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≪レベルが上がりました。レベル2→レベル3≫
ふおおお!レベルがまた上がった!
「……」
で?
1度目ほどの感動はない。
いや、よく考えると、レベルが上がったからって、だから?って感じなんだよね。
ステータスが見えないから、何がどう変化したのかもわからないし、体が軽くなったとかいう実感もない。
「んー……」
両腕を組んで……上手に組めてないけど、組んで、首をひねる。
どうしたら、両腕をうまく組めるようになるのかを悩んでいるわけじゃないよ。
本で読んだところによると……前世の漫画だけど。
共通しているのはHPとMPが上がるということだ。
そりゃ、実感できないよね。
魔法を放てる回数が増えた!って思う機会もないし、魔物と戦って体力が削られる経験もしてないんだもん。
でもさ、もしかして、4歳児でレベル3って実はすごいんじゃない?だって、魔物と戦うこともないから、レベル上がらないよね?私の場合は磨研スキルで経験値がたまるからだし。
いや、待てよ……他の魔法を使っても上がる?剣の訓練したら上がるとかもあるのかな?
知識がなさすぎて辛い……。
振りむけば、本棚に本が並んでいる。
近づいて本に手を伸ばす。
本をめくる。
「読めにゃい……」
ぱたんと本を閉じて本棚に戻す。
ちぃにぃが言ってた。6歳になったから勉強が始まるんだと。まだ、ミチェ4歳だから文字が読めなくても普通。6歳になってから頑張る。
それよりも今は、スキルを磨かないと。スキルで磨くんじゃなくて、スキルを磨く……言葉、めんどくさいことになってる。
身体強化(受)がレベル8だってお母様が驚いてたから、スキルにレベルがあるのは確実。
磨研スキルのレベルが上がれば上がるほど、きっと研ぎ師への夢が近づくはずだ。
だから、やることは一つ。スキルをいっぱい使うってこと。
木剣と盾をベッドの上に置いて、小屋を出る。
「ロッドにーたん」
小屋の外をぱっと見ただけで姿が見えなかったので、呼んでみる。
すると、小屋の右に山積みになっている魔物の影からひょいと顔を出した。
ぎゃー!殺人犯!
両手が血まみれ……って、前にもこれはやった。解体中なんだよね。魔物。
「魔物減ってにゃい、解体は大変?」
何か恩返しに手伝えたらと思ったけど、非力な幼女が戦力になるわけでもなく……。
「ああ、いや、もうけっこうな数解体したんだがな、あいつらが今日はやたらと調子がいいのか、大物をいくつも仕留めてくるから終わらない……と、また大きなの捕まえてきたなぁ……」
ロッドさんの視線の先、振り返ってみると、ルーナちゃんが、背中に自分の何倍も大きな魔物を載せて駆けてきた。
馬サイズのルーナちゃんの何倍もある……巨大な蟻だ。
「うわ、鎧アーントか。よく倒せたな?関節を正確に狙わないと歯が立たないだろう?」
ちょっと離れたところまで来ると、ルーナちゃんは体をぶんっと振ってどさりと地面に鎧蟻……鎧アーントを置いた。
「ううん、関節じゃないところも噛めたよー」
「脱皮したばかりでまだ固くなる前だったのか?って、危ないっ!」
死んだと思っていた鎧アーントが頭を上げた。
「ちんでない」
反射的に口にしたけれど、完全に油断していたルーナちゃんの首筋に向かって蟻らしい口が開いた。