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 それが、女王鎧アーントの断末魔だと気が付いたのは、ドスンと女王鎧アーントの巨体が倒れこみ、鎧アーントたちが制御を失ってバラバラと逃げていく姿が目に映ったからだ。

「ロッドにーに」

 倒れこんだ女王鎧アーントの背にまたがったまま、ロッドさんは呆然としていた。

 それから、首と背中の関節に突き立てた剣を引き抜いて私に見せる。

「すごいな、ミチェの剣……」

 唖然としている。

 そうでしょ、すごいでしょと自慢げな幼女にはなれない。だって、本当にすごい。木だよ?木の剣だよ?

「あ、すまん……」

 かろうじて剣の形を保っていたのに、すぐにボロボロと腐り落ちた。女王鎧アーントの体液にやられてしまったのだろうか。それとも、やっぱり木だから衝撃でだめになったのだろうか。

「う、う、う……」

 まずい、やばい。幼女の感情が抑えられない。悲しみをうまく消化できずに……。

「うわぁーん、ミチェの剣……ミチェの剣が、こわれちゃったでちゅ、ロッドにーにに作ってもらっちゃのに、うわぁーん」

 にゃんたんが泣き出した私をどうしていいのか分からなかったのか、ロッドさんの元へと下りていく。

「はは、ミチェ。また作ってやる。次は、もっとかっこよく作ってやるからな」

 それならいいですなんて言わないよ!

 私は刀剣女子!同じ剣は二つとない世界に生きる女だよ!一つの剣の死は、別の剣で埋め合わせればすぐにご機嫌ってわけにはいかないっ!

「ああ、そうだ。せっかくだから、こいつの足で作るか?刃が無くて切れないが、木の剣よりは丈夫な切れない剣ができるはずだぞ?なんといっても剣が刺さらないほど固い女王鎧アーントの鎧で作るんだからな」

 ん?

「くろびかりちゅる?」

「あ、ああそうだな。色はこの色……やっぱりいやか?」

 真っ黒な剣……。か、かっこいい!

 ふっ。中二病こじらせてるよ!いいでしょ!もうっ!うるさいよ!大人じゃないよ、幼女だからいいんだよ!

「剣よりかちゃいのに、どうやってちゅくるの?」

 ダイヤモンドカッターみたいなのがあるのかな?

「ふ、ふはは、そうか、それが気になるのか。鎧アーントの素材の加工は、女王鎧アーントの吐き出す液体を使うんだよ。液体をためる袋を加工した筆で溶かして形を作っていくんだ」

 何と!

「しょれ、ミチェにもできゆ!」

 非力な私でもそれなら自分だけの剣を自分で作ることができるのでは?

「あー、危ないからな、体液は、こうして何で溶かしてしまうから」

 と、ロッドさんが溶けた皮の鎧や服を見せてくれた。

「怪我ちてるっ」

 溶けた服の下のひどいやけどのように皮膚がぐじゅぐじゅしていた。

 それに、あちこち打撲のあとも見える。

「はは、ちょっと、限界。ここにいれば他の魔物が近づいてくるようなことはないだろうが……ミチェを頼んだぞ……」

 ロッドさんは、羽猫のちゃんたんにかけた言葉を最後に意識を失った。

「ロッドにーに、にーに、死なにゃいでっ!にーにっ!」

 ゆさゆさと体をゆすると、

「死んでにゃい」

 と、ぼそりとロッドさんがつぶやいた。

 うん。無事そうだ。

 ほっとして、そのままロッドさんの胸の上にうつ伏せで倒れた。

 エネルギーが切れた。幼女は突然エネルギーが切れる生き物。仕方がない。

 ロッドさんの胸が上下して呼吸しているの分かる。

 とくとくと心臓の音も聞こえてほっとする。

 あ、眠くなってきた。他の魔物が近づかないって言ってたし、寝ても……。

 うつらうつらとしていたら、バサバサと音が聞こえた。

「うわーっ、ロッド死んでる!小さな子供を守って死ぬなんて、ロッドらしい最期じゃないかっ!」

 やかましい声が聞こえたので、寝れなくなったイライラをぶつける。

「死んでにゃいっ」

 顔をあげると、めちゃくちゃ美しい13歳くらいの少年の顔があった。

 耳がとがってる。

「えりゅふ……」

「そうだよ、僕はエルフ。やだなぁ、僕に惚れちゃった?うん、美形だもんねぇ。仕方ないなぁ。ちょっと若すぎるかもしれないけど、かわいいから15年くらいしたら結婚する?」

「えりょふ……」

 エルフじゃない。近づいちゃだめなエロフだ。


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