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闇の道を歩むとも ⑤

「流石に何も無いか」

 

 王様と最後に別れたという地点に向かったものの、あるのは浮遊するベクターの死骸と戦艦の残骸だけであった。広域スキャンをかけてベクターの反応を探るがこの星域にはいないらしい。

 

「アチータ、スキャンデータから王様の艦の残骸はあるか?」

「僅かだがある、この付近で破壊された形跡はなさそうだ」

「副長、ここから王様の艦が逃走したと思われるルートを算出してくれ」

「既にできております、予想逃走ルートは五つ」

「一番可能性が高いのは?」

「二つあります」

「違いは?」

「ありません」

「じゃあまずこっちの方で」

 

 適当に選んだルートを進む、どの道変わらないのなら悩む時間が惜しい。連盟のデータベースに登録された王様の艦の速さを鑑みて、少なくとも星域からは出ているだろう。

 ひとまず星域から出よう。

 

「エーテルドライブ始動」


 現在位置から推察して、星域を出るにはエーテルドライブ二回を必要とする。二回目のチャージ期間を考慮しても半日はかかるだろう。

 一度目のエーテルドライブで十光年進む、エーテルのチャージが終わるまでは通常速度で移動し、その間はドロイドに運行を任せて休憩を取った。

 二回目のエーテルドライブが終わった時に変化がおきた。

 

「救難信号をキャッチ」


 エーテルドライブ直後のスキャンでアチータが救難信号を拾ったようだ。

 

「王様か?」

「いや、微弱すぎて特定ができない」

「とりあえず行こう、王様じゃなくても見過ごすわけには行かない」

 

 進路を変えて救難信号のある地点まで行く、詳しい位置はまだ不明だが少なくともこの宙域ではなさそうだ。

 信号の方向を特定して進む、ドライブチャージが終わった頃にアチータが報告をいれる。

 

「艦長、通信がはいる」

「どこからだ?」

「救難信号をだしてる者だ、おそらくオープンチャンネルで通信をとばしているのだろう」

「開いてくれ」

 

 スピーカーからノイズが聞こえる。やはりまだ微弱でとらえられないのか、副長がノイズを除去しようと奮闘したが効果は薄い。

 もう少し距離を詰めれば聞こえるだろうか。

 

「よし、この通信を辿ってエーテルドライブ開始。ヒデさん、これからエンジンを酷使するからよろしく頼む」

「程々にしてくれ」

 

 エーテルドライブで十光年進み、再び通信を開く。今度はさっきよりノイズが小さいので何とかなりそうだ。

 

「こちら、W.E.Sガリヴァー艦長のリオだ。応答もとむ」

 

 予め用意しておいた艦長ぽい言い回しをすらすらと伝えて、返答を待つ。しばらくして「ザザ……ら……です……ザザザ」とノイズ混じりに声が聞こえるようになってきた。

 副長とアチータがノイズを除去していき、そしてようやく。

 

「俺は探検家のロビン、一年前に船が故障して近くの惑星に不時着している。やっと信号が届いて良かったぜ」

 

 どうやら王様ではないらしい。

 アチータとガラドの方を見ると、二人は少し落ち込んだ様子を見せているが、作業の手を止める様子は無い。

 

「こちらはその救難信号を受けて来た。そちらの惑星の位置を正確に教えてくれるか?」

「あぁわかった場所は」 

 

 惑星のポイントを聞いて副長が宇宙図を展開する。ガリヴァーを中心とした球体地図を見ながらロビンがいる惑星へのルートを算出して進路を固定する。

 続いて通信を医療部へ回してドクターにロビンの健康状態を口頭で診察してもらった。

 

「彼の健康状態は良好だと思います。まあ直接診療してみないと詳しくはわかりませんけど」

「引き続き診断を頼む」

「了解です」

「副長、惑星までどれくらいかかる?」

「三日ほどで、しかしどうもこの惑星の周囲はエーテルが乱れているようでして」

「エーテルが? 乱れてるとどうなるんだ?」

「空間が歪みます。通信が未だにこちらで調整しないといけないぐらい微弱なのは歪んだ空間を通ってきたからでしょう」

「もしかしたら虚無の穴も発生してるやもしれません」

「ガラド、今言った虚無の穴とはなんだ?」

「文字通り虚無世界へと繋がる穴です。虚無世界とはエーテルの存在しない真っ黒な空間でして、そこに行くとエーテルを補給できずに戻れなくなるのです」

「エーテルの無い世界、それって」

 

 虚無世界と虚無の穴についてリオの脳内にある仮説が浮かんだが、確証は無いので一旦頭の隅に追いやる。

 どの道エーテルが無ければガリヴァーも動かないので虚無の穴には気をつけた方がいいだろう。

 再びロビンと通信を繋ぐ。

 

「ところでロビン、俺たちに他にして欲しい事はあるか? 可能なかぎりかなえるぞ?」

「あんた優しいねぇ、じゃあこのまま通信を繋いでてくれ。誰とも話してなくて寂しかったんだ」

「わかった。別室に通信を繋いで常に誰か一人置くようにしとくよ」

「サンキュー艦長! お前ほんと良い奴だな、友達になろうぜ」

「馴れ馴れしいなこいつ」

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