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 なんで、今になってそんな攻撃をし始めたの?

 と、思ってみたら、強酸弾と呼ぶべき女王鎧アーントの飛ばす唾は、周りの鎧アーントたちにも穴をあけていた。

 そうか、子供を傷つけないようにしてたのか。でも、ロッドさんが足を切り落として命の危険を感じたので最終手段として。

 ロッドさんは慌てることなく、そのまま鎧アーントの間を縫うようにして走っていく。

 逃げた?

 女王鎧アーントは2本足では追いかけることもできず、ただ怒り狂ったようにロッドさんが走っていた方向へと激しく強酸弾を飛ばしている。

 どどどどどどどと、被弾した鎧アーントが次々に倒れ、しゅわわわわーと、溶けながら湯気?蒸気?白煙?をあげて視界が曇っていく。

 あれ?あれも吸い込むとやばいやつかな?

 上空ここまでは白いのは見えてないけど、念のため距離を取った方がいいかもしれない。

 と、考えていたところロッドさんの姿を見失った。

 小屋の方に走っていったよね?

「捕った!」

 ロッドさんの声が聞こえ、小屋の方へ向けていた視線を戻すと、女王鎧アーントの背中にロッドさんが乗っていた。

 は?

 え?

 いくつかの木が乱れているところを見ると、どうやらロッドさんは鎧アーントの群れに突っ込み身を隠しながら大きく回って女王鎧アーントの後ろから背中に飛び乗った……ので、合ってる?

 女王鎧アーントは背中のロッドさんを振り払おうと体を動かすが、両足を体に回して挟み込んでいるのでびくともしない。

 強酸弾を打ち込もうにも、頭のすぐ後ろにいるロッドさんにはどうにもならないようだ。

 ロッドさんは剣の束を両手で持ち、刃を下に向け、女王鎧アーントの頭と背中の継ぎ目の関節部分に突き立てた。

「やったでしゅ!ロッドにーにしゅごい!」

 と、拍手をしようとしたところ、突き立てた剣が粉々になった。

 あ!剣にも酸がかかってたんだ。

 ロッドさんの顔に焦りが浮かぶ。

「剣、剣をっ」

 収納ポシェットに手を突っ込み、剣を求めると手に何かが触れた。

「ロッドにーに、剣でしゅっ」

 それが何かを確認もせず、ロッドさんに投げる、いや、手をするりとすり抜け落下する。

 落下するそれを見て、顔面蒼白。

 あああ、あたしの、あたしの剣っ!

 ロッドさんが作ってくれた木の剣。せっかく作ってもらったのにという気持ちと、今必要なのは木の剣じゃないよね!っていう気持ち。

 ロッドさんも落ちてくる剣が木の剣だと分かったはずなのに、幼女の私の厚意を無駄にできないのかと思ったのか、ありがとうといい笑顔で口にしながら剣をつかみ、女王鎧アーントの首に突き立てた。

 ひぃっ!木の剣でどうにかなるわけないのに。

 今のうちに、別の武器になりそうなもの……。

 収納ポケットの中に手を突っ込む。

 武器になりそうなもの、武器になりそうな……。

「鳥の魔物の卵の殻、ちがうでしゅっ」

 そりゃ雛に攻撃しようと思ったけど。

「金貨……違うでしゅっ」

 銭形平次みたいにお金を投げても現実では相手にお金をあげるだけの親切っ。盗人に追い銭だよっ!

「魔物の牙、惜しいでしゅっ」

 サーベルフェンリルのような牙なら立派な武器かもしれないけど、サメの歯サイズじゃ目つぶしくらいにしか使えないよ。

 ああ、焦ると、ろくなものを四次元なポケットから出せずにバタバタする青い猫の気持ちが今ならわかる。あれもこれもそれも違う違う違う。

 キィーーーーンと、超音波のような音とも声ともちょっと違うような音が頭に響いた。


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