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新作です。よろしくお願いいたします。
「なんだ、この剣の輝きは!名のある鍛冶師の業物だろう……え?ただの大量生産品?鋳造鉄剣?……いや、嘘だろ?」
ということが起きる少し前。
どうも。
あたし、ミチェ。4歳の幼女。
剣と魔法のなーろっぱ風異世界に転生した、元刀剣女子(日本産)。
リアルな剣が身近にある世界なんて最高!
私、鍛冶師になる!……と、思っていたこともありました。
あ、鍛冶師の娘ってわけじゃなくて、どこぞのお嬢様。どこかはわかんない。使用人が「お嬢様」というから「お嬢様」だと知ってるだけ。家の中じゃ家名も職業も誰も言わないんだもん。
でもって、今、あたし、絶体絶命のピンチです。
鷲掴みにされて、お空飛んでます。
大鷲の3倍くらい大きな大きな鷲のような魔物に鷲掴みにされて、……運ばれてます!
地上何百メートルの上空、おうちの裏山からはるか遠くに運ばれてる途中です。
落ち着け、落ち着け。
どうしたら助かるのか、考えるのだ。
落ち着……
「うわぁーん、こわいよぉ!たしゅけて!うわーん」
くっ。しっかり記憶も脳も大人なのに、精神と感情は子供だよっ。
怖くて泣いちゃうよ、そりゃ、4歳だもん……。ミチェ、まだ、4歳だもんっ。
じたばたと暴れたら、きゅっと鷲の魔物が落とさないようにと私を締め上げた。
ぐえっ。
おなか押えたら口から何か出るよっ。
と、思ったけど、出ない……。
逆に、空腹を思い出した。
「おなかしゅいたー、うわーん、おなかしゅいたよー!」
さっきまで怖くて泣いてたのに、今度は空腹で泣けてきた。
仕方がない、だって、ミチェは4歳だもん。
しばらく泣いて疲れて脱力。
精神力は使い果たしたところで、知能の出番。
鷲の魔物はまだ飛び続けている。ものすごい速さで飛んでいるのは、飛行機に乗っているときのような景色の変わり方で分かる。
もしかすると、飛びながら何らかの魔法を使っているのかもしれない。スキルかな?スピードの割に無風だし。
この世界は、剣と魔法の世界……なんだけども。魔法って何?状態。
刀剣女子の私は、剣が好きすぎて、魔法とか本当に興味がなかったんだよね。
というわけで、半生を振り返る。
へー、ふーんって感じ。魔法が使える使えないで一喜一憂したくなかったし、私の目標はとにかく鍛冶師になること!
ドワーフがいると聞いた時のあの感動は今でお覚えている。
早く大きくなってドワーフに会いに行きたい!
鍛冶師の弟子になりたい!それしか頭にない幼女だった。
2歳半くらいまでの若い私は精神年齢も低くて、寝る>食べる>抱っこ>剣>>>>>>>>>>それ以外って感じで生きてた。
3歳の私は、ちょっとは成長して、兵や騎士たちに剣を見せてもらうことを覚えた。
壁に飾ってある剣に椅子に上って手を伸ばすことを覚えた。
宝物庫に忍び込んで剣を愛でることを覚えた。
武器庫に行けばもっとたくさんの剣があると知り、行く計画を立てた。
その結果……。私の周りから剣は姿を消した。
危ない、危険だと……。ぐぬぬっ。
ミチェはこう見えても、前世はアラサーだよ!包丁だってハサミだって、普通に使ってたんだから!危なくなんかないよ!
「うわわぁっ!ミチェ危ないから、そんなに重たいもの持てないよ!」
「ミチェ、だめだよ、これはね、お前には持てないからね?」
「ぎゃー!ミチェ、大丈夫か!」
うん。剣は幼女には重たすぎた。
1キロ2キロは当たり前。こてこて装飾したさやに入っていたら、3キロ4キロになるものもある。
剣につぶされて床に倒れ身動きできなくなっているところを、お兄様に救出されてから、壁に飾ってあった剣がなくなったんだっけ。
「ミチェ、剣を抱っこしてただけにゃの!つぶれてないのっ!」
と主張したものの受け入れられなかった。
「だめだよミチェ。ミチェは力がないんだから」
お兄様が私の頭をなでなでした。
それから、3歳の私をお姫様抱っこして、椅子まで運んでくれた。6歳児なのに……!
「あはは、ミチェを独り占めしちゃだめだよ」
と、上のお兄様が、私とお兄様二人を右と左に抱き上げて運んでくれた。10歳児なのに。
前世記憶的にも、体のサイズはそう変わらないのに、力持ちすぎない?うちの兄?
と、思っていたら。
「ミチェもきっと身体強化スキルはあるよね」
ぬ?
「4歳の誕生日のスキルチェックが楽しみだね」
スキル?