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ドアを開いて顔を出す。
「ミチェ、どうした?」
ロッドさんが両手を真っ赤に染めてやってきた。
「しゃつじんはんっ」
思わず息をのみ、後ろにひっくり返っておもいきり頭をぶつけた。
「し、死ん」
「しんでにゃいっ!」
腹筋が鍛えられそうなくらい勢いよく状態を起こす。
「よかった」
ロッドさんが私を抱き上げようと手を伸ばし、自分の手が真っ赤になっていることに気が付いて、慌てて水で洗いに行った。
「びっくりさせたな。魔物の解体をしてたんだ」
「ふーじんちゅかわないにょ?」
「ああ、風刃は、まっすぐ切断するしかできないから」
そういわれればそうか。マグロの解体なら、頭を落とすときと、柵に切り分けることには使えそうだけど、骨を取ったりとかは無理ってことだよね。ってことは、解体用のナイフとかが、あるということなのでは?
ナイフ、それは短剣、剣、ぐおおおおっ!
「で、どうした?」
あ、そうだった。
「磨きおわりまちた」
えっへんと、腰に手をあげてどや顔。
「早いな、どれ……うわっ、ミチェはすごいなぁ。ぴかぴかのつやつや……これは、高く売れるぞ」
「売る?」
意外な言葉が出てきた。
「ああ、素材買い取りをギルドはしているからな、いや、冒険者ギルドじゃなくて木工ギルドに売る」
木工ギルドか。冒険者ギルド以外いろいろあるのか。ってことは、鍛冶師ギルドみたいなのもあるのかな?
鍛冶師関係の依頼が張られてるとか?求人票とかも貼ってあっりする?
わくわくが止まらない。
「これだけ艶のある板なら、金持ち向けのテーブルとかが作れるんじゃないか?」
変な顔になる。
「床板だったテーブルでちょくじはいやでしゅ」
ロッドさんが黙った。
「ちかも、汚れて取り換えた板でちゅ」
ないわ。ベンチくらいならいいけど。テーブルはないわ。日本と違って土足よ。土足で上を歩き回った床板をテーブルにって……。
しかも、汚れが取れないからはがして新しくした、廃材、ゴミ……。まぁリサイクルするからゴミではないけど……。詐欺っぽい。
「んー、まぁそうか。売れたらミチェのお小遣いになると思ったんだがな……」
なんと!ロッドさん、詐欺ぽいなんて思ってごめんなさい。私のためだったんだ。
そうだよね、私はお世話になる身。家賃も食費も払うべきで、でもお金も持ってないから……。
板が売れると言うなら……。いや待てよ?何も床板を売ってもらわなくても、新しい板を磨けばいいのでは?
「ああそうだ。こういうのはどうだ?【風刃】」
ロッドさんが板を切った。それから、少し手作業でナイフを取り出して削ったり釘打ちしたりし始める。
ふおおナイフだ。いや、あえて短剣と呼ぼう。
さて、ここで元刀剣女子ミチェの刀剣講座。パチパチパチ。
日本ではナイフと短剣に違いはないのです。用途の違いで呼び分けてるだけなんだよ。形状がこうなっていたらナイフでこういうのは短剣ってないの。生活に使う物がナイフで、武器が短剣。
まぁ、この世界ではちょっと違うかもしれない。もっとあいまい。剣が普通にある世界なんだからだと思う。生活にも使うし武器としても使うみたいなのもあるからかも。まぁ、そんなわけで、もうナイフは全部短剣でいいのよ。
あ、一方でナイフと包丁は日本では「刃の形状がこういうのが包丁」みたいな分け方はしっかりある。……あ、ここでいう包丁って和包丁。洋包丁になると、ナイフとの境目があいまいになる。