日本の「賭け解剖図」 オンラインカジノが違法である理由
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は吉本の芸人が賭博をした疑いで警視庁から任意の事情聴取を受けた「オンラインカジノ」や「賭博」について語っていこうと思います。
◇海外では合法でも日本でプレイすれば違法(属地主義)
質問者:
まず、オンラインカジノって合法と言われたり違法と言われたりどうなっているのかよく分からないんですけど……。
筆者:
よく勘違いされていたり、騙そうとしている人たちが言う事としては「適法だから大丈夫」だという理論です。
確かに、ヨーロッパやオーストラリアなどの海外においてはオンラインカジノが合法です。
ところが、海外で「合法運営」だとしても、それを日本でアクセスしてプレイした場合は「違法」になるのです。
これは、日本が国内において罪を犯したすべての者に適用されることになっています(刑法1条)。
これは、「属地主義」(国内で犯された犯罪に対しては行為者の国籍を問わず自国の刑法を適用する)という考え方を取っているからです。
国ごとにこの考え方は異なっており、隣の韓国では「属人主義」を採用しています。
プロ野球の元投手や芸能人である韓国人が現地では合法であるマカオやラスベガスで多額の賭けをして「海外遠征賭博」(遠征賭博)により、韓国当局により逮捕されるケースが散見されています。
質問者:
なるほど……日本の場合は日本人が海外で合法として認められている国でオンラインカジノなどをすれば大丈夫だという事ですか……。
筆者:
そういう考えで問題無いです。
ちなみにオンラインカジノに係る賭博事犯については2016年に初めて逮捕がなされました。
警察庁のホームページによるとオンラインカジノに関して令和3年中127人、令和4年中59人 (うち無店舗のもの1人)令和5年中 107人(うち無店舗のもの32人)が逮捕されています。
質問者:
でも、オンラインカジノの広告を日本で見たことがあるんですが、あれは大丈夫なんですか?
筆者:
「〇スティーノ」とかですね。
正直駄目だと思いますよ。
刑法第185条および第186条に基づく賭博罪では、
偶然の勝敗に財物を賭ける行為を禁止しており、違反した場合、罰金や懲役が科せられます。
つまり、「お金を賭けた時点」で原則アウトですからね。
プレイしたことが無いので詳細なシステムについては分からないですが、コインをお金に変換するシステムがあれば駄目だと思います。
ただ、海外でライセンスを取った外国籍の会社は捜査することが難しい上に「海外にサーバーがある」会社について現状は「不起訴処分」になっているケースがほとんどです。
〇スティーノが日本で広告を出せているのも「無料版の宣伝」であり、「海外に行ったときにプレイしてください」という言い訳をして通っているからでしょう。
あと、恐らく今まで逮捕されてきたのは「国内で開店」したオンラインカジノだからなのでしょうね。
質問者:
でも、今は日本国内で海外本籍・サーバーのオンラインカジノをプレイして「不起訴処分」でもいつかは危なくなる可能性はありますよね……?
筆者:
そうです。海外と連携して捜査してある日一斉摘発と言った可能性も高く、また今は「不起訴処分」でも後の裁判判例次第では風向きが変わってくる可能性があります。
「不起訴処分」と言うのは決して「合法であることを容認した」ということを意味しているわけではありませんからね。
証拠が揃えられない「嫌疑不十分」であることが多くこの件では該当すると思います。
現状においては海外の会社、海外サーバーで運営されているオンラインカジノは「グレーゾーン」と言える領域であり、海外と協力することによって捜査の手が伸びる可能性はあります。
このようなことを総合すると、
現在オンラインカジノに興味を持たれている方は「忘れた」方が良いですし、
今プレイされている方は速やかに「足を洗った」方が良いように個人的には思います。
規制されてから辞めるのは苦しいと思いますからね
◇公営ギャンブルやパチンコは「例外」として扱われている
質問者:
思ったんですけど、刑法で賭博は禁止されているのに、宝くじや競馬に競艇、パチンコ、麻雀はどうして大丈夫なんでしょうか?
どうみても刑法で禁止されている『偶然の勝敗に財物を賭ける行為』だと思うんですけど……。
筆者:
まず、「公営ギャンブル」として認められているパチンコと麻雀以外の存在については
競馬は競馬法、
競艇はモーターボート競走法、
競輪は自動車競技法、
オートレースは小型自動車競走法、
宝くじは当選金付証票法、
スポーツ籤はスポーツ振興投票実施等に関する法律
の下でそれぞれ許認可を得ています。
ギャンブルの運営体制や収益の使途、参加者保護のための厳格な規制・監督がなされることを前提にしているためにOKなのです。
質問者:
パチンコと麻雀はどうしてその中に入っていないんですか?
筆者:
パチンコは上で挙げたような特別法が存在せず、
風営法の2条1項4号の営業許可を得て、「三店方式」と呼ばれる営業形態を採用することで、法律の規制を回避しています。
1.客が出玉をパチンコ店で景品と交換する
2.客が景品を換金所(1.のパチンコ店とは別法人)に持って行って、現金と交換する
3.問屋が換金所から景品を買い取り、パチンコ店に卸す
それぞれが別法人であるためにOKという論理です。
まぁ、1と2と3は「関連会社」としか思えず、「アウト」な気もするんですけど事実上「特権」みたいな感じで警察が敢えて「見過ごしてきた」んですね。
※パチンコはかつて北朝鮮の資金源になっていたものの現在はかなり縮小しているという話もあります。
質問者:
麻雀はどうなんでしょうか?
筆者:
麻雀も風営法の2条1項4号の営業許可を得て営業をしています。
雀荘の遊技料金に対して1時間あたりの料金に1人あたり600円又は台1当たり2400円までと規制があり、店側が景品を出すことは禁じられています。
要は、「場所代」として貸しているだけという事なんでしょうね。
質問者:
原則としてはダメで例外として認められていることもある。という感じなんですね。
筆者:
そうです。野球賭博や賭け麻雀、古いものだと花札や双六、丁半賭博などもとにかくお金を賭ければ違法になります。
ちなみに、日本の判例では違法な賭けで負けてお金を支払った場合、
お金を返してもらう事は法的にはできないというのが現行の判例や法律実務上の判断です。
賭博そのものは違法であるものの、
負けた側がお金を返してもらうことは「不法原因給付」になるという判断です。
違法行為をした人間を法律で保護することは出来ないという立場だからでしょうね。
違法賭博には参加しないことが一番です。
◇ギャンブルは管理した方が得策と判断した
質問者:
でも思ったんですけど、「ギャンブル依存症」などが出てしまうのにどうして「公営ギャンブル」なんて認めているんでしょうか……。
筆者:
これは歴史的にもそうなのですが、
あまりにも規制し過ぎると逆に「発散する場所」を求めて
ヤクザや反社会勢力などの寡占市場になってしまうんです。
かつて禁酒法をアメリカで制定した際に順法精神が薄れて犯罪が横行してしまったことがありました。
日本では江戸時代では宝くじに当たる「富突」というものが神社で公認されていた以外全て違法でしたが丁半賭博などは陰で流行りまくっており、取り締まることが出来ないほどだったようです。
このように、娯楽を禁止し過ぎるのも危険だという事です。
どうせ規制を厳しくしてもやってしまう人がいるのだったら、むしろある程度推奨してしまえば税金として徴収もしやすいですし、
一部を合法にして残りを取り締まると言った方式の方が統治している側としては合理的だと言えるのです。
質問者:
なるほど、規制を厳しくすると反社会勢力の資金源になるために、税収のためにも一定程度は認めようというわけですか……。
筆者:
だからカジノも「GDP」や「税収」のために合法にしたという事なんだと思いますよ。
基本的には節度を持ってやらないとダメだと思いますけどね。
日本は先進諸国と違ってギャンブル依存症の方の割合が高いというデータがありますしね。
質問者:
ギャンブル依存症が多いだなんて、なんだか日本人がダメな民族な気がしてきました……。
筆者:
いえ、「嵌る先」が「研究」だったりすれば、偉大な功績を残すことも出来ますから。
ノーベル賞受賞者が欧米以外では日本が突出して多いのもそのためでしょう。
こういう良い・悪いは表裏一体だと思いますね。
でも、そういうことを考慮しても依存症、ハマり症になってしまいそうな方は生活を破壊しかねないので公営ギャンブルだとしても手を出さない方が良いでしょう。
基本的には運営側(胴元)が必ず儲かるシステムなので、お客側は試行回数や時間をかければかけるだけ必然的に損していきます。
せいぜい「夢買っている」と思って基本負けると思ってやるぐらいにした方が良いでしょう。
質問者:
流石にそうですよね……。
筆者:
ということで、今回はオンラインカジノは海外許可でサーバーも海外だと「今は不起訴」であるものの危険であること。
公営ギャンブル以外の賭博は全て違法であると思った方が良いこと。
政府が合法にしているのは反社勢力の資金源になるぐらいなら税収のためにも合法にした方が良いと判断しているから。
という事をお伝えしました。
今後も社会的に問題になっていることについて個人的に解説してきますのでどうぞご覧ください。