ」
しっかりと矢筒が見える。
腰に剣は下げていない。
「弓ちゅかう……」
エルフの定番だね。
「そうそう、物知りだね。小さいのに、もしかしてエルフが大好きなのかな?そっかそっか。じゃあ、結婚式にはエルフの村に連れて行ってあげ」
抱き上げようと伸ばされた手を全力で拒否する。
「えりょふの里、いかにゃい、えりょふいや」
弓ばっかりで剣がないかもしれない村なんて地獄じゃん。
「僕以外のエルフには興味がないってことかな?ふふふ、かわいいねぇ」
「うわぁーん、おうちかえりゅー、おうちぃ」
ロッドさんの胸に突っ伏して大泣き。
「う、ん……あ、どうしたミチェ」
泣いてる私の背中をぽんぽんとしてくれるロッドさん。
「な、ファーセス、どうしてお前がここに」
「あ、ロッド生きてた。救難信号見て助けに来たんじゃん、とはいえ、助けが必要にも見えないけど。すごいね、とても人間技じゃないよ。女王鎧アーントをよく一人で倒せたね?囮役もなく盾もなしに」
ロッドさんがふっ笑いながら上半身を起こして、私を抱っこした。
「一人じゃないさ。ミチェと、こいつらのおかげだ」
ロッドさんが片手で羽猫の頭を撫でた。
「ルーナねーねも頑張ったよ!」
女王鎧アーントの元に、牙を真っ赤に染めたルーナちゃんと、全身真っ赤になっている角兎のうさたんも姿を現した。
「んー、まぁ、ロッド一人の力じゃないとしても……鎧アーントの固い体を、どうやって角や牙で攻撃したの?身体強化の支援魔法でも使った?関節だけを狙い続けるなんて無理だよね?それに……ミチェは、そんなに強いの?そうは見えないけど?」
エロフの少年は首を傾げたものの、すぐにぽんっと手を叩いた。
「そんなことより、ずいぶん怪我してるみたいだから、まずは治療か。小屋に転移すればいいかな?鎧アーントの残りは後で来るやつらに任せりゃいい。素材回収もこっちでするよ、早く休みな」
ん?転移魔法が使えるの?
す、すごいな、エロフのくせに。いや、エルフは魔力が多いっていうから、エルフならではなのかな?
エロフの癖に。
「はい、これ小屋に戻ったらロッドに飲ませて。それからミチェちゃんにはこっち」
片手にポーション瓶。もう片手にクッキーのつまった瓶を渡された。
「あいがとごじゃいましゅ?」
お礼の言葉が終わらないうちに、パチンとファーセスさんが指を鳴らす。
景色は鎧アーントだらけだった森の中から、あっという間に小屋の庭に変わった。
右手にポーション、左手にクッキー。
ふむ。ファーセスさんはチャラい言動系だけどいいエルフ。
乙女ゲームとかにもいる。言動はチャラいけど実はまじめなの。
ロッドさんが受け取ったポーションの蓋を開くところを見て、ふっと意識が遠くなる。
安心すると眠くなる。
もう、限界。お休みなさい。
……すやぁ……。
ご覧いただきありがとうございます。
第一部完結です。章分け設定してあったかな??