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オトナになった花子さん  作者: じょーくら
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第2話(幽霊マンション)-2

ーリビングに降りると花子さんはTVを見てくつろいでいた。

「家族の誰かに見られたら…」

太郎の両親は共働きで朝が早い。

歳が離れた姉が1人いるが,現在は社会人で実家を離れている。

太郎はリビングの時計を見る。

「…もう10時か」

とっくに両親は仕事に出かけている時間であることを確認すると

胸をなでおろす。

「心配すんな, おまえの家族にバレそうになったらー」

次の瞬間, 花子さんの姿がTVの前から突然消えた。

「こうやって」

太郎の耳元で花子さんがつぶやく。

「うわっ」

太郎が背後を振り返ると, 花子さんがニタァと笑っている。

花子さんはTVの前から太郎の背後まで瞬間移動した。

「急にオバケらしいことすんなよ…ビビるだろ」

「おまえの家族の行動パターンは学習済みだ。冷蔵庫の中の配置もな。」

そういって花子さんは黙って台所の冷蔵庫を物色する。

2缶目のビールと,昨日の残り物の肉じゃがを取り出していた。

「朝からビールかよ…」

TVの前でビール片手に肉じゃがをつまんでいる姿は完全におっさんだ。

廃校のトイレで見ると流石に怖かったが, 今はその貫禄が微塵もない。

「一応確認だけど, おまえ…二十歳過ぎてるよな?」

「安心しろ…,この世に生を()けてから現在まで22年経ってる」

肉じゃがを頬張りながら花子さんが答える。お酒は二十歳から。

「お!これ見てみろ」

花子さんが右手の箸でTVの方向を指した。

「真夏の心霊特集って…」

ちょうど朝の情報番組で心霊系のコーナーを放送していた。

夏休みシーズンだからだろう。

オバケが心霊番組を熱心に観ている光景はとてもシュールだった。

「…恐怖の幽霊マンション」

番組のテロップをそのまま花子さんが呟いた。

画面が切り替わり,辺りにモザイクがかけられたマンションらしき建物が映し出された。

『築十数年のマンションで突如として怪奇現象が多発ー』

ナレーションがおどろおどろしく概要を紹介する。

次に,住人への聞き込み調査の画面に切り替わった。

朝の情報番組らしく, 新人アナウンサーがレポートしている。

『髪の長い白い服の女が…』

『食器棚のお皿が急に宙を飛んだんです』

『寝ていたら金縛りに…』

住人が体験した怪奇現象の数々が紹介される。

「白い服に長い髪の毛って…最近のオバケは芸がないな」

花子さんが鼻で笑っている。

(全身真っ赤なコーデのおまえがヒトのこと言えないだろ…)

太郎は心の中でそっと呟いた。

『それでは, 特別ゲストの本郷正音(ほんごうまさね)先生に霊視してもらいましょう』

新人アナウンサーが紹介すると画面に小太りの中年女性が出てきた。

最近巷で話題の霊能力者らしい。

『…男の子, 幼い女の子,白い服を着た女性,中年男性…, 家族かしら』

中年女性がマンションに手をかざしながら霊視している。

「あんなの, 私にもできるぞ。テキトーに言っとけばいいんだろ。」

TVに向かって花子さんがツっ込んでいる。立派な”おっさん"だ。

『この建物には多くの霊が存在している…。昔,何かあったのかしら。』

『正音先生のおっしゃる通り,マンションが経つ30年前に一軒家が火災で消失しており, そこに住んでいた家族が犠牲となっております』

アナウンサーが興奮した様子で応える。

『そして,最近も幽霊騒動で引っ越そうとした家族が交通事故に遭い, 現在も意識不明の重体です』

次の肉じゃがをつまもうとしていた花子さんの手が止まった。

『ここにいる霊はとても強力ね…。一度では祓いきれないわ。』

『手強い相手になりそうですね, この模様は明日も引き続きー』

どうやらこの夏休み期間中,シリーズ化する流れらしい。

「太郎!決めたぞ, 次のターゲットはここにしよ!」

花子さんが興奮した様子で言った。

「え?次のターゲットって…,"オバケスタンプラリー"の?」

「小物を狙ってもポイントは稼げねぇ。これくらい規模の大きい相手じゃねぇと。」

太郎は昨夜闘ったばかりでゲンナリした。

「乗り気じゃねぇみたいだな, 早く私を追い出したいんだろ?」

「だいたい,TVでは建物にモザイクがかかってて場所が何処かも…」

「コレのことだろ?」

花子さんは太郎のスマホの検索画面を見せつけた。

「おまえっ!いつの間に…」

(たしかスマホは2階に置いてきたはず…! )

「”幽霊マンション”で検索したら一番上にでてきたぞ」

先ほどTVで紹介された内容が早速記事になっている。

住所まで特定されており,隣町にあるらしく,ここからそう遠くはない。

プライバシーもへったくりもない時代だ。

「そうと決まればすぐに出発だ」

花子さんが意気込む。

「いやいや,ちょっと」

「なんだよ」

「俺,まだ朝飯食べてない…」

「さっさと食えよ!」


(続く)















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