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「きゅっ」
「ちゅぎはうたたんね」
角兎、兎のうさたん。……作業が上手く言えないので、うたたんになってるけど、うさたんと呼ぶことにした。
名前を付けたわけじゃないよ?名前あるよね。ロッドさんつけてるよね?呼んでたかな?うーん、記憶にない。
ってなわけで、うさたんの角も磨く。スキル研磨発動!きゅっきゅとな。
≪経験値4取得≫
「ふおおお、きれいににゃっちゃ」
なんだか、ワックスかけたみたいにつややかになっている。
前、こんなにつややかだったっけ?やっぱり外で見てるから?
首をかしげる私の前に、にゃーたん……羽猫がお手をするように前足を片方出した。
「爪、磨くでしゅ」
マイクロファイバーもどきで磨いたにゃーたんの爪は、トップコートをぬったようにつやつやぴかりん。
「……おかちい」
やっぱり、太陽の下で見たからより輝いて見えるというのには無理がある。
手に持っているマイクロファイバーもどき……青いハンカチを見る。
いや、青いっていっても、青じゃない。緑の青ね。じゃあ、初めから緑って言えよ!ってなもんだけど、なんか青菜みたいな色なのよ。
青信号みたいでなく、青葉みたいな。……何を言ってるか、自分でもわからない。うん。
「まいくろはいばーしゅごい……」
あ、そうだ。
ポシェットから折れた短剣の刃を取り出してマイクロファイバーもどきで磨く。
……え?さっき卵の殻で研いだばっかり?いいんだ。研ぐと磨くは違うんだ。
きゅっきゅ。
そういえばさ、唐突に思い出したけど、バナナの皮で銀を磨くと「抗酸化」作用のある「タンニン」の影響かなにかでぴかぴかになるとか。
ああ、あと革靴とか磨くのにもバナナの皮はいいとか。なんでもバナナの油分と酵素が汚れを落とすのに役立つんだとか。皮製品……この世界ではたくさん使われてる。
そうだ、磨く物といえば、靴があったじゃないか!って話よ!それ以外にも皮製品をガンガン磨いていけば、経験値ザクザクゲットだぜ!
よし、では、磨くために、まずバナナを食べないとね。
バナナ、美味しいよね。
「にゃい……」
そういえば、この世界でバナナは食べたことがない。使用人がいるような家でも一度も食べたことがないということは、この国には流通していないのかもしれない。……気候が、確かにバナナ向きではない……か。日本に近い気候だから。
「ばにゃにゃは、じゃんぐうにはえてゆ」
ジャングル……。アマゾンとか?
家の周りの森を見る。
む?むむむ?
針葉樹林ではなく、広葉樹林の森だと、思ってたけど……。
もしかしてジャングルなのでは?
いや、ジャングルと森の違いは人の手が入ってないうっそうとした森がジャングルっていう言葉の意味は知ってるよ?
だから、富士の樹海はジャングルなのかもしれない。……でもそうじゃない。
日本人の感覚だと、ジャングルは、なんかこうバオバブ……いやマングローブ……いやゴムの木……うーんと、ヤシ、いや、シダ……。
広葉樹林とかとなんか違う、あ、ちょうどバナナの葉っぱみたいな木が生えてるところ。
いや、バナナは木じゃなくて一年草の草だっけ?
と、森を眺めていると……。
「あ、あれ、ばにゃにゃの葉っぱににてりゅっ!」
見つけてしまった。バナナの葉っぱを!
ジャングル調べたら、日本人がイメージするジャングルと、本来の意味のジャングルが違ったよ……。
未開の森がジャングルだから、林業が壊滅して人の手が入らなくなった日本の森もジャングル。
いや、日本の森がジャングルって、ちゃうやん、日本語のジャングルイメージと!!!!!
ってなるよね……。
言葉、難しい。