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などと脳内でマメ知識を披露している間に、コツコツとロッドさんは工作を続けている。
ロッドさんの元を見ているふりをして、木を削っている短剣を凝視する。
せっかくの短剣だけど、手入れが雑じゃないかな?
「うお、この木、ずいぶん固いな。こんなに固い木を使ってたか?風刃を使ってる時には気が付かなかったが……」
そりゃ、手入れがね、行き届かない短剣では木を削るのも大変でしょうね。
と、心の中で突っ込みを入れながら見ていたら、あっと言う間に出来上がった。それは、もしかして……。
「これならどうだ?魔物の血の汚れもむしろ味だろう。子供が使う剣と盾だ。剣の稽古を始める貴族の子たちに売れるだろう。これだけ綺麗な木でできてれば」
木で、作った剣……木刀ではなく、木剣。
剣だ、剣!
手が伸びて、ロッドさんが作った木剣の束を持つ。
そして、持ち上げる。
「ミチェ、これ、ほちい!」
なんと、持ち上がるし、振れる!
まぁ、木だし、子供用サイズなので短くて、軽い!
両手どころか片手で持てるし、片手で天に突き上げることもできる。
「しゅごい、剣の舞もできゆっ」
くるくる回りながら剣を振り回す。
「あははは、そうか、気に入ったらミチェが使えばいい!ほら、盾も」
ホームベース型の腕にはめる形の盾だ。
盾はいらない。ミチェは頑丈だから。と、思ったけれど、なんかカッコいい。
「ミチェ、けんちみたい」
「ああそうだな、剣士みたいだ」
魔物の血で汚れた木の盾は、まるで戦いに勝利してきた証のようでかっこよさ倍増だ。
「ありがちょう、ロッドにーたん」
ロッドさんが満足げに笑う。
「せっかくだ、解体が終わったら、ちょっと剣の練習してみるか?」
おおお!私には無理だと思っていた剣の練習!
「しまちゅ!ミチェ、剣のたちゅ人になりまちゅ!」
ハイっと元気に手をあげる。
「じゃあ、残りの板も加工して街に行ったときに売ってくるよ」
そういって、ロッドさんはまた加工作業に入った。
木剣とはいえ、剣は剣。
出来上がっていく姿を見ながら幸せな気持ちになっていると、眠気が襲ってきた。
4歳児はよく寝る。仕方がない。
「ミチェ……ああ、寝たのか。親に捨てられたのだとしたら、一人で生きていく術を身につけさせてやらないとな……剣の才能があれば冒険者として生きるのもいいだろう。」
何かロッドさんが言ってる……。
「これだけ磨くのが得意なら……何らかのスキル餅だろうか?貴族の屋敷で掃除の仕事を見つけるのも手だろうな、だが、ミチェのようにかわいければ、貴族の屋敷では使用人の嫉妬や主人のお手付きなど苦労もあるはずだ」
あ、抱っこだ。ゆらゆら背中ぽんぽん気持ちいいなぁ。
「ミチェが磨いた板が木工ギルドで重宝されるようになれば、ギルドに就職もできるかと思うんだよな。板を磨いてもらうか……いや、なんかこんな小さな子を働かせてそれを売りに行くのはないよなぁ。っていうか、むしろ金になりすぎたら目をつけられて攫われ兼ねないか。もう少し大きくなって身を守れるようになるまでやめた方がいいだろうな」