第二話 イメージ?なら俺の出番
転生した葛城隼人が見た物は、信じ難い物ばかりだった、旅人のティナに助けられるが…
「あぁ…どーすんだよこれぇ」
(なんだぁ、こんな奴らがいると言うことは、魔王って感じのやつがいるんだよな)
ティナはハヤトが頭を抱えながら慌てふためく様子に、疑問を抱いていた。
「何なのよさっきから、ハヤトは目的があってここに来たんじゃないの」
「目的なんてねぇよぉ、あぁ、まじ終わった」
「変なの、やっぱりハヤトっておかしいわよ」
さっきから心にグサッと来るセリフばっかり吐いてくる、正味、今すぐにでもボコボコにしてやりたい。
「うるせぇ、俺がおかしいのは元からだ!」
「フフッ、まあ良いわ。ハヤトは記憶喪失ってことにしといてあげる、付いてきて、私達のキャンプを案内してあげるわ」
「キャンプ?フリージアってとこの住人じゃないのか?」
「私は魔王を討伐する為に旅をしているの!!」
「???」
大体の予想こそ付いていたが、100点満点の回答をされ、返す言葉を見失ってしまった。
「魔王…?」
「あー!もう何でも良いから着いてきて!」
ティナに腕を引っ張られ、森の中を歩いていく。
(腕が痒い…)
そう思い、右腕を掻いた時だった、『葛城隼人lv1 無職 武器 飛び道具』と目の前に表示された。
「うおあ!なんだこりゃ!?」
「それ、今の自分の実力が見えるの、その右腕に付いてる赤いクリスタル、それにもう一回触れると消えるわ」
見ると腕に赤いクリスタルが、宝石の様に輝き、埋まっていた。
(いや、ゲームじゃん!!)
「へぇー面白い、魔法とか使えんの?」
「使える…待って」
「ガルルルル…」
灰色の狼の様な生き物がこちらを見ている、明らかに敵対生物だ。
「狼!?」
「狼?なにそれ、こいつはグレイルフ、凶暴だから気をつけて」
「なら拳銃で…!」
(待てよ、そもそもこいつに拳銃効くのか)
何も考えずに構え、引き金を引いた。余りの爆音にティナもグレイルフも一瞬硬直した。弾丸は命中こそしたものの、効いている様子はない。
「ハヤト?なにそれ」
「ま、まぁびっくり箱的なやつさ」
「ふーん、わかんない」
「グワァァォァ!」
グレイルフは怒り狂い、ハヤトに襲いかかってきた。
「うわぁ!こいつ怒ったぁ!」
「そんな大きい音立てるからだよ!それに意味ないじゃん、ハヤト、魔法は!?」
「魔法ってなんだよ!どうやって使うんだよ!」
必死に逃げるが、相手の方が明らかに速い。追いつかれ、思いっきりどつかれた。また木に叩きつけられた、今日で二回目だ。
「イテェ…また…木にぶつかっちまった…」
そのままぐったりと倒れてしまった。
--数十分後
今度は思いっきり頬を叩かれた。
「イッタァ!なんだなんだ!」
「ほら、生きてる」
「なんだ、死んでないのか」
「!!!?!?」
(なんなんだ、俺が何したってんだ)
辺りを見ると、何処かの小屋に着いたようだ。
ティナともう1人女の人がいる、耳は尖っており、白髪の女の子、ティナと同い年くらいに見えた。
「あんた、エルフだろ」
「そうだ、──おいティナ、こいつは記憶喪失じゃないのか?」
「いや、その見た目には馴染みがあるんだ、気にしないでくれ」
「気持ち悪いな、あんた」
「まぁな、所でお姉さん、名前は?」
お姉さんは顔を赤らめた。
「お姉さんだなんて、やだもぉ!私170歳よ!」
余りの年齢の差に、驚きを隠せなかった。
「は?マジかよババアじゃん…」
「飛行魔法…」
ハヤトを宙に浮かせ、突き落とそうと気持ちした、ティナがなんとかして押さえつけた。
「わぁ!!!ごめんごめん!!降ろしてくれ!」
「リーリア、落ち着いて!」
「ふん!私だって女の子だ!」
「はい…すみません」
リーリアは不貞腐れた顔で、髪の毛を指でクルクル巻きながら、こちらを見ていた。
「所であんた、うちのパーティに入りたいんだって?」
「え?そんなこ…」
ティナが急に割り込んできた。
「入りたいんだってさ!」
(何だこいつ)
「ふーん、で、君は何が出来るの?」
「殴る、蹴る」
額に手を当てながら、深くため息をついた。
「それじゃダメだ、魔法か何か使えないのか」
「魔法の使い方なんて知らねえ」
「…来て」
「わっ、私も行くっ!」
街の外れにある広い平原に出た。
「まぁ見ててよ、…ジャベリン」
リーリアの手から、神々しく光った槍が出てきた、その槍を遠くへ飛ばした、地面に槍が突き刺さった途端、地面が抉れ、大爆発を引き起こした。
「おっ…おぉ…」
「どう?」
癖にドストライクの技だった、さっきまで嫌いだった奴が憧れに変わった瞬間だった。
「すげえ!マジですげえ!」
リーリアは鼻を高くしてドヤ顔している、ティナは少し嫉妬している様だ。
「もう良いから、早く魔法の練習しよ!」
「ステータスを見せて」
「ん」
リーリアはハヤトのステータスを数分間、凝視した。
「なるほど、魔力はある、しかもレベル1にしては多いね」
「そうなのか」
「ハヤト、手先に集中して、力が入る様なイメージをするの」
「手先…」
目を瞑り、手を開け手先に力が入るイメージをした、しばらくすると、イメージをした場所が少し熱くなった。
「そうそう、良い感じ」
(このまま撃つイメージをすれば、このエネルギー飛ばせるんじゃね?)
ハヤトは悪そうに口角を上げた。
「はぁ!!」
「キャァ!」
爆発音と共に土埃が舞った。
「ケホッコホッ…誰が撃てと言った!」
「へへっすまんすまんつい」
「…まぁ初めてでここまで出来れば上出来だよ」
ふと、転生する前の事を思い出した。
「なぁリーリア、これってイメージした物は出せるんだよな?」
「そうよ」
「そうか、なら」
「何をする気?」
「まぁ見ててなって」
自信が心の底から湧き出てきた。
「1/1!10式戦車ぁ!!」
目の前に1/1スケールの10式戦車が出てきた、プラスチックではなく、しっかりと鉄で出来た、まるっきり本物の戦車だ。その、重圧にティナは腰を抜かし、リーリアは驚きを隠せなかった。
「あっ…あぁ!バケモノだぁ!」
「へっ、これが出来るなら、魔王なんてへっふぁらぁ…」
脱力し、鈍い音を立てながら倒れた。
「あーあ、また倒れちゃった」
「魔力を使いすぎたんだ、小屋まで運ぶぞ」
(さっき始めたばかりであの高精度な物体を…凄いな、こいつなら本当に…)
イメージで物体が現れる世界、プラモデルが趣味だったハヤトにとって、その世界自体大きな武器になった。