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いや、違うかもしれないけどそっくり。ってことは、この森は私が住んでいた周りの日本の森よりも熱帯雨林っぽいってことじゃない?
バナナ、あるかも!
磨いていた短剣の刃をポシェットにしまい、てててと走り出す。
ルーナちゃんにくわえられて元の位置に戻される。
別の方向に走り出す。
にゃんたんにくわえられて、ぱたぱたと飛んで戻される。
「え?にゃんたん、ちかりゃもち……!」
びっくりした。私が抱っこできるサイズの羽猫だよ?猫サイズだよ?
それなのに、私の襟首くわえて、飛べるってすごくない?
「ちゅごい!」
なでなでしようと思ったら、私を囲む三角形の陣形に戻ってしまった。
仕方がない。今度はこっち。
うさたんの方に向かって走る。
私をくわえてぴょんと飛び上がり、元の位置に戻された。
「うさたんもちゅごい、ちかりゃもち……!」
兎の力じゃないし、ジャンプ力もすごすぎん?
おぬしら、ただの猫と兎じゃないな!
……いや、羽あるし角あるし、ただの猫と兎じゃないのは知ってるけど。そういうことでなく。
それから5分。
じっとしていたら、飽きた。
仕方がないよ、幼女だもん。小学校入学の6歳で45分座っているための練習するんだよ、幼児って。子供にもよるけど、5分座ってるだけでも大変な幼児幼女もいるんだよ。
……あ、あたし、座ってられないタイプだ。だって、気になることがいっぱいあるんだもん。
前世知識があるせいで、いろいろ考える能力はあるんだから、仕方がない。そう、仕方がないのだ……。
退屈ー!
すくっと立ち上がる。
すると、お腹がぐーっとなった。
仕方がない。幼女だもん。
幼児って、一度にたくさん食べられないから、朝おやつ昼おやつ夜と、5回に分けた食べたりするんだよ。まだ日本でいうところの3歳になりたて、こっち世界でやっと4歳だもん。別に、私が食いしん坊なわけじゃ……。
「うわぁーん、お腹ちゅいたぁ!」
思わず涙が出た。別に食いしん坊なわけじゃ……。
「大変!ミチェがお腹空かせてる。えっと、えっと、お肉はそのまま食べられないんだっけ、どうしたらいいんだろう」
ルーナちゃんが立ち上がって、その場でぐるぐる回り始めた。
そうか、前はなんかでっかい魔物を狩りに行ってくれたけど、ロッドさんに注意されたもんね。
ちゃんと覚えてるんだ。……そういえば、ロッドさん、だから、どうしてあげればいいって言わなかったな。
ここにあるものを食べさせてやれとかさ……。うん、自分で何とかしよう。
ロッドさんが買ってきてくれたハムやパンの残りがどこかにあるはず。
目をつむって、どこに置いたかを思い出す。
……。
「ちゅーのー鞄っ!」
収納鞄っ!
バンバンと地面をたたく。
収納鞄から出してた。出した分全部食べちゃった。家の中にはない、きっと。
ぐぬぬぅ。ぬぬず。
「おにゃか、空いた……」
やばい、4歳児の感情があふれ出てきた。
「うわぁーん、お腹空いたよぉ、ばにゃにゃ食べたい、ばにゃにゃっ!ばにゃにゃが食べたいっ」
ルーナちゃんが慌てて私の周りを右往左往し始めた。